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恋風

本気になっちゃいけないって、わかってたんだ。

あの人の心にいるのは、私じゃない。
割り切った関係、遊びだけの関係。
そのはずだったのに。

あなたが重ねてくれた左手が、なぜだかずっとあたたかいんだ。

ふわりやわらかい春の風が、「あなたの想いなんて届くはずないよ」と私を嘲笑うように包み込む。

泣いちゃいけない。願っちゃいけない。

あたたかいようで冷たい、春の風。
どうせならこの気持ちも、さらっていってくれたらいいのに。


◆恋風…恋の切なさを、風が身に染みるのに例えた言葉。
春の季節に吹く風は、あたたかかったり、冷たかったり。時折吹く冷たい風は、切ない恋心を思わせます。
優しいかと思えば急に冷たくなる気まぐれな恋人も、さながら春の風のよう。
そんな風に乗せられて、思わぬところに来てしまった心を持て余す、そんな話にしてみました。
物思いに耽ったまま迎える春の暁。ぼんやりと輪郭のゆるい世界は、涙のせいなのでしょうか。

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