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水に流すか流さぬか
すこし前に、ヤフーのトピに「欧米では食器洗剤の泡を流さない」というのが出ていたと思う。
タイトルを見ただけで、中身は読んでいない。
料理番組で、ときどき俎を布巾で拭いて次の食材を切るという場面が出てくる。
私にはあれができない。
俎を洗わずにいられない。
私の価値観の中では「拭く」と「洗う」には厳然とした差があって、洗う代わりに拭くというのがどうしても納得できない。
気持ち悪い。
イギリスにホームステイをしていた友達の話。
二つあるシンクのひとつで、奥さんが食器の汚れをスポンジで洗っていた。
シンクには、大量の洗剤が投入されていて、アワアワになっている。
友人は、隣のシンクの前で待った。
この泡を流そうと思って。
すると「はい」と渡されたのは布巾。
なんと、泡をすすぐことなしに、いきなり布巾で拭けと言うのだ。
友人は、最初自分の語学が拙いせいだと思い、何度も聞き返したが、指示に誤りはない。
それで後で、奥さんの目を盗んで、お湯で流し洗いをして片づけたという。
そして、別の家庭にステイしているクラスメートに尋ねると、どこの家でもそうだとわかった。
彼女はステイ中、ずっとその気持ち悪さを我慢しながら、ときどきこっそり洗い直した。
その話を聞いたとき、私が思い出したのは「名探偵ポアロ」のテレビシリーズ。
グルメであるポアロは、自分で料理を作るシーンも多いが、その片付けのときに、いつもすすがないのだ。
二つ目のシンクにたぶん熱湯(でも、手を入れられる程度)が張ってあって、そこをくぐらすだけ。
いきなり泡を拭くよりはましだが。
そういえば、昔の日本では、台所洗剤で野菜も洗っていたと思う。
もちろん、すすいでいたけれども、それでも今思い出すと気持ち悪いと感じてしまう。
この話を南米に住む友人に話した。
すると、日本ほど蛇口から出る水を当たり前と思って使う国はない、と言われてしまった。
なるほど、と得心し、恥じ入った。
しかし、途中のフランス暮らしを挟んでも、どうしても「流水ですすぐ」ということを止められない。
節水と言われても、洗い桶に溜めた水やお湯にくぐらせて終わり、ということができない。
洗剤を布巾で拭き取る、という行為が、私の習慣になることはないと思われる。
いまは洗いものはすっかり食洗機のお世話になっている。
洗剤洗いのあと、しっかりすっきり洗い流して乾かしてくれる。
蛇口を開け放したまま洗ったりすすいだりするよりは節水になっているという話だが、金額的な差はあまり感じていない。
ラクチンなので、精神的・時間的なお得感が大きい。
ただ、水に対して、とっても贅沢になっているんだなぁと思う。
でも、そういうことに気づかないより、気づいたほうがいい。
先述のイギリス滞在経験のある友人が、インドの田舎に住む友人に「泡を流さない」愚痴を言ったら、キレ気味に言われたそうだ。
「飲める水をお風呂に使ったりトイレで流すの!?」
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