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橈骨遠位端骨折のリハビリポイント

こんにちは!理学療法士の田中です.(Insta:output_nodeshi)

前回は橈骨遠位端骨折のレントゲンの見方についてまとめました!
今回は前回の続きとして、橈骨遠位端骨折における骨折分類とそれに対するリハビリのポイントをまとめていきたいと思います.

では早速本題にはいっていこうと思います!

・橈骨遠位端骨折の分類

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橈骨遠位端骨折は上記3つ以外にもHutchinson骨折というのもあります¹⁾.
Hutchinson骨折は橈骨茎状突起の斜め骨折のことです.

今回は橈骨遠位端骨折でよく言われるColles骨折Smith骨折Barton骨折のリハビリポイントについてまとめていこうと思います.

・Colles骨折

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Colles骨折は高齢者によくみられる骨折です.
前腕回外位+手関節背屈位で手をついた際に受傷しやすいとさています²⁾.

リハビリのポイントは3つです.
①手関節掌屈支持組織の短縮
②固定期間中の拘縮
③保存療法時の前腕屈筋

①Colles骨折では手根部が背側転位しているため,掌屈位となり手関節掌側の支持組織が損傷or短縮している可能性が考えられます.
手関節掌側の支持組織とは撓側側副靭帯(RCL),橈骨舟状有頭靭帯(RSC),橈骨舟状月状靭帯(RSL)があげられます.
これらが短縮位のままだと舟状骨は掌屈(直立)化することがあります.
舟状骨が掌屈化している状態をVISI変形(volar intercalated segament instability)と言います³⁾.
VISI変形が起こっている場合には掌側支持組織の短縮が起こっている可能性があるので,徒手や物理療法機器を使用して伸張していくのが良いかと思います.

②骨折時には骨折周辺組織が損傷している可能性があります.
そのため固定期間中に組織の癒着や関節の拘縮を生じる恐れがあります.それを予防することがリハビリをスムーズに進めるためには大切です.
予防のために固定期間中から深指屈筋・浅指屈筋の滑走性を確保しておくことや,背側から骨間膜をマッサージしていおくことで掌側へのアプローチしておくと良いかとおもいます.

③保存療法で気を付けることは腕橈骨筋の収縮です.
腕橈骨筋の付着部は橈骨遠位にあります.保存療法でギプス固定している場合に腕橈骨筋の収縮が入ると骨片を近位へ転位させてしまう可能性が考えられます²⁾.固定期間中のADL動作指導をしっかり行うことが大切かと思います.

・Smith骨折

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Smith骨折は若者高エネルギー骨折で多いとされています.
手関節背屈位橈骨遠位に剪断力がかかった場合や,掌屈位で手をついた場合に受傷することが多いと言われています³⁾.

Smith骨折のリハビリポイントは周囲軟部組織の損傷把握です.

高エネルギー骨折では骨折周囲の軟部組織損傷が大きいく,拘縮が生じやすくなってしまいます.特に長母指伸筋総指伸筋は近位骨片にぶつかりやすくなるため損傷しやすいと考えられます.
また,反対側の掌側には方形回内筋が存在します.損傷している場合には拘縮を生じ,回外制限をきたすこともあるので考慮できると良いかと思います.

・Barton骨折

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Barton骨折は関節内骨折です²⁾.
手根部が背側転位している場合には背側Barton骨折,掌屈転位している場合には掌側Barton骨折と言われます²⁾.

背側Barton骨折Colles骨折と同じ骨折線が関節面まで到達しています.
掌側Barton骨折Smith骨折と同じ骨折線が関節面まで到達しています.

背側Barton骨折は手根部が背側転位しているので,掌屈していることになります.そのため背屈位で整復することで月状骨と橈骨関節面の適合を合わせます²⁾.
掌側Barton骨折は手根部は掌側転位しているので,背屈していることになります.そのため掌屈位で整復することで月状骨と橈骨関節面の適合を合わせます²⁾.
以上を踏まえると背屈Barton骨折では掌屈ROMを慎重に行い,掌側Barton骨折では背屈ROMを慎重に行っていくことが良いかと思います.

また,Barton骨折は骨折線が関節面まで到達しているため,関節面への圧が強くなるようなリハビリは開始時期を医師にしっかりと確認しておくことが好ましいと考えます.

・目標値

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患者さんが怪我したときや術後に、一番気になることは”予後”ではないでしょうか?自分が未知の状況になった時は先のことが分からないと不安だとおもいます.
私はよく橈骨遠位端骨折の患者さんを担当した際に以下のようなことを一番初めにお話しします.

①どのくらいの時期になにができるのか
→目標値など具体的におつたえできるとリハビリのモチベーションにも繋がるのではないかと考えています.
②そのために今は何をする時期なのか
→ADL指導はもちろんですが,炎症管理や癒着予防などの具体的な自主トレ方法をこの流れでお伝えすることでリハビリに積極的になっていただければと思っています.

例えば術後(ロッキングプレート)の患者さんでは3ヵ月ROMは反対側95%⁴⁾⁵⁾を目指していくようにしてます.
若者のスポーツ復帰では骨癒合を前提に,握力ROM反対の側の80%以上⁶⁾を目指すようにしています.上肢を使用しない運動は4週たあたりから開始⁷⁾することもあるようですが,もちろん医師の指示が第一優先ですのであくまでも目標としてお伝えします.

【まとめ】

・橈骨遠位端骨折にColles骨折,Smith骨折,Barton骨折の3つがある
・Colles骨折は屈筋支帯の損傷を考慮・固定期間中の拘縮予防・腕橈骨筋の収縮を考慮する
・Smith骨折は手指伸筋群の損傷を考慮する
・Barton骨折は関節面の圧縮を考慮して筋力強化を時期を検討する
・目標値や時期を具体的にお伝えする


今回は以上になります.最後まで読んでいただきありがとうございます!
橈骨遠位端骨折だけではなく,骨折のリハビリではどこが・どう折れているのか,それはどの軟部組織に影響しているのかを予測して介入することが大切だと思っております.
この記事はあくまでも私が考えるリハビリのポイントであって"絶対にこれだけがいい"と思っている訳ではありません.あくまでもこの記事を読んで,少しでも皆様の臨床の参考になれれば幸いだと思っております.

次回は手関節の機能解剖をまとめていければと思います!
月に1回はnoteを更新していきますので,今後ともよろしくお願いいたします.それではまた…('ω')

【参考文献】

1)Jack A, et al.Fracture of the Distal Radius: Epidemiology and Premanagement Radiographic Characterization.American Journal of Roentgenology 2014 203:3, 551-559
2)青木隆明.運動療法に役立つ単純X線の読み方.MEDICAL VIEW
3)大森信介.手関節のバイオメカニクス.Jpn J Rehabil Med 2016;53:762-764
4)橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017
5)細川高史.橈骨遠位端骨折-スポーツ選手の手術治療・高齢者の保存治療-.MB Med Reha No.244:25-33,2020
6)高畑智嗣.橈骨遠位端骨折.臨床スポーツ医学:Vol.35.No3(2018‐3)
7)Robertson GA, et al. Fractures in sport: Optimising their management and outcome. World J Orthop. 2015 Dec 18;6(11):850-63. 

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