サポーター失恋注意報、発令中。 【Short letter】
Jリーグがオフシーズンに入っている今、私たちサポーターの心を傷ませる出来事が、全国各地で多発します。
そう、選手の移籍です。
私は常々、「選手の移籍に伴う痛みは、まるで失恋のようだ」と感じています。
特に、推しの選手であればあるほど、その傾向は顕著です。
各クラブの新体制発表会が行われ始めた今、胸に迫りくる思い――。寂しさ、痛み、そして愛を、柄にもなくしたためました。
相思相愛だったはずなのに、いつの間に心変わりをしてしまったの?
いつからあの子(新しいクラブ)と心を通わせていたの?
少しずつすれ違ってること、なんとなく嚙み合っていないことには薄々気付いていたのに、私にはどうすることもできなかった......。
などなど、「愛する彼を失う」という事実を突きつけられる哀しみは、何度経験しても慣れません。
道を違えた彼のことを応援したい気持ちと、幸せになって欲しい気持ち。
同じ道を選び続けてもらえなかったことへの寂しい気持ちや、新しいパートナーへの嫉妬。
引き止めたかった。
どうして。
同じところに留まるような人じゃないと分かっていたけど......。
色々な気持ちがないまぜになって、ゆらゆらと不安定に行ったり来たりして。
置いて行かれた私をよそに、違う色のユニフォームに袖を通し、新しいチームメイトと笑いあっている彼の姿を見る度に、心に刺さって抜けない棘がうずいて。
幸せだった日々を思い出しながら、いつものグラウンドやスタジアム、目にするものすべてに彼の姿がないことに、またどうしようもなく悲しくなって。
時には、愛した彼が魅力的すぎて、駆け落ちをしてでもその彼と添い遂げる人もいます。
そう、いわゆる「個サポ」と呼ばれる存在です。
しかし私は、枕を濡らす夜をいくつも明かしながら、傷がだんだん癒えるのを待ちます。
自分の居場所である、この家(クラブ)が大好きだからです。
そしてこの家を大好きだと言ってくれる人と、共に暮らしたいからです。
「こんな思いをするくらいなら、もう誰のことも愛するものか」なんて、本気で思った夜もありました。
愛した彼への愛が深ければ深いほど、そう簡単に傷は癒えてくれません。
同じポジションの新しい彼を、ふとした瞬間にあの人と比べてしまうこともあるでしょう。
それでもやっぱり私は、何度だって、また愛してしまうのです。
傷を抱える私と寄り添ってくれる優しい彼を、この家を好きだと言ってくれる彼を、全力で応援するのです。
ちょっと長いあとがき
大好きな選手とのお別れに伴う喪失感は、本当に失恋みたいだなあと感じたことから、このShort letterは生まれました。
「選手との別れ」というと、移籍以外にも引退という形のお別れがあります。
引退についても、喪失感という意味では重なるものも多くあるでしょう。
一方で、大好きな選手が自分が応援するクラブで選手生活を終えたという、ある種の「添い遂げられた充実感」のようなものもあるのではないかなと感じます。
実生活で誰かと添い遂げた経験がないので、実際のところは理解が及ばない部分もありますが......。
それに比べると、移籍は「大好きな彼に違うところを向かれてしまった」「彼は身近に居続けるのに会えない」そんな独特の切なさややるせなさがあるなと、思った今日このごろでした。
この時期、こんな気持ちを抱えるサポーターさんもいらっしゃるのではないでしょうか。
時と場合によっては、失恋多発「注意報」に留まらず、「警報」にもなり得るかもしれません。
サッカーは特に移籍の多い競技なので、サッカーを好きでいる限り宿命とは分かっているのですが......。
悲しいものはやっぱり悲しくて。
もちろん愛したことを忘れたいとは思わないですし、忘れません。
でも、これもきっとお互いがもっと幸せになるための道。
そう信じて、前を向いて歩いていくのだ!
あなたのますますの幸せと、活躍を願って。
そして私は、めくるめく来シーズンに思いを馳せて。
じゃあね、またいつか。
ここから先は
OWL magazine 旅とサッカーを紡ぐWeb雑誌
サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?