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「いい子」の呪いが生きづらい女性をつくる~映画『月光』を見て~

「いいお店があるから、もう一軒飲みに行こうよ」

そう言われてついていくと、そこは男の自宅だった。

…という経験ありませんか?

その後、予想通りの面倒くさい展開(こちらはその気はないのに性行為を強引に誘われる、むしろおそわれる)になるわけですが、何度か続くと「あ~きたね。それね。もうそのパターンだよね。」という感じになっちゃいますよね。

「ついていく方も思わせぶりなんじゃないか」

こういう意見もあるかと思います。

でも、私は飲みに行くのに合意はしていますが、性行為をすることには合意してないんですよ。

うっかり、相手がせっかく飲みに誘ってくれたんだから、無下に断るのは、相手を傷つけてしまうかも、と思ってしまったばっかりに。

性行為は嫌だって言ってるのに、無理やり、強引持ち込もうとするのは、いくら片手で腕立て伏せができた力持ちの私(元ハンドボール部)でも、疲れるわけですよ。

そうしたちょっとした性暴力やセクハラの経験、こわいなと思った経験、女性なら「あるある~」と共感される方が多いのではと思います。

「月光」で頭に残った、親の呪いの言葉

先日、性暴力被害をテーマとする映画「月光」の鑑賞会に伺いました。

前から見たかった映画なのですが、里帰り出産だったため機会を逃していたところ、しあわせなみださんが主催される上映会が企画され、念願がかないました!

「月光」は、被害者の9割以上が警察に被害届けを出せずに、泣き寝入りしているのが実情と言われている、女性の性暴力被害と、その苦しみを描いた作品です。今回はその感想を書きたいと思います。

SatLアクティビスト、きのコちゃんの感想はこちら!

「月光」は、性暴力被害のリアリティを含みつつも作られたストーリーとしての面白さや挑戦を感じる作品だと思いました。

ちょっとした音や刺激でフラッシュバックが起きて苦しくなったり、断片的だった記憶がよみがえってきたり。(ただ、ちょっとオーバーすぎじゃないか…?と思う演出もありましたが。)

そして、主人公のカオリがピアノの先生という設定もあり、重苦しいテーマながらピアノの繊細なメロディに癒されながらストーリーが進んでいくように感じました。

そんな中、私が印象に残ったのは、冒頭の、自分の意に添わず性関係に持ち込もうとされるのは、割と日常で起こっているな~ということ。

そして、親からの呪いの言葉です。

具体的には、「やめなさい」「いい子でいなさい」という言葉。

ユウが母親につらい気持ちを髪の毛を抜くという行動で対処しているとき。

カオリが母親に幼い頃に受けた性被害を話すとき。

母親が「やめなさい」と咎め、子どもの気持ちを受け止めません。

「お母さんがいい子でいなさいって言ったから…」

幼い時の性被害を思い出して母親に感情をぶつけるカオリを見て、性被害にあってしまった原因の一つとして、「いい子」であることの弊害を感じました。

いい子って本当に「いい」の?

子どもが「いい子」であれば、親や周りの大人は育てやすいでしょう。

一方で、そうやって「いい子」を刷り込まれ続ける中で、周りの顔色を伺い、本音をしまい込み続け、自分が何を本当に求めているかわからなくなってしまうのではと思います。

その結果、カオリのあいまいな返事や態度は、結局「強い」人に押し切られてしまい、本当は拒否したいのに、侵入され続けてしまいます。(生徒の母親に無理やり家に押し入られたり、トシオにドライブに連れられて最終的には性被害にあってしまったり。)

そういう私自身も「いい子」を演じてしまう側面があり、特に年上や立場が上の人、自分が好意を寄せている人には自分の気持ちを隠してでも従ったり、いい顔をするという社会性を身に着けているように思います。

一方で、母親になり、つい自分の子どもには「いい子だね」と親にとって都合の「いい子」になるような態度をとってしまい、ハッとすることも。

「お母さんのせいで人生めちゃくちゃになった。」

と、映画の中でカオリが母親に言うのですが、こんな言葉、子どもに言われたら辛すぎますよね。。私は立ち直る自信がありません。

世の中に子育ての責任を母親ばかりに求める風潮があるのも一つの問題かと思いますが、時として、「いい子」を求めることは、自分の気持ちより相手の気持ちを優先させ、自分の意志を表現しづらくする呪いの言葉にもなりうると思いました。

性暴力被害も、セクハラも、親の「いい子でいなさい」という呪縛から、断りづらさや意思表示のしづらさにつながっているという面もあるのではと思います。

「NO」と言っていい。それはワガママではない。

「性的な行為において、嫌な時は嫌とハッキリ言っていい」

「嫌と言っているのにやめないのは相手が悪い」

「お互いの意志を尊重できる相手との関係性を大切にしてほしい」

というメッセージもあわせて私は伝えていきたいなと思います。


執拗についてくるナンパも。

クラブで当然のように腰に回される腕やノリでされてしまうキスも。

飲み会で始まる不本意な王様ゲームも。

家に来る=「セックスOK」といういつの間にかある暗黙ルールも。


これは当たり前じゃない、仕方ないことじゃない、相手が悪いし容認している社会も悪い。女だからってガマンしなくていいんだよ。

そう皆さんに強くシャウトしていきたいです!

映画「月光」では、靴が女性の自立の象徴のように描かれていました。

皆さんが、トラブルをシュッとかわし、たとえつらいことがあっても自分の足で立ち、また人生の道のりを歩いていけることをわたしも応援しています。

刑法性犯罪条項の改正を目指すBelieveキャンぺーン

明治時代から変わらない「刑法性犯罪」を改正し、暴行脅迫要件を無くすことを目指しているBelieveキャンぺーンというものがあります。

先日、国会で若者の声を届けるというイベントもあったのですが、性行為における同意について考えるワークショップを開催しており(大学などで開催してくれる先も募集中とのことです!)今度ピルコンでも3/25、ワークショップにご協力させていただきます。

ぜひご興味のある方はご参加ください!(詳細は↑リンクにて!)

​SEX and the LIVE!!のトークイベントも4月にするよ!

そして!4月15日、SEX and the LIVE!!のトークイベントを開催します!

今回はゲストにトランスジェンダー活動家でライターの畑野とまとさん、ライターの三浦ゆえさんをお招きしてトークイベントならではのぶっちゃけ本音トークを展開していきます。

タイトルは

「ぶっちゃけどうなの?“女子”やってる私たちのホンネ ~ジェンダーと女性の生きづらさ~」

「ぶっちゃけどうなの!?」ということでアクティビスト・ゲスト・参加者共に普段は言えないことも等身大のホンネを語っていきましょう。

日時:4/15(土)

時間:13:30~16:00(予定)

開場 13:00

会費:3000円 学生2500円

初参加の人を連れてきたら紹介者・初参加者どちらも500円引き

場所:みらい館大明114大明スタジオ

池袋駅徒歩13分 要町駅10分

みらい館大明

http://www.toshima.ne.jp/~taimei/index.html

主催:SEX and the LIVE!!(A-live connect)

定員:50人

【申し込み】

こちらより参加申し込みをお願いします。

http://ptix.co/2l7opHr

【イベント内容(予定)】

■ぶっちゃけどうなの!?会場参加型もやっととトーク

OXアンケート

セクハラ・痴漢・DVなど、女性のもやっと経験シェア

■たかだまなみに教えて!コーナー

そもそもジェンダー・性別って何?教えてとまと先生!

女性メディアのセックス特集を斬る!教えてゆえ先生!

■SEX and the LIVE!!でセックス特集を作るなら?

など

【ゲストプロフィール】

■畑野とまと(はたけの・とまと)

ライター/トランスジェンダー活動家。

1965年06月20日生まれ、49歳。 北海道出身。 現在は東京都を拠点にライターとして活動中。トランスジェンダー活動家。トランスジェンダーや、セクシャルマイノリティに関する情報発信を行うサイト『TransGenderCafe』を運営。

海外のマイノリティ情報・医療についての情報を多く発信。

ビデオ編集業・写真屋のカメラマン・システムエンジニア等を経た後にトランスを決意。その後ニューハーフヘルス嬢へと転身。 アダルト誌でライターを始め、縁があってAV女優としてもデビュー。

その後、パートナーの畑野ぷちとまとと一緒に、ゲーム攻略本やアニメ雑誌などの記事などを書いている。

■三浦ゆえ(みうら・ゆえ)

フリー編集&ライター。お茶の水女子大学卒業後、複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。宋美玄著『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズの編集協力はじめ、女性の性と生をテーマに編集、執筆活動をする。著書に『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)

皆様のご参加、お待ちしておりますー!

(Photo by : Daddy-David)

 

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