電車で出逢った素敵な人
たまに思い出す出来事がある。
小説のような出来事なので、小説みたいに書きたい。
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なんてことない休みの日。
友達とご飯を食べる約束をしていた私は
待ち合わせ場所に向かうために電車に乗っていた。
昼頃、ほどよく空いている車内。端の方に座った。よく晴れた日で窓から心地よく光が差し込んできていて気分が良かった。
進むにつれて少しずつ混んでくる車内。
座席が埋まったころに年配の方が乗ってきた。
こっちに向かって来たら席を譲ろう
と思って見ていた。
何でかはわからない。気分がよかったからかもしれないし、先日読んだ本の影響かもしれない。
とにかくその時はそう思った。
そして
目が合ってこっちに向かってきた。
あ。きた。
私はすかさず席を立ってどうぞと言った。
良い事をしたようで、さらに気分がよくなった。
「ありがとう。悪いわね。」
「いえいえ、すぐに降りますから。」
降りる駅は5駅くらい先だけど。なんてひとりでツッコミを入れる。
「今日はいい天気ね、#&@¥$*」
適宜相槌をうちながら話を聞く。最近になって気づいたが、私は年配の方に話しかけられることが多い。
「ご両親はどんな方なの?」
「??????」
思考が止まった。
そのあと何か言っていたけれど、よく覚えていない。きっと大事に愛されて育ったんでしょう、とかこんなにいい子が何とかとか言っていたような。
「私、両親はいないんです。施設で育って…」
考える前に口から出ていた。
何でかはわからない。施設育ちということがマイナスのイメージを持たれることもあることを知っているし、何より同情されたくない私はいつもは適当に濁すのだけど、この時はスラスラと口から出ていた。
「そうだったのね。てっきり苦労もなく……凄いわね。こんなに立派に育って。バイタリティもあって。」
「ありがとうございます……」
泣かないように必死に我慢した。でも気づかれてしまうくらいには潤んでいたと思う。
「私、社会福祉に携わっているの。子供達の支援もしていてね」
「…そうなんですね!凄いですね!!」
月並みな感想しか出ない。なんだ、凄いですねって!
幸か不幸か私が降りる駅に着いた。
「あ、降りますね。。ありがとうございました。」
「ありがとね。頑張ってね!」
「…!ありがとうございました!!」
気のせいかもしれないけど、おばあちゃんというには若々しくマダムという言葉の似合うその人の目も少し潤んでいたように見えた。
不思議な出会いをした私達は、姿が見えなくなるまで小さく手を振り合った。
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電車を見送った後、気づかれないように少し泣いた。「凄いね」と言ってもらえたことがとても嬉しかった。同情されたくないと気張って、何でも自分でやってやる!とがむしゃらに生きてきたこれまでを褒めてくれたように感じたのだ。
そのあと、友達にもこの出来事を話した。
「すごい!よかったね!そんな素敵な人がいるんだね!」
また泣きそうになった。この人と友達になれて良かったと心の底から思った。
この友達も学生時代、家庭に悩みを抱えていたのだ。施設育ちだけが苦しい環境にいるわけじゃない。みんな違った苦しみを経験している。
同情じゃなくて頑張りを認めて欲しい。そんなふうに思っている人は少なからずいると思う。
どう締めくくったらいいのかわからないんだけど、ふとこの出来事を思い出して心が温かくなった。シェアしたくなった。
湿っぽいのは苦手なので明るく終わります!またね!
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