バルコニアン(27) えっ? カゲロウ?
見慣れぬ昆虫
前回のnoteで、今年初の「クルマトンボ」のお出ましの話をした。
その翌日、見慣れぬ昆虫を発見した。発見場所は、またしても書斎の窓だった(図1)。よく見ると、カゲロウだ。これは珍しい。
カゲロウは節足動物門・昆虫網・カゲロウ目(もく)の昆虫である。幼虫時代は水の中で過ごしている。トンボでいう、ヤゴと同様である。トンボもそうだが、カゲロウも成虫の姿は麗しいが、幼虫時代の姿はグロテスクである。
トンボはよく見かけるが、カゲロウを見かける機会は少ない。これはカゲロウの命が短いことによる。何しろ、カゲロウの命は種類や個体によって異なるが、短いもので1時間、長くて10日程度しかない。これでは、見かける機会が少ないはずだ。
我が家のバルコニーを訪れてくれたカゲロウはどこで生まれたのだろう。近くに小さな川があるので、そこが生まれ故郷かもしれない。短い命にも関わらず、どうしてマンションの6階にある我が家のバルコニーまで来てくれたのか? カゲロウは飛べるので、飛んできたとしか思えない。しかし、何も6階まで飛んで来なくても、と思ってしまう。
「元気でいてくれ」
私がカゲロウに言えることは、このぐらいである。
クルマトンボはどうした?
そういえば、今年初お目見えのクルマトンボはどうしただろう? バルコニーを見回すと、居た。なんと目の前の紅葉の鉢にとまっていた(図2)。バルコニー全体を見てみたが、この一匹しか見当たらない。おそらく、これは初お目見えのクルマトンボなのだろう。一安心だ。
安心して書斎に戻り、少し仕事をした。その後、しばらくしてバルコニーに出てみると、クルマトンボの姿が見えない。探してみると、居た。今度はフジの枝にとまっていた(図3)。
翌日の朝、バルコニーに出てみると、今度は別の紅葉の枝で休んでいた(図4)。変幻自在。バルコニーで気に入った場所を探しながら過ごしているようだ。
トンボは人を怖がらない
私が植木の水遣りでたまたまクルマトンボに近づいても、逃げない。一瞬驚いて飛び上がることはあるが、逃げるわけではない。数10cmぐらい飛び上がるが、そこでホバリングしているだけだ。私が通り過ぎると、また枝に戻り、休んでいる。
トンボは人を怖がらないようだ。
このことは私だけが感じているものではない。その証拠を次の本で見つけた。『NHK「100分de名著」ブックス 宮沢賢治 銀河鉄道の夜』ロジャー・パルバース、NHK出版、2012年(図5)。
パルバースが岩手県の種山ケ原で経験した面白い話が紹介されている。
先般の東北の旅の途上で不思議なことがありました。行く先々で僕のまわりをずっと赤トンボがついてまわっていたのです。季節が秋だから赤トンボがいるのは当たり前なのですが、賢治作品の舞台として知られる種山ケ原に立ち寄ったときのこと。丘の上の原っぱで仰向けになって『銀河鉄道の夜』を胸の上に置いたそのとき、本の片隅に赤トンボが一匹ふわりと止まったのです。もちろん、偶然でしょう。いや、わからない。僕は、それがなんだか僕に会いにきてくれた賢治のように思えたのです。 (82頁)。
たしかに、赤トンボやムギワラトンボ、クルマトンボは、なぜか人懐っこい。実際、トンボが椅子に腰掛けている私の膝の上で休むことさえある。
私だけでなく、皆さん、トンボさんたちと楽しく遊んでいるようで何より!