見出し画像

ありがとうのかぜ🧡💛

ありがとうの風


森の中に住む小さなリス、リリィはいつも元気に木の上を駆け回っていました。彼女は、たくさんの木の実を集めたり、友だちと遊んだり、毎日忙しい生活を送っています。けれども、ある日、ふと何もする気が起きず、疲れたように感じてしまいました。「今日はなんだか、何も楽しくないな…」


リリィは、森の静かな場所に座り込んでため息をつきます。すると、突然、優しい風がリリィの顔にそっと触れました。
「リリィ、君はどうしてそんなに落ち込んでいるの?」と風が話しかけてきました。驚いたリリィは辺りを見回しましたが、誰もいません。ただ、風だけがそっと吹いていました。
「何もかもがつまらなく感じるの」とリリィは答えました。


風は優しくリリィに語りかけます。「リリィ、君は息をしていることを忘れてしまったんだよ。呼吸は生きるための贈り物なんだ。それがあるだけで、素晴らしいことなんだ。」
リリィは不思議そうに首をかしげました。「息をしているだけで、そんなにすごいことなの?」
「そうさ」と風は続けます。「深く息を吸ってごらん。そして、ゆっくり吐いてみて。君の胸が動き、空気が体を満たしているその瞬間こそ、生きている証なんだよ。」


リリィは風に教えられた通りに、ゆっくりと息を吸って、吐いてみました。すると、体の中に温かいものが広がっていくのを感じました。風は再び囁きます。「その瞬間、君は生きているということを感じるんだ。息をしていること、それだけで、君は十分に素晴らしいんだよ。」
リリィは目を閉じ、風と一緒に静かに呼吸を繰り返しました。心が次第に穏やかになり、森の音や、木々の香りがより鮮やかに感じられるようになりました。


しばらくして、リリィは風に感謝の気持ちを伝えました。「ただ息をしているだけで、こんなに心が落ち着くなんて知らなかった。私には、もう十分にたくさんのものがあったんだね。」
風は微笑みながら答えました。「そうだよ、リリィ。息をするたびに、君は生きていることを思い出せるんだ。そして、その一瞬一瞬を大切にすれば、どんな日でも感謝の気持ちを持って生きられるんだよ。」


リリィは毎日、忙しく走り回ることをやめて、森の静かな場所で深呼吸をする時間を持つようになりました。友だちにも、「息ができるって、とてもありがたいことなんだよ」と話すようになりました。
森の中では、優しい風が今日もリリィの頬にそっと触れ、「ありがとうの風」が広がっていきました。



追伸
この物語は、息をすることそのものがどれほど貴重で、感謝すべきことかを伝えます。忙しい日々の中で忘れがちな「今ここにいること」の大切さを、呼吸を通じて子どもたちに感じてもらえたらな…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?