【 詞 と 詩 】 甘き渦の微笑
甘き渦の微笑
湖面に散らばる手向けを
君は喜んでくれるだろうか
もう起きることも眠ることもない水の上の君
今日私の手にかけられる定めだった愛し子
昨日も死んだはずで
明日もまた死ぬはずだ
これまでの私も同じようにしたことだろう
これからの私も同じようにすることだろう
親と認められた瞬間が終わりなく折り重なるエコーとなり
恐怖のあまり君の白い肌に爪を立てる
偉大なる敗北者が啓示を受けた場所と似た
風の行方を告げる湖畔にて
小さなコテージから浮かぶボートを望みつつ
再び戸が叩かれる日を待ち望む
あの空のように物語はどこから始めてどこで終わらせてもいい
かく語られし永劫よ
巧妙に隠された存在の無意味さに打ちひしがれた諸人へ
どうか微笑を向けて
渦よ
湖面に散らばる手向けを君は喜んでくれるだろうか
もう起きることも眠ることもない君
今日私の手にかけられる定めだった君
昨日も死んだはずで
明日も
耐えられるだろうか
おびただしい幸いに
こじつけてみせよう
塵芥に意味と名を
先へと願うその思いだけが
他人と同じ幸せを願う弱さを打ち砕く
どうか微笑んでおくれ
二度と恐れはしないから
飽きもせず狂いもせず
その瞬間の永遠の訪れを受け入れよう
君の首に手をかける姿で幕を切って落とし
父と呼ぶ笑顔で幕を下ろしてみせよう
僕らは夢を見るのに目蓋を使わず
まばたきに肩をすくめさせては幸せな夢を見る
エントロピーさえも命乞いをするその先で
渦が微笑むその先で
――――――――――
明日の叙景、ボーカルの布です。
聴く「詞」と読む「詩」という二つの側面を持つ歌詞についてゆるく書いていきます。
今回は2nd Album「アイランド」より「甘き渦の微笑」について書いていきます。
ざっくり言うと、この歌詞はニーチェの永劫回帰と平山夢明の「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」を足して二で割ったものです。
以上!
と言いたくなるほど参考にしております。
「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」はホラー好きで知らない人がいたら是非検索してみてください。
苦手は人はスルーで大丈夫!
ここからはニーチェの永劫回帰思想について歌詞に関連する自分なりの解釈を交えながら書いていきます。
しっかりニーチェの勉強をしたい人は普通に本を読んだ方がいいと思いますが、こういう思想の改造もたまにはいいんです。
「事実はない。あるのは解釈だけ」なのですから。
もしも世界がループしているのだとしたら、未来も過去も全部決まってしまっており、自分の選択も成果もすべて自力で得たものではなく、あらかじめ決まっていたことになってしまいます。
また、未来が過去につながってしまっているということは、自分たちの遺伝子はただグルグル回っているだけなので、子孫繁栄(身体的遺伝子)と歴史に名を残すこと(文化的遺伝子)による不老不死の目論見はたやすく打ち砕かれます。
そんな世のあり様(運命)は生命にとって最悪の事態だとニーチェは言います。
そんな最悪に対して人生を肯定するには、たった一瞬でもいいから「これが永遠に、何度繰り返されても構わない」と思えるほど、愛しく思える体験をすること。
ここでは大雑把に「最高の一瞬」とでも表現しておきます。
ニーチェは本気で世界がループしていると信じていたわけではなさそうですが、限りある命の使い方として、どこまでも「個」としての自己実現と自己肯定の大切さを説いていたのではないでしょうか?
中には眉をしかめるような優生思想も散見されるので、ニーチェの取り扱いには注意が必要ですがね。
(優生思想についてはプラトン、アリストテレス、ルソー、ハイデガー、福沢諭吉など教育、倫理に携わる人物の思想とスタンスの中にも見受けられるので、ニーチェだけの問題ではないと捉えることも大切です)
話が逸れました。
ループする世界では過去、未来、そして現在までもがすべて決まり切っています。
つまり、永遠の中から切り取った「最高の一瞬」が存在するためには、その前後である過去と未来もまた必要不可欠のピースとなります。
そうなると、たとえ過去と未来がどんなに悲惨な事柄であったとしても、それは「最高の一瞬」を損なわせるものではなく、そこに至るための布石にしかすぎないのです。
私たちは生まれたときが人生の始まりで、死ぬときが人生の終わりだと思っています。
でも、それは永遠にループする世界においては全くの間違いになります。
終わりも始まりもない時空(もはや時空の概念も脅かされる……)において、人生は自分にとって都合の良いように、どこから始めてどこで終わらせても良いのではないでしょうか?
さながら中心も端も決められない、どこからでも始められて、どこからでも始められない宇宙のように。
たとえば超一流のアスリートが現役を退いた後、生きがいを見いだせずに自堕落な生活をして惨めな最期を迎えたとします。
その人は失意の底で亡くなった。その人の一生は台無しになってしまった。そんな風に断じるべきではありません。
「最高の一瞬」のためには、堕落する未来も必要だったのです。
ループする世界においては、その人が堕落した未来を通じ、やがて過去に戻ってきて再びアスリートとして輝いていた「最高の一瞬」に還るのですから。
だからいいんです。
たとえ幼い頃にひどい体験をしていたとしても、
たとえ晩年が惨めなものだったとしても、
たとえ取返しのつかない過ちを犯してしまったとしても、
たとえ子孫を残せずとも、
たとえ歴史に名を残せなくとも、
他人には無価値であったとしても、自分にとっては「生まれてきて良かった」と思える「最高の一瞬」を手に入れられたのなら、それだけでその人は永劫回帰する世界に打ち勝ったことになります。
それでは、改めて「甘き渦の微笑」の歌詞を読んでみてください。
多分……ちょっとだけ読みやすくなっている……かも?
いずれにせよニーチェの思想は取り扱い注意ですね。
能力主義を助長するおそれがあるので、ここではあえて永劫回帰を説明する上で必須な「超人」という言葉は使わずに述べております。
自他のバランスを取るのは難しいことだと意識した上で、ニーチェには触れるべきだと感じます。
心に「キメラ」を宿しながら学ぶくらいの気持ちで。
余談ですが美少女ゲーム界の哲学枠代表である「終ノ空 remake」もニーチェの永劫回帰を解釈し直した歓喜と狂気のシナリオでしたね。
やはりニーチェと美少女ゲームは相性がいい(そうか?)
それでは次回もお楽しみに。
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