13日の彼
もう秋のドラマが始まった。
時の流れは早い。
「ナンウマ」のドラマは、ちょっと拍子抜けしたような感じ。
まあ、こういうのが描きたかったのかな、とは思ったけれど、個人的には想像したほど盛り上がらなかった。
「何曜日に生まれたか」に興味を持たなかったのもあるかもしれない。
ずうっと前のこと、当時の職場の飲み会で「13日の金曜日」の話になった。
映画がヒットしていたのは知っていたけど、私は血がバーッと出るやつは苦手なので見たことはない。
トイレに立ったメンバーの位置がちょっと入れ替わったりして、いつのまにか別の話題に移った。
ジェイソンのことを話していたこともすぐに忘れてしまった。
隣り合わせになった同僚が不意に言った。
私より若い男性。
「ぼくの誕生日は13日なんだ」
ふーん。
それで、さっきの会話で「13日は不吉」みたいなやりとりがあったのを思い出した。
そうか、当人は気にしていたのか。
こういうとき、どんな顔をしたらいいかわからずに、
「わたし、キリスト教じゃないし」と答えた。
きっと、彼は何十回も耳にしてきたんだろうな。
「13日は不吉」って。
金曜日だったかは知らない。
人それぞれ、ラッキーナンバーみたいなのはあると思うし、居酒屋の玄関でついついその番号の下足箱を探すこともあるだろう。
私も昔の銭湯では、自分の好みの数字の箱に入れたがった。
でも、嫌いな番号は特にないし、何番が不吉とかも思わない。
語呂合わせは、歴史の年号を覚えるのにはいいけれど、数字自体の優劣みたいな話になるとどうにも居心地が悪い。
昔の病院には「4」のつく号室がなかったという話は本当なのかわからない。
私が入院した病院には、304号室も404号室もあったけど。
「し」は「死」ではなく「しあわせ」の「し」だと思っている。
「く」は「苦」ではなくて、「来る」の「く」。
それに9月は誕生月だから、特に好き。
その同僚のことを特にどうとか思ったことはない。
いい大人がそんなつまらないことを気にするのかという人もいるかもしれないが、「気にする」のではなく「気になる」のならどうすることもできない。
人の心は「どうあるべき」には収まらない。
でも私は、あのとき、たまたま二人になって開口一番「ぼくの誕生日は13日」と言ったシーンが、ずっと印象に残っている。
親しくもない私に言わずにいられなかったのかな。
あのとき、「キリスト教じゃないから」じゃなくて、「私は13が好き」と言ったほうが良かったなと、それは強く思っている。
いや、それじゃ、告白めいてるかな?
最低年に1度は、13日の金曜日があるらしい。
その日しか、彼を思い出さないけれど。
読んでいただきありがとうございますm(__)m