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【ブラジル知られざる宗教事情】根深い差別と偏見を感じる時
奴隷制度の上に築かれたブラジル
明日11月19日にアフロブラジリアン信仰形態の一つであるカンドンブレー Candomblé を主に日本の方々に紹介するオンラインイベントを企画している。
サンバや最近ではカポエイラが日本でも人気が出て来ているのも、ブラジルの正反対に位置するにも関わらず、弛まぬ努力を続けて来た先駆者たち、今も続ける指導者の方々のおかげである。
日本のSNSでも毎日カポエイラの指導者さんたちや、生徒さんたちが写真や動画をアップしたり、YouTubeでも精力的に情報発信をされているグループも増えて来た。
そんな中で意外とまだ伝わりづらいと思うことが、やはり数百年の奴隷制度に基礎を築き上げて来たブラジルのこの社会構造に根深く残る、人種問題そして主にアフリカ系の文化への根強い偏見があるという事実である。
サンバもカポエイラも元を辿れば、アフリカより連れて来られた人々が故郷の地から引き継いで来た要素が多く含まれる。
1888年に奴隷制度が廃止された後も、Getúlio Vargas大統領が1934年にそれまで違法行為だったカポエイラを合法とした同時期まで、カポエイラと並びサンバとカンドンブレーも違法行為だった。
アフロブラジリアン信仰=悪魔崇拝!?
人種差別など無い、被差別意識・被害者意識を有色人種の我々に植え付けさせること自体が我々を弱くしているのだ、そのような戦略には嵌まらない、と主張する黒人系の人たちにも何度も会ったことがある。
しかしながら、このカンドンブレーという信仰についての企画をSNSで拡散する時にやはり非常に気を遣わねばならなかった。
それは何故か。このイベント自体は布教活動でもなんでも無い。しかし信仰=特定の宗教と結びつくため布教活動と思われるのではないかという懸念もある。
しかしながら、それよりも気になること。それは、アフロブラジリアン信仰形態が一般的にまだまだ差別と偏見の対象になっているからである。カポエイラやサンバよりもカンドンブレーに対するネガティブなイメージは強い。
それについてはカンドンブレー関係の人々は口を揃えて言うし、私自身何度も目にして耳にして来た。ざっくり言って、アフロブラジリアン信仰は悪魔崇拝だと思われている。冗談では無く。そのための差別と偏見は実はかなり根深い。
極端なヘイト行動にも結びつく場合も
そのため、カンドンブレーを心良く思わない人たちはかなりの確率で存在する。また、通説としてはブラジルの福音教会系のキリスト教徒たちは特にそのことを教え込まれるらしく、結果ヘイト行動を起こす人々も後を立たない。
(↑宗教に対する差別偏見を無くそうと訴えるパレードも今年で18回目。サルヴァドールでも古いカンドンブレーの祭儀場が多くあるFederação地区で11月15日に行われたばかり。)
今回もいろいろなSNSのコミュニティで告知をしたかった。しかし、例えば今回のブラジル総選挙の開票結果では在日ブラジル人の方々は他の外国に比べて圧倒的にボウソナーロ現大統領支持者が多く、一説によるとそれは福音教会信者が多いからであるとも言われている。
現在ブラジル在住の私に実情は分からない。しかし、在日ブラジル人の方々も多くフォローしているであろうコミュニティにも告知をしようかと思いつつ、そこら辺が非常に気になった。
そこで、祭儀場を案内してくれるお二人に相談したところ、やはり福音教会信者が多そうなコミュニティには告知しない方がいいと言われた次第である。
国境を越えて、肌の色を越えて
なかなかデリケートな問題なので、今回は深入りせずに留めておく。ただ、アフロブラジリアン信仰形態を紹介しようとすると、このような制限が否が応でもかかってしまう。
自由には告知できない。いや、しても良いのだが反感を買うことを覚悟でするわけだ。そんな炎上商法をする余裕は我々には無い。
そんなことを体験しながら企画した今回のカンドンブレー祭儀場見学イベント。短い告知期間でも10人ほど集まってくれそうだ。このように興味を持ってくれる人たちが遠く離れた日本にいることが何より心強い。
こういうイベントにお金を払ってまで参加してくれる人たちの力添えで、いつかこのような差別や偏見を気にせずイベントの告知ができるようになるのではないかと期待している。
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