今年印象に残ったコンテンツ【齊藤】
明日の叙景のドラム、齊藤です。
今年印象に残ったコンテンツを書きます。
映画
TAR/ター
5月6月の明日の叙景EU&UKツアーの帰りの飛行機で観ました。
ある種、神のような存在になることを究極的な目的にするとキリがなくなり、どこかでガタがくる。(なるほどだから指揮者という設定なのね)
主人公のターは服のほこりを払うことが癖で、キャラクター描写としてうまい&カッコいいので、一時期自分もやっちゃってた。
ノット・オッケー!
Disney+で去年配信のブラックコメディ映画。
うだつが上がらない主人公の承認欲求が肥大化して、嘘でもってSNS上でインフルエンサーに。活動をする中で、学校銃撃事件に遭いそれをきっかけに銃規制を訴える活動をしているティーンエイジャーと出会い心を通わせるが…。
「手垢のついた言葉」というものがありますが、今年は、ある言葉を使うことで救われている人たちがいる言葉を不用意な手で使い手垢をつける、ということがよくあり、悲しく思った。
この映画の主人公は手垢を付けてしまいます。
フェイブルマンズ
こちらもEU&UKツアー帰りの飛行機で観ました。が、日本語字幕が無かったため英語字幕・英語音声で見始めたところ、最初の10分で「これはかなり凄いのでは!?」と思い、途中で視聴をやめて、後に日本語字幕でしっかり観ることに。
この作品の主人公は上記二作品の主人公とは全く逆で、編集者という映像を操る神であることの怖さや危うさを痛感・自覚しながら、その上で映像制作に勤しむ。
諸事情でライブ映像の編集をしていた時期に観たので、わかった(気になった)箇所が結構ありました。
ウィッシュ
「為政者に関してのエトセトラ。または国家における、企業としてのディズニー(またはエンターテイメント)の理想的な立ち位置」を示した作品という印象。
これは自分によくあることなのだけど、コンテンツの制作者が表現したいことであろうと自分が感じたものが、自分の感覚と合致していると、表層が雑であっても多少満足しちゃう。
予告編でわかる設定を見た時点で、これは結構ハイブローな作品になるのでは?と思っていた。実際に「主人公の亡き父は哲学者」という設定や、中盤自分が知った真実を仲間に説明するミュージカルシーンでは、明らかにプラトンの洞窟の比喩を彷彿とさせる表現が出てくる。
ただ近年のディズニー傘下フランチャイズ作品を観て思うのが、映画の尺を短くすることにこだわり過ぎて、大事なものまでオミットしてはいないか、ということ。残念ながらこの作品にもそれを感じたところです。
ドラマ
THE LAST OF US season1
ゲーム原作のドラマ。ゲームは未プレイ(いずれやりたい…)。
ドラマ「チェルノブイリ」の制作陣と「THE LAST OF US」原作者の共同で制作された作品。良いに決まってる。
メインキャラクターではない脇役のストーリーを一話かけて描き、それが後にメインキャラクターのストーリーに還元される、というのは、とてもドラマ的で素晴らしい表現だと思う。
2話目はゲーム原作者のニールドラックマンがエピソード監督をしているのだが、世界観の構築が良い。が、演者の演技がすこし硬い印象はあり、庵野秀明の実写作品での演技演出と近いものを感じた。
最近はゲーム原作の映像作品がうまくいくことが多かった。来年配信のFalloutドラマシリーズ、A24によるDEATH STRANDINGも楽しみです。
キラー・ビー(原題:Swarm)
チャイルディッシュ・ガンビーノとしても知られるドナルド・グローヴァー監督によるドラマシリーズ。
あるポップスターの狂信的なファンが度を超えてしまう話。
話はとにかくしんどいが、演出が冴えてる冴えてる。固定カメラをうまく使った映像作品はとても好きです。
後半に出てくるカルト教団、その教祖の役にビリー・アイリッシュを起用してるんですよ。キャスティングも冴えてる冴えてる。
EU&UKツアー中の空き時間に観てました。
いちばんすきな花(生方美久脚本作品すべて)
「ノット・オーケー!」の中で書いた「言葉に手垢がつく」ことに紐づけて、このドラマの脚本家は、手垢がついた言葉から手垢を落とす作業をする人だという印象を持ちました。
それに、セリフやモチーフのリフレインが凄すぎる。ドクターマンハッタンみたいな脚本(?)。
テレビ番組
SIX HACK
なかなか説明の難しい番組。シニカル、ブラックコメディ、ホラー、サイケ、メタフィクション、この辺りが入ってます。
祓除
上記SIX HACKの制作陣も参加しているホラーイベントです。これも説明が難しい。
音楽
各メンバー分、プレイリストにまとめてあります。
まとめ
今年印象に残ったものを総評すると、大いなる力には大いなる責任が伴う、ということをそれぞれの角度から描いたものが多かったなと思います。
(header photo by 井上恵美梨)