大学1年 秋①学祭で稼ぐ男
夏が終わって秋。
学祭が迫ってきた。
ダンスサークルでは学祭に向けて新たな振付の練習が始まった。
でも、プロ予備軍のチームとクラブで踊ったことで僕は、今の中途半端な感じの練習に若干嫌気がさしてきていた。
遊ぶなら遊ぶで、とことん自由に楽しいダンスを踊りたい。
でも、カッコつけて踊るならちゃんとかっこよく踊らないと意味がない。
だからカッコいいダンス踊るならちゃんとやってほしい。
なんともワガママな男である。
そこで、僕はサークルと別に、高校から仲良しのディズニーとめちゃくちゃふざけたダンスチームを作ってサークルとは全く別で踊ることにした。
幸いなことに、今年は隠し芸大会がある。
しかも優勝賞金イチミャンエン!
貧乏学生はやるしかねー!
サークルでは真面目でスタイリッシュなヒップホップばかりだったから、独学でロックダンスとブレイクダンスを混ぜたフリースタイルダンスを踊ることにした。
実はディズニーは元野球部なこともあって運動神経はめちゃくちゃいい。
主に僕が振り付けをして、ディズニーはそれを覚えて踊る。
アクロバットな動きをバンバン覚えさせる。
なかなかいい感じ。
ちなみに、隠し芸大会で一万円のインパクトはまぁまぁでかくて、Jさんはラップで、その他カヌー部の面々もコントだったりと参加者がかなりの数になっていた。
これはヤバい。
ライバルが多い。
負けないナニカが必要だ。
せめてインパクトがほしい。
そこで僕は脳みそを絞りに絞った結果、ルパンの楽曲に合わせてダンスを踊りながらピストルの音に合わせて火薬銃を発砲しつつ、
2人でじゃんけんをして、負けたら麦茶一気飲みという謎ルールを設けたショータイムにした。
普通にめちゃくちゃダンスうまい二人組が、踊りながら流れてる音に合わせて西部劇の決闘みたいな感じでピストルで互いを撃ちながら
なぜか負けた方が一気飲みをするという意味わからなすぎるカオスな演出だったけど
酔っ払いの多い我が大学の学祭では、酔っ払いにしか理解できないわけわかめな展開のおかげでアルコール民の熱狂的な共感を受けて大盛り上がり。
ショーを見てる観客が俺らの真似をするためにビールを大量買いしはじめて、ビールの売り上げが爆増した。
そして観客と僕らは一体となって乾杯をしていた。
ここまで盛り上がるとは思ってなかったけど、観客が酔っ払いばかりだということを逆手にとって、隠し芸大会では圧倒的な盛り上がりを見せ
最終的には声援数の多さで僕らはまさかの優勝を獲得した。
これが僕がダンスで初めて稼いだお金だった。
いちみゃんえん。
ダンスで稼いだ。
自分の芸がお金になった。
ダンサーという選択肢もありだなぁとちょっと思うようになっていた。