懐かしさの徒然に(5) マークIIに想いを込めて
さよならが言えないで
さよならが言えない二人。
二人は夜道をトボトボ歩くしかない。
なぜ、うまくいかないのか?
若い二人は自分たちの責任だとは思わない。
だから二人の結論はひとつ。
冷たいこの世界。
これは吉田拓郎の「マークII」という歌の内容だ。「マークII」は拓郎のデビュー・シングル「イメージの詩」のB面に収録された歌である。『たくろうライブ ’73』では「マークII ’73」として収録され、一気に人気を集めた歌だ。
マークIIってなんだ?
この曲名については、逸話が残されている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/イメージの詩
拓郎は女の子と待ち合わせをしていた。広島の喫茶店だ。その女の子が来たので、拓郎は立ち上がった。すると、かっこいい男の子が来て、なんとその女の子と腕を組んで拓郎の脇を通り過ぎてしまった。そのとき、目の前を一台の車が通り過ぎた。それがトヨタのコロナ・マークIIだったのだ。そして、曲名は「マークII」になった。
もし、軽トラが通り過ぎていたらどうなっていたのだろう。曲名は「軽トラ」になったのか??? それはそれでいい。なぜなら、曲名の「マークII」は歌詞の中には出て来ない。つまり、曲名が「軽トラ」でもなんら問題は生じないのだ。
ちなみに曲名が歌詞の中に出て来ない有名な曲がある。それはサザン・オールスターズの「勝手にシンドバッド」だ。すごい曲のタイトルにはインスピレーションが重要な役割を果たしているようだ。
トヨタのコロナ・マークII
マークIIはトヨタが1968年から2004年まで製造販売していた車だ(図1)。クラウンとコロナの中間に位置付けられる車なので、コロナ・マークIIという名前になった。発売当時、ずいぶん話題を集めた車だった。
マークIIグランデは子供の頃目にして、かっこいい車だと思ったことを覚えている。しばらく後になって気がついたのだが、この車の雰囲気は英国の名車ジャガーにどことなく似ている。アメ車(米国の車)志向を離れ、欧州志向の現れの一台だったのかもしれない。
ただ、グランデの発売は1976年からだ。1972年から2代目のマークIIは出ていたが、拓郎が見たマークIIはおそらく初代のマークIIだったのではないかと思う。
年老いた男は誰だ
さて、歌の方の「マークII」に戻ろう。この歌は暗い歌だ。私が気に入っているのは最後の2行だ。
年老いた男が 川面を見つめて
時の流れを 知る日が 来るだろうか
拓郎は50年後をお見通しだったのだ。
そして、これは今の私の心境だ。
ああ、この世は冷たいなあ。
とりあえずターを弾いて、「マークII」を歌おうか(図2)。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?