天文俳句 (16)プラネタリウムで考えた
天文関係者が考えた星の歳時記
note「天文俳句」(9)では、天文学者が考えた「星の歳時記」を紹介した。次の3冊だ。 https://note.com/astro_dialog/n/n1ecb582b9704
[1] 『星の歳時記』石田五郎、ちくま文庫、1991年
[2] 『天文歳時記』海部宣男、角川選書、2008年
[3] 『宇宙吟遊 光と言葉 星めぐり歳時記』海部宣男、じゃこめてぃ出版、2009年
天体写真家が考えた星の歳時記
また、note「天文俳句」(15)では天体写真家が考えた「星の歳時記」も紹介した。
『星のこよみ 〜 宙(そら)の歳時記』(林完次、角川書店、2015年)
星空を見る時間は人それぞれ。結局、星と星座を季節に結びつけることはできない。最近、プラネタリウムに行ったので、今回はその感想を述べてみたい。
プラネタリウムで見た「今夜の星空」
プラネタリウムに行ったのは、本当に久々だった。
今回はある町の公立天文台にあるプラネタリウムに行ってみた。テーマは「今夜の星空」。星空をどうやって楽しむか? まずは明るい1等星を見つける。それを起点にして星の配置、星座を見つけるというものだ。
4月中旬だったので、春の星座の話から入ると思ったら大間違い! なんと、「おおいぬ座」のシリウスから話が始まった。そして、「こいぬ座」のプロキオンと「オリオン座」のベテルギウス。これら三つの1等星が「冬の大三角」を形作っている。天文ファンの多くが知っている「アステリズム」だ。
「アステリズム(星群)」は星座とは異なり、目立つ星を結び合わせて名付けられたものである。例えば「北斗七星」や「南十字星」などだ。
ところで、なぜ4月に「冬の大三角」なのだろうか? そう思ったのだが、4月の午後8時ぐらいだと、「冬の大三角」はまだ沈んでおらず、西の空に見えるのだ(図1)!
「冬の大三角」が沈んでから春の星座が夜空によく見えるようになる。実は、天文学者は天文台で観測をするから、星空にくわしいと思うかもしれない。しかし、それは間違いだ。観測中はドームの中の観測室に居る。夜空は見ていないのだ。見ているのはコンピュータの画面だけ。なんとも味気ない。
そういえば『天文学者は星を観ない』(亜紀書房、2022年)という本がある。韓国の天文学者、シム・チェギョンが書いた本だ。まだ読んでいないが、面白そうなテーマだ。今度、買って読んでみようと思う。
星座は動く
4月の星空は「冬の大三角」で始まった。そして、春の星座に移っていく。1等星を目印にするので「うしかい座」のアークトゥルス、「おとめ座」のスピカという具合だ。
もちろん星座が動くわけではない。地球の自転に伴って、星空の様子は時々刻々と東から西へと動いていく。地球の自転周期は24時間なので、360°を24時間で割ると、1時間あたり15°動くことになる。満月の見かけの大きさは0.5°なので、1時間に満月30個分は動く。あまり気がつかないが、星空の動きは結構速い。
地球の自転に気づくとき
私が地球の自転を認識したのは望遠鏡で星を見たときだ。そのとき使った望遠鏡は経緯台式のもので、天体の動きを追尾できるものではなかった。
ある星を視野の中心に入れる。そこまではよいのだが、星を見ていると、どんどん動いて視野から逃げていく。「うわあ、こんなに速く星が逃げていく!」しかし、動いているのは星ではない。この動きこそ、地球の自転の効果なのだ。
これがある限り、星と星座は季節と対応づけることはできない。やはり、星と星座を俳句の季語にはできない。
4月の夜8時、1等星は何個見える?
ひととおり4月の夜8時頃に見える星座の説明を終えたとき、プラネタリウムの解説員からクイズが出された。
「1等星は何個見えるでしょうか?」
解答は5択。(1) 5個、(2) 7個、(3) 10個、(4) 15個、(5)もっとたくさん。私は何気なく(2)を選んでボタンを押した。
結果発表。「正解は(3)です。」
ガーン・・・。間違えてしまった。天文学者なのに。ただ、正解者は7名、間違えた人も7名だった。「まあ、いいか。」
せっかくなので、1等星の一覧を表1にまとめておく。全天に見える1等星は21個。そのうちの10個が4月の8時頃に見えるのだ(表1では赤い字で示した)。
今度、ゆっくり夜空を眺めて確認してみよう。
そのとき、西空に沈みゆく「冬の大三角」だけでなく、中空に浮かぶ「春の大三角」も見てみたい(図2)。
季語にはならないものの、春には春のアステリズムが似合う。
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