スタンバイ
午前3時前。”未明”が”明け方”へと呼び名を変えようとしているようなそんな時間に、ふと思うところがあり、鞄からパソコンを引っ張り出してこの記事を書いている。多分これを書ききって投稿する頃には文句のつけようもないほど明け方になってるんだろうなと思いつつ。”思うところがあり”などと書きはしたものの、別に大した考えなどない。ただふと、なにか文章を書きたくなっただけである。早く寝ろと抵抗する脳と身体を振り切ってまでつらつらと何かを書き留めたくなったのはなぜだろうか。脳と身体が抵抗しているなら今文字を書けと命令しているのはどこなのだろうか。心、なんて曖昧なもの、信じたくないが。
……唐突に文章を進めてしまい申し訳ない。物事のはじめには挨拶をするのが礼儀だろう。「お久しぶりです。あるいははじめまして」――これが私が物書きをする際の決まり切った挨拶である。これまで幾度となくある団体で、言ってしまえば所属していた劇団で、文章を書くたびにこの挨拶を冒頭に綴ってきた。先日引退を迎え、どうやら一生分といって良い量この挨拶を書き尽くしてしまったようだ。ということで、あと何度この挨拶ができるかは分からない。まあ、せっかくなので記事の更新が大幅に空き、かつ僕の気が向いたときにはnoteに置けるように心がけておこう。
自分について考えるに、文章を書くのは、地球上の人類全体の平均値や中央値よりも好きな方だと思う。しかしそれはあくまでも自分が主体である場合に限る。およそ創作と呼ばれる行為に限らず、自らの経験を残しておくだけの作業も好きだ。問題は、その経験自体をあまり得ていないということだが。
例えば、レポート。例えば、反省文。半強制的に書かされる文章というものは、どうしても後回しにしてしまいたくなる。というか、している。今だってそうだ。どう考えてもレポートが最優先なのに放置してこんな物を書いている。レポートをやらないならせめて寝ればいいのに。ほら、さっきからダイビングのミスが目立ってるじゃないか。
まあ、そんな状況にも関わらず執筆意欲だけはあるようなので、せっかくだから少しこれまでを振り返ってみよう。前回の記事の更新が2023年8月。一年以上分の歴史が溜まっているわけだ。申し訳ないが、400日以上のすべての日付について振り返ることは縁木求魚である。今回は、大きなイベントについてのみ語ろう。ただし、一日として無視できる日はなかった、という点のみ注意してほしい。それでは。
2023年10月~11月
先述の劇団の文化祭公演にて脚本・演出を担当。時間割的に最も余裕がある時期だったが、それでも忙殺されていた。宇宙や月がテーマということで、およそ僕らしい脚本だろう。様々な人に迷惑をかけながら、助けられながら、良い舞台を創ることができたと思う。個人的な代表作の一つ。
2023年12月~2024年1月
文化祭が終わると、二年生である私は小休止の時間を得た。うちの劇団には、入団一年目の学生のみで公演を打つ”新人公演”というものがあり、この期間は先輩は基本暇になる。この期間を利用して、私は外部の劇団に役者として参加してみた。毎週土日が潰れるというハードさ、今までと異なる演劇スタイルというしんどさもあったが、オイシイ役もいただけて良い思い出となっている。
なお、この時期は精神的に少々不安定であった。これといった大きな原因はないのだが、今まで全力を出していた場所に行けなくなってしまったせいだろうか。うまく大学に通えず、禄に太陽の光も浴びることができていなかった。毎週の課題も、締切後に提出する始末。回復したのはテスト後、春休みに入ってからだったような。
2024年2月
ずっと演劇のことばかり書いたが、ここで一転学術的なことを。2024年2月に”国立天文台 科学研究部 春の学校”というイベントに参加してきた。全国から天文学に興味のある学部生が集まり、それぞれ異なるテーマのグループに分かれ研究体験を行う、というものだ。自分は系外惑星の大気組成について研究体験を行ったが、研究というものの楽しさと難しさの一端を体験できたと思う。毎日の午後にはコーヒーブレイクの時間があり、他のグループの学生とも交流することができた。人見知りな自分は結局同じグループの人たちとばかり話してしまったが……
2024年3月
この春休みは天文漬けだった。前述の春の学校に加え、ASE-Lab.の"アストロキャンプ"という合宿に参加してきた。この合宿も複数の班に分かれ、各班ごとに異なるテーマについて学習する、というスタイルだった。自分の班のテーマは宇宙流体力学について学ぶ班であり、自分もしっかりと宇宙空間における流体力学について学んだ合宿になった……はずだった。
"はずだった"なんて書き方をしているのだから、実際はそうなっていないことは一目瞭然だ。というのも、なんと自分は途中から別の班に混ざって議論を交わしていた。同じ班のメンバーからしたらはた迷惑な話である。あれはそう、ホワイトボードの前で数式とにらめっこした後だった。議論に疲れた僕は軽く休憩していたのだが、その際、工学系のグループから質問されたのがきっかけだった。曰く、「(意訳)このプロジェクトでこういうことがしたいんですけど、理学の面から見てどう思いますか?」と。これに対しての僕の返答。「(意訳)多分意味がないので、根本から見直したほうが良いかと思います」
これがまあ波乱を呼んだ。そのグループが考えてたこと全部やり直し。さすがに全部押し付けるわけにはいかないので、僕も一緒になってどんなミッションに対してどんなプロジェクトがいいのかを考えてた、という次第。その過程すらも僕らはめちゃくちゃ楽しんでたわけだけど。まあ、そんな合宿だった。
あと生物系の学会にも参加した。同学年の友達もできてはっぴー。
2024年4月~7月
話は再び演劇へ。4月中旬に新歓公演を打ち、そのまま新入生の体験稽古の期間。新歓公演ではこれまた良い役をいただけた。が、それに見合う演技ができていないことに悩み続けた日々だった。
演劇界隈であるあるなのが、公演が終わる毎に"大入り袋"と呼ばれるはがき程度の大きさのポチ袋的なものを演出家からもらうというものだ。中に5円玉を入れて、「ご縁がありますように」と願いを込めて。そしてうちの劇団では、その裏に演出からのメッセージが書いてあるのだ。そこには、自分が稽古場を回す手助けになった、脚本のセリフを少し変えて読むのが良かった、など嬉しい言葉が書いてあった。脚本家、演出家としてとても嬉しくなると同時に、自分は役者としては評価されなかったのだな、と苦しくもなった。次こそは、と意気込んだが、結局その”次”が訪れることなく劇団を引退してしまった。
そして5月。20人程度の新入生との新たな出会いがあった。やっぱり僕は人見知りで、最初の方はうまく馴染めなかった。7月の公演に向けた練習の中で少しずつ仲良くなれたように思う。これが勘違いでないと良いのだけれど。
2024年8月
話は再び天文へ。”国立天文台・総合研究大学院大学 サマーステューデントプログラム”という、夏の研究体験のプログラムに応募したところ、ありがたいことに受け入れていただけた。先述の春の学校は一週間足らずだが、なんとこちらは約一ヶ月の長期間天文台に滞在し、先生からマンツーマンで指導を受けることができるという、なんとも素晴らしいプログラムである。
私はここで、簡単に言うと、宇宙でアミノ酸一歩手前の物質を探査する、ということをやっていた。これがもうはちゃめちゃに難しくてはちゃめちゃに楽しい。大学院でここに行きたいと強く思えたイベントだった。もし詳しく聞きたい人いたらぜひ連絡くださいな。また、天文学を志す良い仲間にも出会うことができた。今度は反省を活かし友達たくさん作ったもんね。
2024年9月
話は三度演劇へ。夏休みも終わろうかという時期に演劇部の合宿があり、なんと自分は演劇部三年目にして初参加。うちは三年目の文化祭で引退なので、最初で最後の合宿。これがもう楽しくて楽しくて。二泊三日の合宿、毎晩4時に寝て7時に起きるというえげつないことをしていた。楽しかったんだからしょうがないじゃんね。ちなみにこの翌日から39℃の熱にうなされることになったのはまた別の話。
2024年10月~11月
さあ、いよいよ追いついてきた。引退公演の時期である。最後に何を血迷ったのか、脚本を(途中まで)書いて提出してしまった。そしてそれがありがたいことに通ったのである。僕の演劇は、ひとまず演出家として幕を閉じることが決まった。
去年やった脚本は僕のスタイルを全面に押し出しているからやりやすかった。でも今年は、少し変えてみた。お客さんが楽しむことは前提として、できるだけ役者が最大限楽しめるように、としてみた。頑張ったつもりだったが、一部の役者からは快く思われていないんだろうなと自分では思っている。どうにか役者希望を出した人を全員出演させようとし、どうにか全員に見せ場を作ろうとしたのだが、特に稽古序盤はうまくいかず、多大な迷惑をかけてしまった。役者を心無い言葉で刺してしまったことを、きっと一生忘れられないんだろう。
自分目線、本当に大変で辛い公演だった。正直、去年のほうが良い舞台なんじゃないかという考えが何度も頭をよぎった。しかし公演が終わり、来ていただいたお客様をお見送りする中、多くの素敵な言葉をいただいた。何なら「去年よりレベルアップしてた良い脚本演出だった」とも言っていただけた。あまり実感はないけれど。成長できてたらいいな。
後日談というか、オチというか。引退公演千秋楽のラストシーンにて、とても大好きな後輩から手紙をもらった。アドリブで。……アドリブで?
まあこんな感じで、宝物が増えたとても大切な公演になったとさ。
そして、現在。
演劇部を引退してある程度時間に余裕ができ、これまでおざなりにしていた勉学に力を入れることができている。というか普通に受験生だし。天文学に限った話ではないが、好きなことやっていきたいのならそれ相応の努力が必要なのである。物理学とか天文学の基礎とか、そこそこ楽しみながらやれてる。あとはまあ、ちょっとゲームしたり本読んだり。
そしてなんと。ありがたいことにもう一度役者をやる機会をいただけた。きっとこれが、大学生のうちに携わる最後の演劇なんじゃないかと。もうないと思っていた”次”。チャンスくらい、掴まなくっちゃね。
とまあ、長々と書いてしまった。結局のところ、なにか文章を書きたいというのはなにか吐き出したい思いがあるからなわけで。きっと僕は、スリープモードに入った自分にお疲れ様と言ってあげたいんだと思う。いつもの日常が待ちくたびれている今、起動の準備は整いつつある。夜明けは近い。
それじゃあ、またね。