ポプラの木~序章
明日の風
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眺望はるか北方の伊吹連山の奥にそびえる金糞岳の山頂に、例年四月には消える「ノタの干雪」も、その年は五月に入りようやく消えた程の豪雪だった。北国街道脇往還街道の峠にある、高番の近在のおばあの昔話を聞くと「あの年はようけ天からいただきなさったけども、おかげさんで何とかひと冬こさせてもろたわ」とお決まりの語り草だった。後に「三八豪雪」として記録を残した年の春の事だった。折しも同年は、長浜小学校の木造校舎が鉄筋コンクリート校舎へと生れ変る、新築工事を起工した年度でもあった。四月に新学期が始まり、五月に運動場に仮校舎が順次でき、六月から木造校舎の解体が本格的に始まると、現場に乗り入れる重機とトラックが数を増し、学校を取巻く環境が一変した。