アスエコ未来教室3期 第3回 ”「働くこと」について考えてみよう” クリエイター&デザイン会社代表 山下リールさん
2022年8月19日に、3期アスエコ未来教室第3回が開催されました。第3回の未来講師は、クリエイター&デザイン会社代表の山下リールさんです。
アスエコ未来教室とは?
アスエコ未来教室とは、公益財団法人岡山県環境保全事業団の環境学習センター「アスエコ」が行なう、中学生向けの6か月間の教室です。
各回ごとにゲスト講師を招き、講師の方が取り組んでいる活動や、その中で感じること、考えたことについての話を聞きます。
詳しくは、以下のサイトをご覧ください。
活動の内容
今回の活動は、以下の通りです。
夏休みを挟み約2か月ぶりとなった今回は、それぞれの名前や顔を思い出すためにグループの中で自己紹介を行ないました。
約2か月の時間が空いたとは思えないくらいに盛り上がっていたのが印象に残っています。
また、未来講師であるリールさんにも、この夏の思い出について話てもらいました。
さて、第3回の目標は、以下の2つです。
・働くことについて考えてみる
・みんなの声を聴き合う
自分の意見はきちんと話せるようになってきたので、第3回では、グループの中で他の人がどんなことを考えているかを知ることを目標にしています。
また、ゲストトークの前には、「どうして1つ目の目標が大事だと思うか」と「働くってどんなイメージ?」ということについて、個人で考え、グループで話し合いました。
ゲストトーク
第3回の未来講師は、クリエイター&デザイン会社代表の山下リールさんです。
自分の仕事について紹介しながら、働くとはどういうことなのかを考える時間となりました。
未来講師について
山下リールさんは、株式会社リールの代表取締役、一般社団法人TOCOL(トーコル)の代表理事です。
会社の事業のひとつしてSTEAM教材の開発を挙げ、会社の作品を持ってきて、たとえばデザイナーとしてはどのような仕事をしているのか紹介してくれました。
STEAM教材とは、以下の5つの異なる分野を関連づけ、領域を超えた学びを行うための教材です。
まわすと色や模様が変わって見えるこまや、ダンボールで組み立てる天体望遠鏡を見て、中学生だけではなく大学生スタッフも興味津々。
それ以外の仕事についても教えてもらい、リールさんの仕事の幅広さに驚きました。
以下に、リールさんの仕事の一部を紹介します。
働くことって?
リールさんは、働くことを考えるうえで、中学生に2つのことを問いかけました。
一つ目は、世の中の職業をいくつ言えますか?ということです。
世の中には職業と呼ばれるものがたくさんあります。
ゲストトークは「働くこと」についての話ですが、一言で「働くこと」と言ってもさまざまです。
身近な大人の職業しか知らない、という子ども達がいますが、世の中にはみんなの知らないとても多くの仕事があり、私たちの社会は成り立っています。
二つ目は、2030年の職業選択について考えてみよう、ということです。
2030年はSDGsの目標達成を目指している年であり、未来教室で学んでいる中学生が就職するころでもあります。
2022年現在の職業が、2030年にも残っているだろうか、という視点で、将来どのように仕事を選ぶかを、リールさんの話を通して考えました。
では、リールさんの職業はいったい何なのでしょうか。
この問いに対し、リールさんは「よりよい社会を作るために必要なモノやコトを生み出す“なんでもやさん”のようだ」だと話します。
働くといえば一つのことをするというイメージがありますが、必ずしも一つの職業にこだわって働くことはないのです。
リールさんは美術学校出身で、クライアントの商品のための絵本を書いたことがあるそうです。
社会人になって初期の仕事は本の装丁や造本でした。
パンフレットのための写真撮影や文章執筆もします。
新しいシステムやイベントの企画もします。
リールさんの仕事にひとつの職業名をつけるのは難しく、ブックデザイナーであり編集者であり、ライターであり、フォトグラファーであり、ディレクターであり……と、まさになんでもやさんなのです。
リールさんは「デザインとは関係の構築である」と話します。
アートは主に、自分の中からあふれる衝動を形にする行為ですが、デザインはクライアントの抱える課題や達成すべき目的やゴールがあります。
またそのプロセスもデザインであり、その結果はモノ(成果物)だけでなく感動や楽しさも生み出すことができます。
未来教室では、自分と中学生の関係性を作ること、一緒に共通の話題で話がしたいと話していました。
そして、働くこと、リールさんの主な仕事であるデザインの話の後には、働くことの日本の現状についての話を聞きます。
2022年現在、日本は世界の中での競争力が低下しています。
労働時間のわりに生産性が高いわけでもなく、また物価は上がっているのに賃金は上がっていません。
また、先進国では人口を爆発的に増やすことも難しく、生産性を上げるのも難しいのです。
そこで、デジタルやロボットの力を借りることが必要になっています。
日本は先進国の中ではデジタル競争力が低いといわれており、デジタル庁の設立やDX(デジタルトランスフォーメーション)の設立など、競争力を上げるための取り組みが複数行なわれていることを知りました。
また、メタバースやAIと仕事の関係についても知り、最近よく聞く「AIに奪われる職業」についても話してくれました。
将来どんな仕事をするか考える際には、業界のようすを見極め、自分にとってやりがいのある仕事を選択したり作り出したりすることが必要だと、リールさん。
それだけ聞くと働くことに希望を持てなくなるかもしれません。
しかし、働くことは楽しいんだよ、と話すリールさんの目はとても輝いていました。
ワークショップ「2030年の新しい職業を妄想しよう」
ワークショップでは、中学生ひとりひとりが2030年の新しい職業について妄想しました。
妄想することは2つです。
①どんな社会になっているかな、なっていてほしいかな
②その時、今はないけどうまれている職業を妄想しよう
中学生はみんな、じっと考え込んでいました。
いつもはすぐに手が動く人も、手を止めてじっくりと妄想します。
個人で妄想した2030年の職業をグループで発表すると、さまざまな新しい職業がうまれていました。
その一部を以下に紹介します。
・災害に備える、防災グッズコーディネーター
・寂しくなるときのために、夢の中でも約束して人と会えるシステムを作る
・AIやロボットが製品を作り、それを人間が宣伝する近未来のちんどん屋
今はない新しい職業だけでなく、昔あったけれどなくなってしまった職業が復活するのではないか、という妄想は面白いと感じました。
AIやロボットという今までになかった存在が出てくることで、消えた職業が復活するかもしれないのです。
中学生の発表を聞いた後のリールさんからは、「みなさんは今、未来職業デザイナーになってましたよ」とコメントがありました。
今やっていることを評価して、買ってくれる人がいれば、それは立派な仕事になるのです。
働くことは、中学生や、大学生スタッフが思っているよりも、ずっと身近なところにあるものなのです。
アウトプットセッション
リールさんのお話を聞いて、中学生は感想とリールさんに質問したいことを考えました。
質問の一部を紹介します。
Q.妄想ってどこでしている?
A.常にしている。お酒を飲みながらだったり、お風呂でだったり……いろんなところで妄想している
Q.やりたいことが散らかったりしない?
A.あちこち行くことはあるけど、最終的には繋がってくる。
自分が興味があるものは観ておく(インプットしておく)と後でひらめき(アウトプット)になることがあるから、いろんなことに関心を持っている。
テレビも見るし、漫画も本も読んでいる。
Q.「自由に妄想」するなかで実生活に役立つことをできるのがすごい。現実にとらわれてしまう。
A.楽しくないと続けることができない。でもそれだけではお金が発生しない。自分のアイデアが評価されることで仕事になっている。
自分にとって、熱量を持てることを持つことが大事。
リールさんにとっては、それが妄想だったという話。
Q.どうやったら集中できる?
A.集中力は年々落ちてきて、私(リールさん)もできないことがある。
集中力が切れたら、違うことをするようにしている。
だらだらするより切り替えが大事。切り替えることでアイデアがひらめくこともある。
質問をする中学生一人一人に、リールさんは丁寧に対応してくれました。
未来教室はいつも、質問の時間には教室全体がにぎやかになります。
質問セッションが終わると、次は感想を書く時間です。
静かに自分と向き合い、ゲストトークを受けて自分が何を思ったかを文章にまとめていきました。
中学生の感想の一部を以下に共有します。
「働くこと」を身近に感じつつ、自分が働く上で何を大事にするべきなのか、じっくりと考えることができる時間になりました。
さいごに
第3回となった今回の未来教室では、話を聞き合うことが目標のひとつになっていました。
ワークショップや感想を紹介する場面では、自分の意見を話して終わりではなく、相手の言葉を聞いて自分の中で考えが変わった、という人もいたように思います。
ひとりひとりが、ラーニングゾーンで頑張っているのです。
第4回未来教室は、9月30日(金)に開催予定です。
次回はどんな出会いがありどんな変化が起こるのか、非常に楽しみです。
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