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「宮沢賢治の宇宙」(29) 流れない流れ星はいかがですか?
奇妙な「こぐま座」
まず、一枚の写真をご覧いただこう。「こぐま座」方向の写真だ(図1)。北極星は左の下の方に見えている。「おおぐま座」に見えるのは北斗七星だが、「こぐま座」にも似たような柄杓の形を見ることができる。そのため、「こぐま座」の形は「小北斗(七星)」と呼ばれることがある。
![](https://assets.st-note.com/img/1711352494314-fz3b8mIlOo.jpg?width=1200)
この写真で「小北斗」を見ることはできただろうか? 「なんか、変だな・・・。」 そう思われたのでは?
実は、この写真には流れ星がひとつ写っている。そのため、奇妙な「こぐま座」として見えている。
今度は、図1ともう一枚の写真の比較だ(図2)。いずれも「こぐま座」方向。念のため、北極星の位置を示しておいた。2枚の写真の違いはどこに?
![](https://assets.st-note.com/img/1711352533922-dczlk70NMd.jpg)
今度は気づかれたと思う。
図2の下の写真が平常時の「こぐま座」方向の写真だ。図1と図2の上の写真には余計な星が写っている。
種明かしは図3に示した。なんと、図1(図2の上)には静止流星が写っていたのだ。時のイタズラとしか言いようがない。
![](https://assets.st-note.com/img/1711352603680-roxUEM8USY.jpg?width=1200)
流れない流れ星―静止流星
「静止流星」 流星なのに静止している?
この流星はもちろん動いている。しかし、その方向は私たちの視線に沿った動きだ。そのため、動きは見えず、まるで1個の星のように見えているのだ。
流れ星を見ると、スウーっと長く動くものもあれば、短いものもある。流れ星の長さは、元となるダストがどのような角度で地球大気に入ってきたかで決まる(図4)。
流れ星は夜空を横切るように流れていく。しかし、横切っているわけではない。地球大気にダストがる角度で突入してくる。それで流れ星が発生するが、私たちは流れ星の光を天球面に投影して眺めることになる。流れ星の長さはダストの突入角度で決まっている。ダストが私たちの視線方向に突入してきた場合は、流れ星は点光源のようにパッと光っておしまいになる。これを「静止流星」と呼ぶ。
![](https://assets.st-note.com/img/1711352678395-jMojLNJHbh.jpg?width=1200)
流星群の「放射点」を見よう!
「静止流星」を見るチャンスは少ない。なにしろ、視線方向に沿ってダストが突入してくる確率はかなり低いからだ。しかし、時にはある。私も何回か見た。夜空のある方向で、一瞬光って消える。まるで幽霊のようでもある。
「静止流星」をたくさん見たければ、流星群の機会を利用するといい。流星群が見えるのは、地球が彗星の残していったダストの雲の中に入っていくときだ。ダストがたくさんあるので、流れ星がたくさん見える。
しかも、地球の進行方向は特別な方向になる。あたかも、その方向から流れ星が湧いて出てくるように見えるのだ。そのため、地球の進行方向に当たる夜空の方向は「放射点」と呼ばれる(図5)。「放射点」の方向を眺めていれば、「静止流星」を見るチャンスは増える。
![](https://assets.st-note.com/img/1711352767169-qheSU2bWhT.jpg?width=1200)
すべらない星はいかがですか?
前回のnoteで指摘したように、宮沢賢治は「流れるもの」がどうも嫌いなようだ。それが高じて、天文好きにもかかわらず、流れ星も嫌いなのだ。賢治の作品で、流れ星が登場したのは文語詩「大菩薩峠の歌」だけだった。
しかし、流れない流れ星もある(正確には流れないように見える流れ星)。
賢治さん、こちらはいかがですか?