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一緒に天文学の研究をしてみませんか,っていう緩い公募

私は,とある研究機関で宇宙の研究に従事しているのですが,ここ一年ほど,本職に何か活かせることがあるかもしれないと思って,データ分析コンペに出てみたり,東大松尾研が主催されてた深層学習講義などを受講したりしていました.

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おかげさまで,そうして手を動かしている中で,機械学習でできることをいろいろと知ることができたのはとても良かったと思ってます.また,そうしたコミュニティに入ることで,とても精力的にデータ分析に取り組んでいる人たちがいることを知れたのも良い刺激になりました.

ただ,取り組んでいく中でなんとなく,自分はこれじゃないな感がありました.それが何なのか,わかるのに少し時間がかかったのですが,たぶんそれは,手を動かすのが自分じゃなくても良いってことかなと思い始めました.自分の限られた時間で,自分の限られた視野でできることには限界があるのですが,一方でやってみたい研究の種はたくさんあるので,もっといろいろな人たちと一緒に研究を進めてみたいっていう野心的な願望からくる違和感なんじゃないかと.

もちろんこれまでも同じ業界で縁のあった方々と共同研究をいろいろと進めてきましたし,これからも継続していきたいと考えてはいますが,それだと差別化が難しく,研究テーマによっては資金や資源を持っている研究グループと競争することになるので,すでに成功している人たちが継続して成功しやすい構図になってしまう傾向にあって,あまり良い展望が描けません.安直な戦略だといわゆるレッドオーシャンで勝負することになってしまいます.競争が好きな人なら良いかもしれませんが,私はそういうのとは距離を置きたい.

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それで興味を持ったのが機械学習でした.天文学の分野でもいろいろな人たちが応用研究を始めてはいますが,まだまだのびしろがあるように思っていまして,機械学習に興味がある層とうまくコラボできればこれまでにない研究ができるのではないかと考えています.

ただ,その形についてはちょっと試行錯誤する必要はありそうです.


オーソドックスに研究費を獲得して研究員を雇用する?

すぐに思いつくのは,科研費などを獲得して,それをもとに研究員を雇用するというものです.その業務内容や応募条件で機械学習に特化した内容をうまく設定すれば良さそうです.これまでによく取られてきた方法の一つです.

ただ,この方法はそもそも研究費の公募に応募する必要があって,それなりに競争率が高いですのでうまくいく保障はなく,時間がかかってしまいそうです.また,機械学習を応用する研究員雇用はすでにいろいろと動いているように見えますので,これも差別化は難しそうに思います.すでに実績をあげている人が拡大路線のひとつとして取るべき方法かもしれません.

そして私自身,博士号取得後に短い任期をつなぐ薄給の研究員になるくらいなら別の職業を選択する気でいましたので,これはあまり考えたくない選択肢です.これからの時代,人材が流動的であって構わないとは思いますが,雇い主の都合で低賃金の労働に専念させられ,かつ任期が定められてしまうようなポジションを作るのはいまいちかと.一緒に働きたいと思える人材に対して,そんな待遇しか提供できないなら別の方法を,っていう発想です.

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データ分析コンペを企画する?

それで思ったのは,Kaggleのようなデータ分析コンペに研究課題を投げてみること.これまでのように私たちが手を動かすのもいいですが,世界中の有志のデータサイエンティストの方々に競ってもらう中で,思いがけないアプローチに気付かせてもらえたりして,より良い成果へとつながる可能性があるのではないかと.

天文学では大規模な宇宙探査がいろいろと立ち上がり,すでに大量のデータが取得されて公開されているものもありますし,将来計画に向けたシミュレーションデータを公開しているものもありますので,それらをうまく活用すれば有意義なコンペを企画できて,そこから科学的な成果につなげることはできそうに思われます.

...と思って検索してみたら,実際に天文学に関するコンペがすでに実施されてたみたい.
https://www.kaggle.com/c/PLAsTiCC-2018

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LSSTを想定した,波長ごとの明るさの時系列データをもとに天体を分類するコンペだったようです.
https://qiita.com/makotu1208/items/1b7f10c08c69d544180a

この課題は賞金25000ドルですので,認められるなら同様のコンペは科研費で企画できそうに思います.また,Kaggle以外にもデータ分析コンペの場はあって,賞金相場が安価なところもあるので,もっと気軽に試すことはできそう.

ただ,こうしたコンペでの結果を科学的な成果につなげるためには,天文学のドメイン知識が必要になりそうです.そして,コンペ企画側のモチベーションが研究成果を論文にまとめたいといったものの場合,その過程で機械学習モデルを修正する必要が生じる可能性は大いにあって,けどコンペ後だったりすると参加者のモチベーションは失われている可能性があるので,論文にまとめる研究をこの形で実施するのはなんとなく厳しい気がしてしまいます.共同研究者の候補を探すきっかけくらいにはなるかもですが.

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オンラインサロンを立ち上げる?

研究員を雇ったり,コンペを企画したりするのでは,いまいちそうです.

では,オンラインサロンを立ち上げて,そこで参加者と一緒に研究していくというのはどうでしょう.

この場合,参加者との雇用契約はないですし,そもそも参加者はサロンと関係ないところで生活費を得ている場合がほとんどかと思いますので,待遇を心配する必要はなさそうです.あと,評価指標として,データ分析コンペのようにleaderboardで高い順位を得るみたいなものを採用するのではなくて,科学的な成果を得ることに設定することで,論文にまとめるまでが「遠足」ですよ,みたいな流れにすることが可能そうです.

上で挙げたデータ分析コンペの参加者を考えると,賞金が欲しいという目的もあるのかもしれませんが,それよりデータ分析の技術を競って経験や実績を得たい人たちが参加している印象があります.これまでのデータ分析コンペでは実績の証明をleaderboardで示して特に優秀な成績をおさめた参加者に賞金を送っていました.今回の場合は,特に優秀な成績をおさめた参加者は論文や学会発表といった実績を得ることができるというリターンがある,といった形です.

企画側は研究の種を提供する.参加者は実際に手を動かしてデータを解析して,未知の研究課題に取り組んでいく.その中で,研究の方向性だったり,途中で直面するさまざまな課題の解決策だったりを考える上でドメイン知識が必要になると思われるので,そうした面を企画側が議論を通して補っていく.これにより,参加者と企画者ともに実績や経験を得ることができます.

この形をよくよく考えてみると,これって大学院(特に理系の修士課程)のビジネスモデルに近いように思われます.学生は学費を払って経験を買いに来ている,という見方です.学生は学費を支払って研究室に所属し,研究室スタッフが研究の種を提供する.学生は研究資源を活用して未知の研究課題に取り組む.その中で必要に応じてスタッフから研究指導を受ける.研究成果が出れば,学生もスタッフも実績を得られるのでwin-win,といった感じ.検索したら以下のような記事もヒットしました.

ただ,オンラインサロンと比べると大学の学費は高価なように感じます.国立大学でも年間授業料は535800円なので,単純に12で割って月額にすると44650円.入学金などもかかるので,実際はもう少し高額.
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/005/gijiroku/attach/1386502.htm

学費の根拠の詳細は知らないのですが,大学ではスタッフの人件費だったり,施設維持費だったりといった固定費が多くかかっているからかもしれません.それだけの価値があるかは一考に値すると思いますが,実際は,研究資源を利用できたり,学会に参加したり論文を出版したりといった研究で必要な経費を出してもらえたりしているなら,授業料として支払っている以上にサポートしてもらえているかもしれません.

ただ,大学院に入って学位を取ろうとすると,研究以外にも講義を受けて単位を取る必要があって,けど人によってはそんなの求めていない可能性もありそうです.そうしたミスマッチを省いて研究に特化した形も用意することで,もう少し気軽に研究の機会を提供できそうな気はします.学位は取れないけど,ちゃんとコミットすれば研究実績を得られるっていう形.それなら,そうしたオンラインサロンも需要はあるのかもしれません.もしくは,大学や大学院の課程がもっと多様になっていけばよいか.

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口約束で緩くつながる研究コミュニティを作る?

それで,私がやるとしてどういった形が良いかと考えているのですが,そもそもの私の就業形態としては,当面は現職を本職としてそのまま続けて,その傍らで進めていくのが現実的な気がしています.その場合,雇用するもしくはサブスクを求めるといった課金性ですと,いずれにしてもやりすぎな気がするので,お互い課金せずにゆるくつながるとこから始めてみるのがおもしろいかなと思ったのですが,いかがでしょうか.

参加者は天文学の研究を体験する.企画者は研究の種やドメイン知識を提供する.うまくいけば互いに論文出版や学会発表といった実績を得る.ただし,誰でもokとするとお互い不幸になる可能性があるので,カジュアル面談や,必要なら採用面接を実施することで,事前にお互いの求めることを確認することが必須かと思います.共同研究していくのであれば,それなりにまとまった期間一緒に仕事することになるので,いろんな面でのマッチングを意識する必要がありそう.

それで,もしかしたら,そうした研究活動を応援してみたい人だったり,議論にだけ参加してみたい人だったりがいるかもしれません.ファンクラブではないですが,そうした人たちのニーズが満たされる場を提供してもいいのかも.そうした場に無料で誰でも入れるようにするのは危険な気がするので,ある程度の鎖国された環境,参加者が安心感を感じられる環境を作る必要がありそうで,これこそオンラインサロンで良い気がします.サロンメンバーは,研究コミュニティメンバーのように手を動かすことはしないけど,そのメンバーたちが進捗を共有する場には自由に出入りして,その進み具合に刺激を受けたり,議論を楽しんだり,もし思いついたことがあればフィードバックを送ることができる.サロンメンバーの会費は,研究コミュニティメンバーたちの研究費として活用させていただく.足りなければ私が研究費を獲得してなんとか補えたらと考えています.

需要があるかですが,意識の高い若い学生さんですと,たとえばもし高校生までに実績をあげられたら,それこそ東京大学の推薦入試でもいい勝負できそうな気がします.大学生の段階でもそれに続く就職活動や大学院入試などの際の特筆事項として使えそうです.もっと上の世代でも,次のライフステージを見据えてそうした経験がプラスに働きそうなら意義がありそうに思います.フルコミットした多様な経験が求められる現代においては,行動したい層はそれなりにいると思うので,これまでの学校や会社といった枠組みにとらわれない,プロジェクトベースで柔軟にコミットできる機会があって良いと思うのです.

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...なんて妄想を膨らませている今日この頃でした.

問題は,どういう形でそうした候補者に知ってもらって応募してもらえるか,ということでしょうか.このNoteでもGoogle検索とかでヒットして気付かれたりするのかな.

もし万が一ご興味ありましたら,「クリエイターへのお問い合わせ」からDMいただけるとうれしいです.


追記(2020/08/19)

ここに追記する形にしようと思ったのですが,やっぱ別記事にしました.


追記(2020/08/30)

研究はしたいけど(不安定な雇用で低賃金な)研究者にはなりたくない,っていう考えは私も同感.

そして,そうした方々の中で副業というか趣味として天文学研究したいって方とうまくマッチングできたりしないかなとも思う.最先端でスピード重視のトピックばかりではないので.むしろ,既存のデータをもとにして他の人が気付けなかった,もしくはたどり着けなかった「その手があったか」的な研究をしたい.


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