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東のボルゾイ 2022〜2024年作品の見どころ、製作話

2024年もあとわずか。年の瀬のお忙しい時期、いかがお過ごしでしょうか?

さて、本日12/30より、主宰する劇団「東のボルゾイ」では、過去に上演した作品を一気に配信するイベントが始まりました!2月末までご視聴いただけるのですが、お正月休みのお時間のある際に是非ご覧いただけたら嬉しいです。
私は全作品企画、作曲、演奏で携わっています。

イベント概要

『東のボルゾイ越冬スペシャル “過去作品一挙配信祭り” ~五臓六腑をたぎらせて~』

1. 配信日時 2024年12月30日(月)12:00 ~ 2025年2月28日(金)23:59

2. 配信作品
東のボルゾイ主催公演5作品(ダブルキャスト公演があるため全7本)
①第2回公演 Complex Cure Comedy『彼方が原』(2022)
②第3回公演 Bad Night Comedy『バウワウ』(2022)
③第4回公演 Mind Mirror Musical『IBUKI』(2023)
④第5回公演 音楽介在会話劇『イエスと言え』(2023)A班
⑤第5回公演 音楽介在会話劇『イエスと言え』(2023)B班
⑥第6回公演『ガタピシ』(2024)A班
⑦第6回公演『ガタピシ』(2024)B班

3. チケット
◉『彼方が原』『バウワウ』:各¥1,500(税込)
◉『IBUKI』『イエスと言え』『ガタピシ』:各¥2,000(税込)
◉5作品セット:¥8,000(税込)*7本からお好きな5本をお選びいただきます。

販売サイト…以下のサイトをご覧ください。↓

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さて、今回は過去作品のうち、2022年〜2024年に上演した5作品を配信するのですが、興味はあるけれどどれから見たら良いかわからない、という方のために、各作品について個人的なおすすめポイントをまとめていこうかなと思います。

私自身、普段作品を作っている最中は常に新しい自分を更新したいので、前作はもう過去の不完全なもの、最新状態の自分以外は見せたくない、と思っており、あまりポジティブに思い返すことはないのですが…
たまにふと振り返ると、数年前の作品の生命力と緻密さに驚かされる時もあります。

その時カンパニー一同で命を削って作品を作った痕跡は確かに残っており、今ご覧いただいても楽しんでいただけるところが沢山あるのではないかなと思います。是非皆様のお気に入りの作品を見つけていただけたら嬉しいです。

📺宣伝動画

まずはじめに、5作品をまとめた動画を是非ご覧ください!名場面が詰まっています。


第2回公演 Complex Cure Comedy『彼方が原』(2022)

特設サイトはこちら↓

コロナ禍で座席制限のあった公演なので、この機会に是非沢山の方に見ていただきたい作品です。

劇中で巻き起こる事柄や、そして描きたいもののアウトプット方法が他のボルゾイ作品と比べてかなり異なり、また一般的なミュージカル作品と比較してもかなり異色の作品に仕上がっていると思います。

主人公「彼方」の顔の傷を巡って、過去への精神的な旅、もしくは想像の旅が繰り広げられていきますが、セットが変わるわけでもアンサンブルワークを使っているわけでもないので、その分言葉と音楽と人力の気迫で全てを鋭利に描いていくような作品です。

音楽は、緻密で激しくて、でも美しくて、どこまでも深く堕ちていくような音楽に仕上がりました。
作曲時は、自分が究極の精神状態だとしたらどんな景色を見て何を思うだろうか、何を見つけるだろうか、ということを想像しながら書いたので、結構身を削ったなという感じなのですが、目に見えない世界を音として可視化、ではなく可聴化?する術を理解した期間だったのではないかなと思います。

音楽の形式としても、キャッチーな箇所はあるものの、全くもって親切ではないと思います。でも私の哲学をほぼ全部見せたような作品に仕上がっているのではないかなと。
また、演奏はピアノ1本で、精神を表現するためにかなり複雑な響きや旋律を演奏しています。指がちぎれそうだった記憶が(笑)

※劇中に一部暴力的な描写があります。行為を肯定、助長するものではありません。

✏️こんな方におすすめ
・ダークで濃密なミュージカルを見てみたい。
・スリルミー、SMOKEなど少人数の作品が好き。

📺稽古動画はこちら↓
作中前半に歌われる♪何もない歌


第3回公演 Bad Night Comedy『バウワウ』(2022)

特設サイトはこちら↓

ボルゾイにとって、生き辛い社会と明確に対峙した初めての作品です。前作までと比べると、会社、工事現場、飼い犬など、かなり描かれている世界は具体的。歌詞も、聴いてすぐに楽しめるような言葉遊びの工夫が沢山。

一方演出は抽象的な世界観。
アンサンブルキャストを「思考の概念」として用いた最初の作品でもあります。
「エンプロイーズ」「プラネッツ」のように、各場面のアンサンブル達には名前がついています。

こちらはプラネッツの登場する「冥王星」というナンバー。

不眠症の主人公が、死んだ飼い犬と「考え続ける」頭の中を一つずつ探索する旅に出かけます。

音楽は、ポップさはあるけれど、派手にジューシーに見せるのではなく、考えて、次の思考にいく、そこからまた別の答えに辿り着く、ような、「点と点を線にする」という過程を見せる音楽になっています。
私の音楽を「隙間の美学」だと言われたことがあるのですが、二次元で描いていながらその奥行きが見えてくる、言わば日本画のような美意識が自分の中にあるのだと思います。これで伝わるか分かりませんが…😂
深掘りするとそんな感じなのですが、軽い気持ちで楽しんでいただける曲が沢山あります。

※劇中でセクシャルハラスメント及びセカンドレイプの描写があります。行為を肯定、助長するものではありません。

✏️こんな方におすすめ
・社会で生きていくことに対して生き辛さや疑問を感じている。
・ミュージカルの中でも現代的でポップな音楽が好き。

📺劇中曲披露動画
序盤に歌われる♪我思う故に


第4回公演 Mind Mirror Musical『IBUKI』(2023)

特設サイトはこちら↓

「風邪の時に見る夢みたい」というご感想が多数寄せられた、もしかしたら一番の問題作。
奇妙な旅に出かけたい方におすすめの『IBUKI』は、「多様性」をテーマに、他者と向き合うために自分の価値観と向き合う物語です。

上記↑特設サイトの、早稲田大学文化構想学部教授の石田光規さん、精神科医/ブロガーの熊代亨さんの観劇コメントでは、作品に内在するテーマについてわかりやすくまとめてくださっているので、よろしければ是非ご覧ください。

音楽面は、
・心の中の要素を「ノコギリ」「トンカチ」「ネジ」などに例えている様子を表すべく、工事現場のようなガチャガチャ、ザラザラ、メラメラした世界観の音作り
・精神世界の描写は、一筋縄では答えに辿りつかないような現代人の複雑な頭の中を表す摩訶不思議ミュージック
・精神の旅が深層心理に辿り着いた時の音楽は打って変わって静寂の世界

の3本立てでお送りします。

実は作曲した時の記憶があまり鮮明ではなく、恐らく稽古の時のキャストの気迫で全てが塗り替えられたのだと思います…。笑

とにかくパワーは最強なので、まずは五感で感じていただき、面白がってもらえたら嬉しいなと思います。

📺こんな方におすすめ
・家族や周りの人をもっと知りたい。向き合い方を見直してみたい。
・ボルゾイの世界観を思い切り浴びてみたい。
・音楽ではロックが好き。
・体力には自信がある。

☆稽古動画
冒頭で歌われる♪祝!天邪鬼

前半に歌われる♪地上の天使

中盤に差し掛かった頃歌われる♪俺は逆さま


第5回公演 音楽介在会話劇『イエスと言え』(2023)

特設サイトはこちら↓

ボルゾイの本公演の中で唯一、歌のない演劇作品です。その分脚本島川の文才を存分に楽しんでいただけるかなと思います。
とは言っても音楽はないわけではなく、会話に潜在意識という名の音楽が「介在」してきて、物語は非現実的なフェーズへ横転していきます。

本作の音楽については以前noteにも詳しく書いているので、よろしければ併せてご覧ください。

普通ミュージカルは、脚本と音楽を渡し、それを元にキャストの方々に演技のプランを考えてもらいますが、今回は稽古場で、各々の芝居の解釈に合わせて音楽もギリギリまで調整し、実験を重ねました。本番中も、当日の芝居の細かい感情に合わせて即興演奏を行っていました。A.B2つの班がありますので、お好きな方を選んでいただくor両方観ていただいても面白いかと思います。

✏️こんな方におすすめ
・人生の転機にいる方。
・ミュージカルよりももっと文学的に演劇を楽しみたい方。

📺公演紹介動画


第6回公演『ガタピシ』(2024)

特設サイトはこちら↓

今年4月の公演です。
演劇が演劇である所以、を前面に押し出したような仕組みの作品で、時空も歪むし人物像は何層にも重なっているし、でも過去作品と比べて、一番ストレートにテーマを伝えている、非現実から現実を覗く作品です。

物質的には豊かであるはずなのに、綺麗事ばかりが尊重され心は満たされない、そんな現代を描いています。これまで泥臭く音楽をやってきた身としては、この作品を通して、もっと泥臭く、思いっきり生きる仲間が増えたら良いな、とも思っています。

アンサンブルの身体表現(ジャズダンス、バレエ、など特定のジャンルのダンスではないのがポイントです)はパワフル且つ幻想的で、これまでアンサンブルワークの研究を重ねてきた大舘演出の真骨頂です。

想像力の大波を起こしているところ

こちらも以前楽曲解説noteを書いたので、是非ご覧ください!(内容のネタバレがあります。)

音楽面では、建物=自分の価値観が軋み、壊れていく様子をチェロの音色に例えて表現しています。普通のクラシック/ミュージカルの音楽では聴いたことのないような響きを沢山使っているので、そこに注目していただいても面白いかと思います。

こちらも2班に分かれており、丁寧に言葉を積み上げ物語を紡いでいくA班、エネルギッシュに歌い踊るB班、それぞれ魅力的な作品に仕上がっています。

✏️こんな人におすすめ
・なんだか自分の人生に満足がいかない。何かしてみたいけれど人の目が気になる。
・チェロなど弦楽器の音色が好き。

📺参考動画
稽古動画。序盤で歌われる♪糸をかし

稽古動画。中盤で歌われる♪わた毛

本番動画①

本番動画②

またしても長い文章になってしまいました。すみません。よろしければ是非配信をご覧ください。

最後まで読んでくださりありがとうございました!そして今年携わってくださった皆様、応援してくださった皆様、ありがとうございました。良いお年をお迎えください。

久野飛鳥

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