たなごころ
ぱたんと閉じたノートの表紙に、そっと手のひらを乗せる。
このノートは私のパンドラの箱。誰にも見せられない、悩みやら苛立ちやら思い浮かんだくだらない思考やら、そして隠している想いやら、そんなものたちがごちゃごちゃに詰まっている。
心なしか、ほんのり、熱を持っているかのような表紙。
誰にも、見られませんように。
だけどきっとこの先のいつかの私が、笑顔でこのノートと向き合えますように。
そんな想いを込めながら、手のひらを重ね続けた。
◆たなごころ(掌)…手のひらのこと。「手の心」が語源とされ、単に部位としての手のひらだけでなく、想いが含まれてきます。
「掌を合わす」というと手を合わせ祈ること。「掌の玉」とは大切なもの、最愛の子供を指すときなどに使います。
諺で、「握れば拳、開けば掌」という言葉があります。他人を打つ拳も、他人を撫でる手のひらも、いずれも人の手であることには変わりない。心の持ちようで同じものも様々に変化する。日々忙しなく、つい物事を雑に扱い、気が付けば拳を握ってしまいがちですが、つと思いとどまって拳をふわりと柔らかく開き、自分の心のうちを、掌を、見つめていきたいなと思います。
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