振ればカラカラと音がする
いまの正業(副業?)も残り1週間となった。
夫がいたときも、父や母の通い介護をしていたときも、兄を在宅介護していたときも、もう何十年ものあいだ、毎週日曜日に平日分のお惣菜を作るのが習慣になっている。
リモート主体となっても、なんとなくそうしていた。
昔は、夏でもお弁当を持って行っていたので、お弁当にもできるし夕食のおかずにもなるというものが多い。
しかし、ここ何年かは、昔からは考えられないほどの暑い夏になっているので、さすがに怖くて持って行けない。
昨日の昼食はベーコンとピーマンのペペロンチーノのパスタ。
夕食は親子丼。
それとは別に、豚小間と新じゃがのきんぴらと、ピーマンの肉詰めを作った。
うちのピーマン肉詰めは横切り。
肉自体にも薄く塩コショウしてあるので、これだけでもおかずになるのだが、大抵は、火が通ったら生姜を利かせただし汁に漬ける。
カレーのルーだけ溶かし、これを具材としてぶち込むこともある。
ちまちまと詰めるのは面倒だが、かじることなく一口で食べられるのが好き。
お弁当時代の名残り。
来週から11月いっぱいくらいまでは仕事をしない予定。
仕事だけでなく、何もしない予定だ。
何の予定もないことを楽しむ。
時間に関係なく、起きたいときに起き、お腹が空いたら食べる。
眠くなったら、というのはなさそうなので、これは潔く諦めて、日没から日付の変わらぬあたりまでのどこかで薬を飲んで横になる。
でも、これまでのように「どうしても眠らなければ」という義務感は持たずに済む。
仕事でもそれ以外でも、わずかでも暇ができると「この時間にできることはないか」と探してしまう毎日を送っていた。
家具のレイアウトのように「隙間」があると何か突っ込みたくなる。
でも、そこで買い求めた隙間家具は、別になくてもいいものだったのだ。
老後のことを考えれば、この4か月の隙間を埋めてお金を稼いだほうがいいことはわかっている。
4か月後に、条件に合った仕事が見つかるという確率もけして多くない。
でも。
あえて埋めない隙間があってもいいじゃないか。
中身とぴったり合う箱じゃなくて、振ればカラカラと音がする「遊び」のある人生。
昔、教育実習の最終日に、生徒たちからプレゼントをもらった。
皆が下校したあと、一人夕陽の射す教室で開けてみると、大ぶりのシガレットケースのような箱には、色とりどりのチョークが入っていた。
専用の箱ではないので中に隙間があり、振るとカラカラと音がする。
私は青春ドラマのヒロインのごとく、その場に泣き崩れた。
あれから長い年月が流れた。
ようやく私は、あのチョークの箱のような人生を始める。
中身をぎっしり詰めるのは、もうピーマンだけである。