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【 詞 と 詩 】 キメラ

キメラ

綻びと咽びのキメラを撫でてみたら
幸いと災いのキメラを撫でてみたら
楽になれる気がした

いまにも溶けてしまいそうな車窓に貼りつく青い日差し
数多の命を枯らしても私を明日へと駆り立てた
車輪の調べがまどろみ運ぶ
目蓋が落ちても影は残された

感動と感傷を混ぜ合わせ
適当に受け止められる何かにできたなら
家路のみすぼらしさに嫌気がさすこともなければ
眩しさに目を潰すこともない

二つの世界があると割り切ってみて
光と闇を神様みたく
許されるの?
そちらに行けば

血統書付きの神話も
交配を重ねた哲学も
不都合を切り捨てるか切り揃えるかの違い
好きなものと嫌いなもの
そのまま一緒に抱えていてはいけないの

この街はまだ灯りを欲さない
朝と同じ青空を窓が映す
鍵を差そう
目は腫らさずに
昨日と
これまでと
同じ帰り方なんてできないけど

綻びと咽びのキメラを撫でたら
幸いと災いの

ぬるいタオルケットに包まれて
もう一度あの旋律を聴きながら
今は帰れない誰かを想うことくらい
構わないでしょう
短い夜がそうさせる

綻びと咽びのキメラを撫でてみたら少し楽になる気がした
幸いと災いのキメラを撫でてみたら少し楽になる気がした

――――――――――

明日の叙景、ボーカルの布です。
聴く「詞」と読む「詩」という二つの側面を持つ歌詞について、ゆるく書いていきます。

今回は2nd Album「アイランド」より「キメラ」について。

えー、布家では現在マルプー(マルチーズ×プードル)を飼っています。
今年2月に行った韓国ツアー時、雑談がてら話した途端、サポートギターのGenさんが「キメラの元ネタすかwww」と爆笑。
以来、我が家のマルプーが明日の叙景内における「キメラ」代表と認定されてしまいました。

そもそもマルプーはキメラではない。

せっかくなので、ちょっとだけ思想強めの話をします。
犬を飼っておいてこういうのも難ですが、僕はペットビジネスや水族館、動物園そして動物カフェの類に疑問を抱いております。
でも、いざ可愛い動物を見るとその魅力に抗えないのも事実。
葛藤というか、そういう自分の情けなさこそが歌詞における「キメラ」を如実に表現していると感じます。

また、この歌詞はヘルマン・ヘッセの「デミアン」をモチーフにしています。
ガキ大将に嘘のワル自慢をしてしまい、それをネタに強請られてしまうことになった主人公シンクレールが「これまで過ごしてきた温かい我が家が自分のものではなくなってしまった」とセンチになったり「偉そうに叱る父親は、自分がダークサイドに片足突っこんでいることを知らないんだ(ドヤァ)」と中二病を発揮したりするお話です。
まさに
「家路のみすぼらしさに嫌気がさすこともなければ
眩しさに目を潰すこともない」
という感じですね。
作品の説明がひどい。そして序盤もいいところ。
脳みそ揺さぶる素晴らしい小説なので未読の方は是非チェックしてみてください。

ちなみに
「ぬるいタオルケットに包まれて
もう一度あの旋律を聴きながら」
というフレーズはフリーゲームの「タオルケットをもう一度」が元ネタ。
小説版もあるよ。

最後に読む「詞」について。
「読む」とは多数派の自分たちにとっては「見る」という視覚的な行為に該当すると思います。
勿論、目の見えない人が点字に触れて指先で読むこともありますね。
ただ、ひとまずここでは暴力的ではありますが、読む=見るという点から記事を書いていきます。

漢字、ひらがな、カタカナ、はたまた英語など、同じ言葉でも文字によって受ける印象が異なることがありますね。
ひらがなやカタカナ、そして英語はカジュアルさや親しみやすさを表現できるのに対し、漢字は少し厳かな印象を抱かせますね。
勿論一概には言えませんが。

以前の僕は「ベッド」と書いてもよいところを「寝台」と書いたりしており、カタカナ(あるいは英語?)を頑なに避けていた部分がありました。
おそらく読む人との距離をあまり詰めたくなかったのかなと思います。
ただ、2nd Album「アイランド」ではカタカナだけではなく固有名詞すら解禁してしまい、ぐっと砕けた表現ができるようになりました。
こだわりを捨てたことで、多くの人に親しまれる作品につながったと思います。

他にも書きたいことはたくさんありますが、今回はここまで。
noteは毎週水曜日20時に更新!
次回の【 詞 と 詩 】「土踏まず」の記事でお会いしましょう。

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