バイパスの澄んだ空気、熱海城のチー牛
僕たちの集合場所はいつも熱海城だった。
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真夜中に眠い目擦って友達の車に乗る。
途中ですき家に寄り、テイクアウト。
僕はいつもチーズ牛丼を買ってた。
一緒に乗ってた友達が「チー牛チー牛」ってバカにしてきたけど彼らもいつしか同じものを買うようになってた。お前らかわいいなとおもった。
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車の中では
毎回変態紳士クラブの「YOKAZE」の大合唱。
「みんなと歌うのは恥ずかしい。」
「田舎くさい。」
当時僕はそう思っていた。
そんな彼らをよそに僕は1人で
バイパスから見える夜空を眺めた。
ここは東京と違って沢山夜空が見える。綺麗だ。
でも、東京の夜空の下の景色に
僕はずっと魅力を感じていた。
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そんな空の下、僕たちは熱海城の麓で
チー牛を食べながら、これからの話をした。
「あそこのインターン行った?」とか。
「あいつらって結局別れたらしいよ?」とか。
「将来結婚するとしたら、20代後半ぐらいでしたいよね」とか。
いつも居酒屋で適当にする話を、深夜2時を回るとなぜか真剣に話すようになった。
話の内容は変わらないのに、勝手に味わい深くなっていた。
僕はそんな奴らを「浅いな」「バカだな」って
ずっと影で見下していた。
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朝日が昇る5時過ぎに
またあのバイパスで家に帰る。
さっきまで大合唱してた人たちは
ぐっすりしてしまって、
車内は僕と運転手の2人だけになってしまう。
目覚めるには眩しすぎる光を受けながら、僕らはさっきの話の続きをする。
「来月のTOEIC受けるの?」とか。
「明後日飲み行かん??あの子来たらアツいよな」
「確かに、俺ダメ元で誘ってみるわ」
「え、?マジナイス助かる」とか。
基本次会う約束する話してた。
ずっとそんな話すると思ってた。
これからもずっと。
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お前らどこ行っちまったんだよ。
もう一回熱海城でチー牛食べようよ。
次は絶対一緒に歌うからさ。
次は絶対夜空の下なんて見ないからさ。
次は絶対僕が運転するからさ。