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天文俳句 (20)天文俳句の本を書いてみる

星や星座は季語になるか?

2023年12月29日から始めたnoteへの記事の投稿。丸9ヶ月以上経過したので、振り返ってみることにした。「天文俳句」をテーマにした記事は19ある。その中で、読者の方に読まれた回数(ビューの回数)を調べたところ、表1のようになった。

 

第8話で書いた「結局、星と星座は季語にならないのか?」が1459回を数え、ダントツのトップであることがわかった。このビュー回数は私が他に書いたnoteの記事「宮沢賢治の宇宙」や「ゴッホの見た星空」における最高ビュー回数(約500回)を圧倒的に凌ぐ数字になっている。

天文俳句の難しさ

なぜ「結局、星と星座は季語にならないのか?」がよく読まれたのだろうか? 考えられる原因は次の二つだ。

[1] 俳句に関心を持っているnote読者は多い
[2] 星や星座が季語にならないことを不思議に思っていた人が多い

また、星や星座を含む天文現象を季語として俳句に取り込んでみたい方が結構おられるのではないだろうか。かく言う私もその一人だ。

ところが、その願いは叶わない。地球の自転のおかげで、天体の見える位置(方向)は時々刻々と変わっていくからだ。それが、季節との対応を難しくしている。地球の自転を止めるわけにはいかないので、解決は不可能だ。

天文俳句の本を書いてみる

それでも、天文現象を織り込んだ俳句への情熱はある。その情熱を使って、天文俳句の解説書を書いてみたらどうだろう? 不遜にも、こんな大それたことを思いついた。

早速、目次案を作ってみた。章と節のタイトルは可能な限り五七五にしてみた。

第1章 天文で読み解いてみる俳句かな


1-1 高浜の虚子に学べば俳句なり
  俳句なら高浜虚子に入門だ
  ともかくも十七文字を並べなさい
  眺め入る飽きもせずに案じ入る
  埋めてみよ温故知新そこにあり

1-2 前衛や金子兜太の世界見る
  今どきや金子兜太に聞いてみる
  気にするな定義をすれば定型ぞ
  生活を詠めばそこに季語ありき
  切れてこそ生きる世界ぞ俳句かな

1-3 気がつけば有季定型そこにあり
  定型は足枷ならぬ励みなり
  伝統が染みついており日本人
  フォークでは唄いでカバー七五調
  日本人季節の中で生きている

1-4 天体はぐるぐる周り季語ならず
  俳句にて天文どんな位置にあり
  歳時記で調べる以外道はなし
  23°季節を生んで温帯や
  歳時記を見て考える天文や
  季語として天体果たして有効か

1-5 天体を俳句に活かす道ありや
  寅彦に学べ季語の分類法
  気に入らぬ寅彦季語に物申す
  天文と気象を混ぜることなかれ
  改善の余地はあるのか歳時記や

第2章 季語の世に真の天文探す日々


2-1 天体の真髄活かす季語ありや
  俳句にて天体いかに詠まれたる
  金子さんあなたはいかに選んだか −『365日で味わう美しい日本の季語』金子兜太
  片山さんあなたはいかに選んだか -『別冊 NHK 俳句 保存版』片山由美子
  山本さんあなたはいかに選んだか -『定本 現代俳句』山本健吉

2-2 天文の俳句割り合いいかほどか
  定量化してみてわかる天文率
  人はいつ俳句を詠んで過ごすなり
  本当の天文俳句何割や

第3章 気がつけば天文俳句そこにあり


3-1 天文の俳句を極む星戀(ほしこい)や ― 山口誓子

3-2 天文の民俗学を極めたり― 野尻抱影

3-3 星戀にオリオン昴天狼や
  定本の星戀に観る天文や
  オリオンと天狼昴そろい踏み
    「オリオン」
    「天狼」
    「昴」
  オリオンと天狼昴季語とせず

3-4 天文の俳句詠んでの多佳子なり
  星を詠む俳句結社天狼や
  多佳子さんオリオンいかに詠みなさる
  多佳子さん天狼以下に詠みなさる
  残念や星と星座は季語ならず

第4章 星戀を訪ねて天文俳句あり


4-1 読み直す星戀にこそロマンあり

4-2 誓子さん天文俳句見事なり
  星戀で一年早く回るなり
  カシオペヤ秋を謳歌し春に居る
  アンタレスいやいやあれは蛍なり
  星々は天に張り付く灯りかな
  遷宮の宙を見たまま写生する
  カシオペヤあなたは山か碇かな
  韻を踏む韻文ならの俳句かな
  暗黒の怪しき雲や天の川
  星空の模様を愛でる冬木立

4-3 星戀や込められた意味いとをかし
  まだ登る機会を得ない山恋し
  帆かけ星何処にあるや南国の
  カノープス何処にあるや南国の
  マウナケア星戀成就カノープス
  カノープス人の名前か町の名か
  星戀や込められた意味いとをかし

第5章 星座には宙(そら)の風情があふれおり


5-1 ひとこのむ季節感あり星座かな
  四季ごとに心に響く星座ありされど俳句の季語とはならず
  されど云ふ心に響く星座あり

5-2 伝統の俳句に守破離(しゅはり)あるものや
  気に入らぬ寅彦さらに物申す
  人事こそ不思議の坩堝(るつぼ)季語の謎
  俳句にも守破離(しゅはり)あれば変わりたる
  標準時星座にあれば季語となり
  南にて俳句を詠めば逆立てり
  賢治なら逆さオリオン北で見る
  俳句にて定め難きは標準時
  「てんでんこ」俳句も津波にならふべし

第6章 俳句にて学ぶは宙(そら)の風情なり


6-1 ダークなり宇宙の秘密見つけたり
  暗黒の列車走るやイーハトブ
  暗黒に支配されたる宇宙かな - 暗黒物質と暗黒エネルギー

6-2 とは言えどひたってみたい星世界
  季節をば指定できずも宙(そら)に星
  星々はそれでも俳句に出(いで)にけり
  俳句には好まれる星ありといふ
  好まれる好まれなくも明(あか)き星
  全天に1等星は何個ある
  星群や北斗ありけり北のそら
  星座より模様が大事そらのあや

6-3 詠まれたる星の風情や俳句かな
  もう少し星の風情を楽しむや
    「星明かり」
    「星祭」と「星迎え」
    「星の林」
  集まれば星の林か星団か
    「連星」
    「星の林」
    「散開星団」
    「アソシエーション」
    「球状星団」
  詠まれたる星の林何語る
  壊れゆく星の林に何見るや

6-4 動く星風情ありやとひと好む
  「星が光る」
  「星が飛ぶ」
  「星が落ちる」
  「星が流れる」

6-5 太陽系近くて遠き友ありて
  太陽系何を見るか人しだい
     水金(すいきん)と火木土(かもくど)なら目にさやか
      「水星」
      「金星」
      「火星」
  惑星は瞬きもせず夜(よ)に座る
     太陽系果てから来たり箒星
  オールトは果てを見たりと球(きゅう)描く
  流れ星星は飛ぶのか落ちるのかいやいや違う流れたり
    「流星群」
    「散在流星」
    「静止流星」
  流れ星明るさ変える芸達者
    「夜這い星」
  満月かいや流れ星火球(かきゅう)なり
  雲流れ流れていない星流れ

6-6 静か夜にひとり眠るは天の川
  気がつけばひとり銀河を誰ぞいく
  天の川清少納言は気にかけず
  天の川佐渡に横たふ本当か
  1兆個宇宙(そら)にただよふ銀河かな
  和歌ありて天文世界も豊穣(ゆたか)なり

本のタイトルはどうするか?

さて、本のタイトルはどうしようか? タイトルは大切だ。思いついたのは『宇宙(そら)の風情』(図1)。とりあえず、これで行こう。

図1 天文俳句の本のカバー案