![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97202557/rectangle_large_type_2_dab9d6d95809dfd5d36dc2d97546913d.png?width=1200)
[プチ怪談]ヒトダマ 1
初回のプチ怪談で、友人3人の不思議体験を記した。今回はそのとき私が語った話。
※※※
私に霊体験は、ない。
あるのは「ヒトダマを見た」という経験が二度ばかり。
今日はそのうちの一つを記す。
自分の実家は福島県。福島市の右上にあるD市というところだ。
あれは私が小学校低学年の頃、八月だった。
当時はお盆の頃になると、毎年のように父の妹(つまり叔母)が子供二人を連れてうちの実家に遊びに来ていた。
姉妹のいなかった私はそりゃあ嬉しくて、東京からはるばるやってくる彼らを迎えたものだ。
その年も叔母と従姉弟達を迎えに、福島駅まで父の車に乗って行く途中の出来事であった。
家の裏門から出て、細い道を少し行くと福島に向かう街道のT字路に出る。そこで右折するために止まっていたときだ。
時刻はまだ夜の八時過ぎ。目の前はぶんぶん車が通り、なかなか車の列が途切れない・・・
そう思ってふと 道のかどに立っている街灯を見上げると
ゴルフボールくらいの大きさの真っ白なヒトダマが三つか四つ、短い尾を引きながらライトの周りを飛び回っているのを私は見た。
街灯は白色蛍光灯。車の往来が激しくて、辺りは決して暗くないし騒々しい。
そんなごくありふれた光景の中にヒトダマはいた。
街灯の周りに群れているそれは、灯りに寄ってくる虫のよう。また、人間が街角で井戸端会議してるようにも見えた。
初め、見間違いかと思った。更に、誰かの悪戯かとも思った。でも全然そんな不気味な場所じゃないのだ。
私は隣の運転席に座っている父に言った。
「お父さん、火の玉飛んでるよ」
「あぁそう」
父は私が指すほうを見たのか見ないのか、ぼーっとうなづいて見せた。
子供心に、「見えてないのかな?」と思った。ほんとに見えてたら、もうちょっと反応が違ってるはずだから。・・・
ようやく車の列が途切れ、父は福島方面へ曲がってT字路を後にした。
従姉弟を迎え、はしゃぎながら帰ってきた私は、あの角を曲がるときにもう一度街灯をみたが、もうヒトダマはいなかった。
昔も今も全然怖さを感じない、不思議な思い出である。