見出し画像

海外出向者に関する給与 その2

画像1

海外出向すると日本の所得税はかからない!?

前回は海外へ出向した場合の勤務期間の考え方と出国後最初の給与の取り扱いを解説しました。

今回は社会保険の取り扱いと年末調整について解説します。

[1]社会保険はどうなる?
出向した国の社会保険へ加入することが原則ですが、社会保険については法整備が整っていない国も多く、できることなら日本の社会保険に継続加入したいのではないでしょうか。

① 健康保険・厚生年金→出向元の国内企業と雇用関係が継続(つまり在籍出向)、かつ、国内企業から少しでも給与が出ていれば継続して加入できます。

② 介護保険→市区町村に居住が条件のため、支払う必要はなし。必ず「適用除外届」を提出し、住民票を除票すること!

③ 雇用保険→国内企業と雇用関係が継続する場合は継続加入となります。国内企業からの支払額を基礎に保険料を計算します。

④ 労働保険→原則加入できないが、海外は労働保険制度がないことが多いため、「特別加入」という制度がある。給与額に応じて保険料が決まります。

[2]年末調整は必要か?
必要です!
国内勤務分の所得については、きっちり税金を精算してから出国しなさいというのが日本のルールです。年末調整時のポイントは以下の通りです。

① 出国日までに年末調整が必要。

② 社会保険料や生命保険料控除などは出国日までに支払われたもののみが対象です。保険会社が証明を出してくれない場合は、自分で支払額を計算する。

③ 扶養になるかどうかは出国時の現況で判断する。扶養者の所得は出国時点で1年分を見積もる。実務上は専業主婦など所得が明確でない場合は除外することが多い。

④ ローン控除は適用できない。(12/31に居住者であることが要件のため)

もし、不動産賃貸等の給与以外の所得があった場合はどうなるか。

→出国日までの給与と賃貸収入を合算して出国日までに確定申告書を提出する。

さらに、出国日まで給与と年間の賃貸収入を合算して翌年3/15までにもう一度確定申告をしなければならない。

→つまり2回確定申告を行う必要がある。とても面倒、というより海外にいるから不可能では?

→実務上は出国日までに納税管理人の届出※を提出します。この届出を提出すると出国前と出国後の給与・賃貸収入を合算して3/15までに申告すればよくなります!

※納税管理人:非居住者の代わりに申告納税等を行ってくれる人(会社でもOK)を指定する届出

バイバイ


関西出身の会計事務所ベテランスタッフ「とり君」が教える、税務のハナシ。 国際税務から海外進出・連結納税・連結決算・IFRS 対応・公益法人支援まで幅広くわかりやすく解説します。