低空のアルデバラン食記念! 星食を語ろう!!
というわけで、先日、月齢1の月に1等星アルデバランが隠される、という現象が起こった。
月が動いていく中で、星や惑星の前を通って、隠すことがある。
これを「星食」というのだが、明るい惑星や星が隠されるのはそう頻繁に起こる現象ではない。
それゆえに、非常に観測条件の悪い低空の今回のような現象でも、観測しようという物好きはたくさんいる。
私は山の中にいて、そのせいで低空の現象は山が邪魔で観測できないため諦めていたが……
明るいから観測しやすい、ということで観測を試みた人たちも多かったようだ。
ところで、やはり1等星の星食、というのは見栄えがするものではあるが、その中でいえば、今回の現象というのは見栄えがしないので、一般向けには案内しづらかった。
しかし、ぼくがこれまでに見てきた天文現象の中で、皆既日食やら大彗星の出現やらと並ぶ、5本の指に入る天文現象に挙げられるのが、条件を満たした1等星の星食、なのである。
月が星を隠す場合、月が星空の中を動いていく方向の関係で、満月前には月の暗いほう(欠けている方)の縁から星が隠れて、明るい方の縁から星が出てくる(暗縁潜入明縁出現)が、満月後には月の明るい縁から星が隠れ、暗い縁から星が出てくる(明縁潜入暗縁出現)。
1等星の星食の場合、この満月後の暗縁出現が非常に美しいのだ。
特に、月が欠けてきて、下弦を過ぎてくると、星が出現する瞬間に月明かりの影響を受けづらくなるため、1等星の出現がより美しく見ることができる。
そういった意味で「下弦以降」で、かつ夜のうちに起こる1等星の食、というのは日食月食を超えるインパクトを残しうる現象である。
1994年11月30日未明に見られたスピカ食。
これは素晴らしかった。
スピカが、明け方の三日月型の月の、暗縁から急に飛び出してくる様子のインパクトは、まさにダイヤモンド!
このインパクトを上回る天文現象はなかなかないだろう。
実はこれがかなりのレア現象で、日本で「下弦以降 暗夜」という両方の条件を満たした1等星の星食、というのは、1994年以降、2060年までの66年ほどの間に、わずか3回しか起きない。
※2012年8月14日 金星食 月齢25.6
2017年11月11日 レグルス食 低空出現のみ 月齢22.5
2034年7月13日 アルデバラン食 月齢26.3
2052年8月18日 アルデバラン食 月齢23.5
3回起こる1等星の食の他に、2012年に金星食が起きているが、金星はスピカのおよそ200倍も明るい星ではあるが、惑星というのは表面積が大きく、そのぶん出現時にジワっと明るくなる、といった印象であって、1等星の星食の方が「いきなり現れる光の明るさ」というインパクト面では上回ってくる。
来年11月に起こる現象は、1994年から2060年までの間に4回しか起きないレア現象のなかでは、一番低空かつ一番月齢も大きく、また1等星のなかで一番暗いレグルスの食、ということで、条件はさほど良くないのだが、それでも注目していかねばならない、貴重な現象であることがわかるだろう。
なにしろ、これを逃すとチャンスは18年後の……梅雨時で天気も期待しづらいタイミング。
天気の良いシーズン、となるともう今から36年後……
まずは来年!
20年に1度くらいのペースでしか起こらない現象なので、多少の条件を乗り越えて挑戦して見る価値はあるはずだ。
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