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書籍「コミュニティ思考(仮)」の初期原稿を蔵出ししてみる。 #コミュニティ思考100

 今まさに、ダイヤモンド社から6月予定で出版される書籍「コミュニティ思考(仮)」Peatix Japanの藤田祐司氏との共著)を一生懸命つくっていまして、ようやく文字原稿の入稿が終わりました。本づくりがこんなに長い道のりだとは思っていなかったのですが、このようなコミュニティにとって大事な時期に、自分たちの考えを洗練させ、発信できるありがたみを感じる日々です。

 さて僕のツイッターアカウント(@as_kwhr)では #コミュニティ思考100というハッシュタグで、原稿の一部を140文字以内で抜粋して2月からほぼ毎日紹介してきました。本の発売まで、編集の段階で表現や内容も大きく変容するので、その記録も兼ねてやろうという趣旨だったのですが、案の定、大きく原稿内容は変わってきてます。特にコロナ騒動が広まるにつれて、構成や発信内容に影響が出てきました。

 原稿を書くというのは、自分(たち)の思考を棚卸しして、まずは全部出す、そしてそれを洗練させて分かりやすく誰にでも伝わるようにする、というプロセスで成り立ちます。今回の記事では#コミュニティ思考100の投稿でつぶやかれた編集が入る前の初期の原稿抜粋をのっけて、簡単なメイキング解説を載せました。

 つぶやかれた内容の引用は、コミュニティをやっている人にとってみると「あーなるほどねー」という内容かもしれませんし、そこにくっついているメイキング解説は、本を出してみたい人にとっては「原稿はこんなに変わっていくものなのか」という発見のあるいい資料になるかもしれません。文章を眺めてみて「ああ、こういう本なのかなー」と期待感と想像が高まると嬉しいです。では「 #コミュニティ思考100 」の[01]から[12]までまとめましたので、どうぞご覧ください。

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(まだ外出できた時期のミーティング風景)

コミュニティ思考100[01〜02]コミュニティ思考の時代とは

コミュニティ思考100 [01] 
 「こういう活動をやりたい」という発信がしやすくなり、自分の想いに共感する人を集めやすくなった影響で、従来のカテゴリーとはちょっと違うコミュニティが誕生してきました。2010年代中盤から後半に、顕在化してきたように思います。
 コミュニティをつくりながら活動している人たちがある共通の発想を元にして行動している傾向があることに気が付きました。それは「私はこうしたい(こうありたい)。実現すれば、きっと世の中はもっとよくなる。だから仲間になってほしい」というものです。
 この「私はこうしたい(ありたい)実現すればきっと世の中はもっとよくなる。だから仲間になって助けてほしい」という想いを核にした思考法を「コミュニティ思考」と名付けることにしました。共感する人が集まって形成されたのが現在的なコミュニティです。
 従来の「問題解決」を目的とするコミュニティにおいては、コミュニティ活動をする理由を、社会課題や環境など「外的要因」に求めます。しかし、コミュニティ思考は「自分たち=内的動機」をベースとしているのが特徴なのです。

 本書のキーワードとなる「コミュニティ思考」の原型になったテキストです。共著者の藤田祐司氏がCOMEMOの記事で詳細に解説していましたが、こちらの表現は、完成稿では読者の間口を広げるべく編集の段階でだいぶ変更になりました。だいぶシンプルで、かつ具体的な表現に変わっています。なおこの変更には、新型コロナウイルスの情勢の変化も大きく影響しました。原稿は生き物です、コミュニティ同様に。

コミュニティ思考100 [02]
 「コミュニティ思考」の時代では「売り方」「買い方」のゲームチェンジが起きています。特にソーシャルメディアの普及以降、急激に「買う側」の意識は変化しており、現在ビジネスをするにあたっては、このゲームチェンジを踏まえる必要があります。
 インターネットが生まれ、ソーシャルメディアが発展し、テレビや新聞を見ない人の数が大きく増えるにつれ、マス広告を通じた説得型コミュニケーションが、効果を発揮しづらくなりました。結果、生まれたのは「価値観の多様化」です。
 消費行動においては「より高機能でコストパフォーマンスの高いもの」を求めるのではなく「より自分の価値観に合ったもの」を求める志向が増してきました。自分と価値観の合う仲間が使っているプロダクトやサービスに魅力を感じるようになったのです。
 このような時代においては、ユーザーは機能ではなく、評判+自分との相性(マッチング)を元にして購買行動の意思決定をします。機能の有無ではなく、自身のライフスタイルが、プロダクトの価値を決める基準となっているのです。

 こちらも完成稿ではだいぶ表現が変わりました。編集というのは言葉をシンプルに削ぎ落とす作業だというのがよくわかります。内容はよく外でしゃべっている内容ですが、今読み返すと表現の無駄がちょっと多い。マーケターのブログに書かれてそうな文章ですね。詳しくはさとなおさんの「ファンベース」(ちくま新書)を読むといいのかも。執筆にあたり読み返しましたが、やっぱり名著です。

コミュニティ思考100[03]コミュニティマネージャーの仕事

コミュニティ思考100 [03]
ビジネスコミュニティにおいて施策をどういう目的で、どれくらいの頻度で開催するかを考え、実行するのが「コミュニティ・マネージャー」です。コミュニティ・マネージャーの仕事を大きくまとめると、2つあります。
 (1)活動の目的と施策を決めて統括するーなお施策には①イベント②コンテンツ発信の二種類がある。
 (2)コミュニティのカルチャーをメンテナンスする

活動の目的を決め、施策を決め、集める人の属性を決め、規模を決め、施策を目的に応じ遂行するのが、コミュニティ・マネージャーの仕事の基礎。もう1つとても大事な仕事が「コミュニティのカルチャーをメンテナンスすること」です。
 施策を繰り返す中で、コミュニティのカルチャー(≒場の雰囲気)がメンバーの持っている「こうしたい・こうありたい」という感覚とずれていないかを確認したり時間を経るごとに変質していないかを観察しチューニングをする必要があるのです。

 コミュニティマネージャーの仕事についてはまるまる1章割いていますが、その原型になったのがこのテキストです。大筋変わってないけど、全般的にカタカナは減りました。あと原稿全体で「オンライン施策」がかなりボリュームアップしたのが特徴です。初稿を書いた当時はまだ「オフラインファーストの時代」でした。

コミュニティ思考100[04〜09]コミュニティの定義と歴史

コミュニティ思考100 [04]
  コミュニティを定義するときに、私は2つの要素を兼ね備えた、人の集合体という風に表現しています。
 (1)メンバー1人1人が、特定の目的意識に対して、能動的に存在していること
 (2)メンバー同士の対等なコミュニケーションが存在していること

 「地域の教育をよくする」などといった強い目的意識のものもあれば趣味を楽しむことを目的としたコミュニティも存在します。目的意識がある程度共有されお互いが少しでもその場に「関与」していくことが、コミュニティを形成する核となります。
 「場の関与」において、重要な要素になるのが「メンバー同士のコミュニケーション」です。一方通行だったり、上から下に向かうものではなく「対等なコミュニケーション」が大事な構成要素になります。それぞれの参加できる範囲で関与します。
 まとめると、コミュニティとは「特定の目的意識を持った人々が能動的に参画し、対等にコミュニケーションをとっている集合体」重要な特徴としては、参加者の関与の強弱によって、上下関係が生まれないことにあります。

 コミュニティの定義についてです。これを原型にしてだいぶ言葉はスリムに、平易になって完成原稿には載っています。定義は本や人によってまちまちなので、大原則をまとめてる形になります。意外と人によって定義がぶれてたりするんですよね。定義大事。

コミュニティ思考100 [05]
 コミュニティは、歴史の変化と共に、主に4つの段階を経て変化してきました。コミュニティがどのような段階を経て、現在の「コミュニティ思考」にまで到達したか。その流れについてまず簡単に説明します。
 最初のコミュニティ「ムラ・コミュニティ」「家族」や「宗教」を規範とした集団です。血縁や地縁を元にした強い関係性が存在します。同質性と共通する規範を守ることを重んじる、あらゆるコミュニティ観の基礎となる重要な考え方です。

コミュニティ思考100 [06]
 「都市」の誕生により、血縁や地縁などの強い規範から開放された都市生活者たちは、それに代替するものとして「ご近所付き合い」を元にした、近代的な「都市コミュニティ」を形成するようになりました。
 都市コミュニティの時代は長く続いたのですが、インターネットの誕生以降、特定の問題について問題意識を持つ人たちが、ネットワークを通じて発見しやすくなったことで「一緒にその問題を解決しよう」という動きが生まれてきました。

コミュニティ思考100 [07]
 2000年代のインターネットやSNSの普及に伴い、近しいテーマにおける身の回りの問題を解決したい人たちが集まる「問題解決型コミュニティ」が広がりました。「プロボノ」「サード・プレイス」という概念が広がったのもこの時期です。
 問題解決型コミュニティは、社会に「危機(クライシス)」が起きたときに広がる傾向があります。日本で広まったきっかけになったのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災、米国に広がったきっかけは9.11のNY同時多発テロでした。

コミュニティ思考100 [08]
 米国では2001年9月11日のNYの同時多発テロという「危機」が重大なきっかけになりました。コミュニティサービス「Meetup」はNY出身の起業家・スコット・ハイファマンがテロを目の当たりにしたのをきっかけに生まれました。

コミュニティ思考100 [09]
 9.11の「近所にテロリストが潜む状況」をつくったのは「市民コミュニティの希薄化」にあると考えたスコット氏は、ある問題意識に応じて同属の仲間を集めたオフライン(対面)の集まりを「Meetup」という造語で定義し、プラットフォームサービスを立ち上げました。

 コミュニティの歴史の話は大幅にカットされました。書いている最中にコロナショックという、それまでの歴史観を覆すような大きな出来事があったのもあって、入門書としてなかなか整理しきれなかったり、言い切りが難しくなったりという背景があります。
 けど歴史の理解自体は大事なので、各自で調べつつ補完していただきたいなあって思ってはいます。いくつか読んだ中では、特に、都市化とコミュニティの変質、さらに課題解決型の地域コミュニティへの動きについては山崎亮さんの「コミュニティデザインの時代」(中公新書)が読みやすくて分かりやすいです。
 ちなみに「ミートアップ」に関しては本書でもけっこうキーになる概念としてそこかしこに触れられています。

コミュニティ思考100[10〜12]コミュニティとコアバリュー

コミュニティ思考100 [10]
 「コミュニティ思考」の時代で大事なのはプロダクトやサービスの持つ価値観やカルチャーを前面に出し、相性がいいユーザーの共感を喚起するコミュニケーションです。自社のサービスの持っている「代替不能な価値=コアバリュー」を発信していく必要があります。
コミュニティ思考100 [11]
 起業家の若宮和男 @waka_uq さんは「代替可能な箱ティッシュになるな」という比喩を用いて、コアバリューの重要性を説いています。コアバリューを元に粘着性の高いコアユーザーを獲得し、価値に対して持続可能な対価を設定して関係性を築くのが大事なのです。
コミュニティ思考100 [12]
 外的環境の急激な変化が起きている現在、「代替不可能な存在になる」ことの意味はますます強くなっています。コミュニティづくりは、この「コアバリュー」を定義し、発信し、一緒にビジネスを広めてくれる仲間を獲得するのに、最も有効な手段と言えるのです。

 この辺りも大幅カット。「外的環境の変化においてコアバリューが重要」というメッセージは表現を変えて完成原稿に埋め込まれていますが、編集さん曰く「著者には、自分の言葉で語ってほしい」とのことで、表現の仕方はだいぶ変わってます。「引用に頼り切らずに自分の言葉で語り切る」というのは意外とあまり経験が少なくて、いい訓練になりました。

書籍「コミュニティ思考(仮)」は6月中旬頃発売予定

 というわけで、いかがでしたでしょうか。この #コミュニティ思考100 という企画はまだまだ続く予定ですので、ぜひ興味湧いた方はツイッターをフォロー下さい。最近の内容は完成稿のものに近づいていますが、本の内容をちょこまかと蔵出ししていくので、どうぞご期待下さい。

 ちなみに本の発売日ですが、当初は5月とアナウンスしておりましたが、6月以降になりそうです。中旬くらいかな…

 このまとめ記事も好評であれば、[13]以降の解説ものっけようかなと思っています。フォローとかLikeとか押していただけると励みになりますので、なにとぞよろしくお願いします。

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