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肩鎖関節脱臼と理学療法

こんにちは!理学療法士の田中です.(Insta:output_nodeshi)

前回は肩関節脱臼についてまとめました.
今回は肩鎖関節脱臼についてまとめていこうと思います!

肩鎖関節脱臼は脱臼Typeによって保存療法と手術療法に分かれます.
外来リハビリをしていると保存療法での患者様が多いように感じます.
どんな病態で,なにが重要なのか理解できたらいいなと思いまとめてみましたので読んでいただけたら幸いです.
また,鎖骨の動態は以前まとめていますのでこちらも併せて読んでいただけると理解しやすいかと思います.

では早速本題に入っていこうと思います!

①肩鎖関節脱臼の疫学

肩鎖関節脱臼は肩関節疾患の外傷のなかでも9~10%を占めます¹⁾²⁾.
柔道の受け身や,ラグビーのタックルなどのコンタクトスポーツや野球などのオーバーヘッドスポーツで多く見られます.そのため若い男性の有病率が高いとされます¹⁾.

肩鎖関節脱臼はレントゲンによるRockwoodの分類で診断されます.
Rockwoodの分類はⅠ~Ⅵまであり,Ⅰ~Ⅱは保存療法,Ⅳ~Ⅵは外科的適用とされています.Ⅲに関しては明確な規定がなく,場合によって選択されていようです²⁾.

②肩鎖関節の機能解剖

肩鎖関節の静的安定性は靭帯が関与し,動的安定性は筋肉が関与します.

静的安定性は肩鎖関節靭帯と烏口鎖骨靭帯(円錐靭帯・菱形靭帯)によってつくられます³⁾⁴⁾.

肩鎖関節靭帯は鎖骨の前後方向の動きを制動し,垂直方向の制動より3倍強く制動できるとされます⁴⁾.
烏口鎖骨靭帯(円錐靭帯・菱形靭帯)は上下方向の安定性を制動します.
円錐靭帯は垂直方向に強く制動するとされ,菱形靭帯は鎖骨の後方への動きを制動するとともに,肩鎖関節への圧縮を抑制します⁴⁾.

動的安定性は三角筋と僧帽筋によってつくられるとされていますが,明確な機序は明らかになっていません⁴⁾.

③Rockwoodの分類

肩鎖関節脱臼にはRockwoodの分類というものがあります.
Ⅰ~Ⅵ段階まであり,それぞれレントゲンで診断されます.

Rockwoodの分類⁵⁾
TypeⅠ:肩鎖関節の捻挫,鎖骨の脱臼は認めない
TypeⅡ:肩鎖靭帯・烏口鎖骨靭帯の部分断裂,肩鎖関節の亜脱臼
TypeⅢ:肩鎖靭帯・烏口鎖骨靭帯の完全断裂,肩鎖関節脱臼(正常の烏口突起-鎖骨間距離の25~100%)
TypeⅣ:鎖骨の後方脱臼
TypeⅤ:正常烏口突起-鎖骨間距離の2倍位以上の転位のあり著名な上方脱臼
TypeⅥ:鎖骨の下方脱臼,烏口突起の下に鎖骨の遠位端が入り込む

TypeⅠ~Ⅲは保存適応とされ,TypeⅣ以上は手術適応とされることがおおいです.
またTypeⅢでは鎖骨付着部の三角筋損傷は平均36.5%とされ,僧帽筋では平均8%の損傷が認めれらています²⁾.
TypeⅤでは鎖骨付着部の三角筋損傷は82.3%とされ,僧帽筋は平均15.4%損傷されます.さらに大胸筋の鎖骨部線維の一部も損傷することがあります.

④肩鎖関節脱臼と理学療法

肩鎖関節脱臼は前述したように,Typeによって筋損傷をきたしています.
僧帽筋を損傷すると肩甲骨の固定性が低下し,前鋸筋や菱形筋のover useにより易疲労が起こりやすくなると考えられています⁶⁾.
そのため,私は肩甲骨周囲の筋力強化や運動学習は早期からするようにしています.

また僧帽筋下部線維の機能低下が起こると肩関節の外転制限につながりやすくなるとされます⁶⁾.60~90°の外転では僧帽筋中部線維が主体となりますが,90°以上では僧帽筋下部線維が主体となるためです.
これに対して徒手での介助運動による運動学習や筋力強化が必要だと考えています.



【まとめ】

・肩鎖関節脱臼は若い男性に多いく,コンタクトスポーツで多くみられる
・肩鎖関節は主に静的安定性である靭帯が制動している
・Rockwoodの分類はレントゲンで判断される
・TypeⅠ~Ⅱは保存療法でありTypeⅣ~Ⅵは手術適応とされる
・TypeⅢは場合によって手術適応になるが,明確な基準はない
・肩鎖関節脱臼患者は肩甲骨周囲の筋力強化が必要

今回は以上になります.最後まで読んでいただきありがとうございました.
肩関節脱臼の患者様のリハビリは肩甲帯の機能も大切になっていくかと思います.多くはない疾患ですが稀な疾患でもないので,この記事を読んでいただき少しでも読んでくださった方のお力になれたら幸いです.今後ともよろしくお願いいたします!

今年はこの記事をもって終了とさせていただきたいと思います.
初めてnote記事を書き始めてから12ヶ月間,見てくださった方々ありがとうございました!来年ももっと成長していけるように頑張りますので,今後ともよろしくお願いいたします.
それではまた来年…('ω')


【参考資料】
1)星加昭太,他.スポーツ競技者の肩鎖関節脱臼に対する保存療法-スポーツ復帰に着目してーkatakansetu(The shoulder joint),2014;Vol38,No.2:422-425
2)Kurata S,et al.Acromioclavicular joint instability on cross-body adduction view: the biomechanical effect of acromioclavicular and coracoclavicular ligaments sectioning. BMC Musculoskelet Disord. 2022 Mar 23;23(1):279.
3)佐原亘,他.肩甲骨のバイオメカニクス.JpnJ Rehabil Med2016;53:750-753
4)Flores DV,et al.Imaging of the Acromioclavicular Joint: Anatomy, Function, Pathologic Features, and Treatment. Radiographics. 2020 Sep-Oct;40(5):1355-1382.
5)青木隆明.鎖骨脱臼Rockwood分類の解剖学的検討
6)森原徹,他.保存療法を行った肩鎖関節脱臼患者の挙上運動における肩甲骨周囲筋活動.肩関節,2011;35巻第2号:645-648

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