肩関節におけるMRI画像の見かた
こんにちは!理学療法士の田中です.(Insta:output_nodeshi)
新年度を迎え,私は4年目になりました!
前回は肩関節におけるレントゲンの見かたについて書かせていただきましたので,今回は肩関節におけるMRI画像の見かたについてお伝えしたいと思います.
では早速本題に入ります!
・肩関節におけるMIRの基本
肩関節のMRIは基本的に斜位冠状断,斜位矢状断,軸位断です.
なぜ正面ではなく斜位なのか?
そう思われた方もいらっしゃるかと思います.私も初めはそうでした.
肩関節の関節窩はやや斜め前方を向いています.
そのため、前面からの撮影では関節窩に垂直な像は撮影できません.
斜位冠状断は関節窩に垂直平行な面で撮影します¹⁾.
この面では腱板断裂部や退縮率,腫脹の評価に有用です.
斜位矢状断は関節窩に平行な面で撮影します¹⁾.
この面では筋の萎縮評価に有用です.
軸位断はMRIの基本となる水平面の撮影です¹⁾.
この面では関節唇損傷や肩関節不安定症の評価に有用です.
また,上腕二頭筋長頭腱の炎症や脱臼の確認にも使用されます.
①腱板断裂の種類
腱板断裂は大きく分けて全層断裂と不全断裂に分けられます¹⁾.
MRIで見る時はT2強調画像で高信号,T1強調画像で低信号で抽出されます.基本的にはT2強調画像で確認するのが良いかと思います.
全層断裂はその名の通り腱板筋の断裂です.
不全断裂は腱内部断裂,関節側断裂,滑液包側断裂の3つに分けられます.
不全断裂は全層断裂に比べ、萎縮が少なく筋力は比較的保たれることが多いです²⁾.
腱内部断裂(Intratendinous tear)
この断裂がある場合は腱板修復術後の予後はあまりよくないとされています.
関節側断裂(Articular-saided tears)
発生機序は不明な点が多いですが,外傷性が関与している報告は多くあります³⁾.
滑液包側断裂(Bursal-saided tears)
MRIでは関節内水腫が見られ,滑膜炎を起こしてる可能性が示唆されるそうです⁴⁾.
②Goutallier分類
MRIではT2強調画像で筋肉の萎縮評価がしやすいとされます¹⁾.
その評価の1つとしてGoutallier分類があります⁵⁾.
これは筋肉の脂肪浸潤を分類したものです.
腱板修復術におけるカットオフはStage2とされており,Stage3以降は術後の外旋筋力が期待できないとされています.
③Cofildの分類
腱板断裂においてどの筋が断裂しているのかを見るには斜位矢状断でみると分かりやすいと思います.
腱板断裂は切れている大きさによって小断裂・中断裂・大断裂・広範囲断裂に分類されます.それをCofildの分類と言います⁶⁾.
1㎝未満を小断裂,1~3㎝を中断裂,3~5㎝を大断裂,5㎝以上を広範囲断裂と分類されます.1・3・5分類と覚えると何センチまでが何断裂だったかが分かりやすいかと思います.
④腱板断裂好発部位
最後は腱板断裂における好発部位をお伝えしたいと思います.
私が一番最初に書いた記事にも乗せた腱板の付着部を覚えているでしょうか?上腕骨の大結節はsuperio facet・middle facet・inferior facetの3つに分かれていいます.
棘上筋はSFと一部が小結節に付着します⁷⁾.
棘下筋はSFについている棘上筋の上に被さりながらMFに広く着きます.
小円筋はIFに付着しています.
腱板の断裂の好発部位は棘上筋と棘下筋の移行部(★)であるとされています⁸⁾.
【まとめ】
・肩関節MRIの基本像は斜位冠状断,斜位矢状断,軸位断である
・腱板断裂には大きく分けて全層断裂と不全断裂がある
・脂肪浸潤の分類としてGoutallier分類がある
・腱板断裂の分類としてCofild分類がある
・断裂部位の好発部位は棘上筋と棘下筋の移行部である
今回は以上になります.最後まで読んでいただきありがとうございました!
MRI画像は立体的なイメージがないと難しいので,レントゲン画像より苦手意識は多い方は多いかと思います.
この記事を読んで少しでも読影する際に役立てていただけると幸いです.
次回は肩関節から少し離れて、橈骨遠位端骨折について少し触れたいと思います!それではまた…('ω')
【参考資料】
1)佐志隆士,他.肩関節MRI読影ポイントのすべて.MEDICALVIE
2)松浦恒明,他.腱板断裂の断裂部位は回旋筋力に如何に影響を及ぼすか?.肩関節,2008:32
3)山中芳,他.腱板関節面断裂の検討.肩関節.17 -2,325‐329
4)尾崎二郎,他.腱板表層不全断裂について.日関外誌,V,1,1986
5)Goutallier,et al.Fatty muscle degeneration in cuff ruptures.Clin Orthop Relat Res1994 Jul;304:78-83
6)DeOriojK,CofiledRH:Resultsofasecondattemptatsurgicalrepairofafailedinitalrotator-cuffrepair.JBoneJointSurgAm,1984;66:563-567
7)望月智之,他.肩後上部の解剖(棘上筋,棘下筋,小円筋の構造について).特集/肩関節疾患の最前線
8)H.Mike Kim,et al.Location and Initiation of Degenerative Rotator Cuff Tears-An Analysis of Three Hundred and Sixty Shoulders.THE JOURNAL OF BONE AND JOINT SURGERY,INCORPORATED.2010