一緒に暮らすこと、それはきみの呼び名が増えていくこと #うちの保護いぬ保護ねこ
追記:書籍化されました!
https://www.amazon.co.jp/b/?ie=UTF8&node=16332980051
2022年春、我が家にはじめての保護犬がやってきた。名前はりんちゃん。推定2歳。元野犬のMIX犬。
我が家はかれこれ20年、犬と一緒に暮らしてきた。初代♀・二代目♂ともに柴犬で、名前はどちらも「さくら」。いつも馴染みの柴犬ブリーダーさんに声をかけて、ふたりのさくらと運命の出会いを果たしてきた。
そんな私たちが、なぜ保護犬を迎えるに至ったのか。きっかけは、二代目さくらとのお別れだった。
もらった愛をぜんぶお返ししよう
昨年末、二代目さくらが天国へ旅立った。苦しむことなく、家族全員に囲まれて名前を呼ばれながら、安らかに目を閉じた。私たち家族にとっても、きっとさくらにとっても、思い残すことのないしあわせなお別れだった。
さくらの四十九日を過ぎてから、新しく家族を迎え入れることを考え始めた。もちろん馴染みのブリーダーさんにまた声をかけることもできたけど、自然と家族全員の気持ちは同じ方向を向いていた。
「次に我が家に来る子は、保護犬にしよう」
初代・二代目さくらから、たくさんの愛をもらってきた。私たちも惜しみなく愛を注いできたけど、犬という存在はその数十倍・数百倍の愛を返してくれる。
その恩を「犬」という大きな対象に対してお返ししたい。おうちが見つからずに困っている犬がいるなら、その子を迎え入れよう。さくら達からもらった愛としあわせを、ぜんぶその子に注ごう。
別に何も返ってこなくてもいいよね、だってもうさくらたちから十分もらっているから。そんな気持ちだった。
縮こまりさんとの出会い
ネットにはたくさんの保護犬情報が飛び交っている。実際に探し始めるまで、こんなにたくさんの子たちが行き場を失っているなんて知らなかった。
これから家族になるのだから、実際に会ってみないと決められない。私たちがいくら気に入っても、相手の子が私たちを気に入ってくれないと、しあわせにはなってもらえない。そこで、自宅近くの保護施設を訪問することにした。
初めてりんちゃんと出会った日、りんちゃんは怯えて震えて、隅っこで小さく縮こまっていた。優しいお目々が印象的なビビリさん。大好きなおやつも手からは食べてくれなかった。
でも2回目に会ったときはほんの少しだけ心を開いてくれて、何より優しいお目目が忘れられなくて、この子を迎え入れることに決めた。
時間はかかる、でもそれでいい
迎え入れの準備を整え、ついにりんちゃんが我が家にやってきた。好きに移動して良いのに、りんちゃんは寝床のタオルから一歩も動かず、じぃっと壁の方を向くだけ。
本当はさくらたちよりずっと大きな身体をしているのに、縮こまっているから小さく見える。さくらたちがどれだけのびのび振る舞っていたのか、りんちゃんと比べて初めて気づいた。
そんなりんちゃんにも、時間が経つにつれて変化が訪れる。
1ヶ月経つと、お散歩を楽しめるようになった。
3ヶ月経つと、こんな笑顔も見せてくれるようになった。
5ヶ月経つと、なんとタオルを離れて人間の布団に進出し始めた!(まだ人が来ると逃げるけど、布団の心地よさに気付いたらしい)
そして半年ほど経った今、りんちゃんの活動範囲はどんどん広がり、1階のお部屋を自由に行き来できるようになった。リビングがある2階にも興味を持ち始めている。
徐々に慣れていくりんちゃん、徐々に増えていく呼び名
こうして時間をかけて我が家に慣れていくにつれて、りんちゃんはいろんな姿や表情を見せてくれるようになってきた。
先代さくらたちと過ごしていた時から、私たちはその子の個性や得意に「◯◯さん」と名前をつけて呼ぶ。例えば、抱っこされ上手さんとか、マイペースさんとか。
りんちゃんも少しずつ名前が増えてきている。名前が増えるたびに、りんちゃんが我が家に馴染んでいく気がする。
愛され上手さんになってね
先代のさくらたちはもっとたくさんの呼び名があった。中でも何度も呼んだ、ふたりに共通する呼び名は「愛され上手さん」。
さくらたちは生後数ヶ月で我が家に来たので、人間から愛されるのが当たり前。とにかく家族全員で愛を注いできた。
愛されている犬は顔を見ればわかる。外ですれ違う犬も「あぁ大事にされてる子なんだな」と表情で伝わってくる。自信があってキラキラしている。
さくらたちは紛うことなき愛され犬だった。そしてりんちゃんも、愛されの道に確実に進み始めている。
タオルで身体をきれいにしてもらっている時のお顔とか、ブラッシング中にへそ天してぐにゃんとカーブしている姿とか。
「大事にブラッシングしてもらうのは当たり前ですけど何か?」って自信ある表情をしている。初めて我が家にやってきて、じっと壁を見つめていた頃のお顔とは別犬だ。
きっとこれから何度もりんちゃんのことを「愛され上手さん」と呼ぶのだろう。そしてりんちゃんの個性を見つけるたびに、りんちゃんだけの呼び名が増えていくのだろう。
りんちゃん、さくらたちに負けないくらいの愛され上手さんになってね。