高校3年 冬①京都の一人旅
私立受験が始まった。
僕は東京の美大と、京都の芸大、そして親からの勧めで東京の私大を受験することにした。
私大に行くなら京都がいいな。
東京はまだ行く機会もあるけど、京都はなかなか縁遠い。
さらに東京の美大で演劇を学ぶ場合、夜間しかない。
出来たら昼の方がいい。
オガのいる大学を含めて演劇を学べる学部は他にもあったけど、受験対策ゼロの僕に光が差す可能性が高いのは上記のふたつだった。
そもそも、なぜここまで国公立にこだわっていたのか。
実は僕の妹は看護師を目指していた。
医療系の大学は学費も、偏差値もだいぶ高い。
僕の妹はまあまあ優秀だけど、医療系の国公立は厳しいような気がしていた。
僕も妹も私立は親の負担も大きい。
だから、とにかく僕は国公立にしたかった。
妹と違って、やりたいことがあるわけでもないし。
とはいえ、センター試験で滑ったら浪人の可能性もある。
親も浪人はさせたくなったようで、センターでダメなら私立も仕方ないみたいな雰囲気だった。
国公立ならなにをしていいかわからない。
でも、私立なら演劇を目いっぱいやれる(気がする)
そんな複雑な気持ちを持ちながら、僕はいよいよ私立受験に挑んだ。
まずは京都。
初めての一人旅。
冬の京都は盆地の地元に引けを取らないくらい、めちゃくちゃ寒かった。
試験は一日なので、前日にホテルに宿泊して翌日は朝から大学へ向かう。
ホテルは駅から近いところを親が取ってくれていたが、それまで1人で飲食店に行ったことのない僕は店選びから悩む。
悩みに悩んで京都ラーメンの店に入る。
初めての一人ラーメンはやたらと緊張した。
地元で食べる縮れ麺ではなく、スッとまっすぐな麺に白いスープでちょっとだけ驚いた。
せっかくだから繁華街を歩いてみる。
修学旅行で見つけた段ボールアーティストの方のお店に向かう。
一年ちょっとぶりの再会。
似顔絵を描いてもらう。
絵の描き方が前回よりも圧倒的に上手くなっていた。
月日が経つことの変化をまじまじと見せつけられた気がした。
いくつか作品を購入して、ホテルの方へ。
普段なら外を出歩く時間ではない。
しかも大都会。
とても緊張した。
変な人に絡まれないか最新の注意を払いながら歩いていると、とある店前にフライヤーが並んでいるのを見つける。
なんだかわかんないけど、めちゃくちゃかっこいいなぁ。
そう思ってライブのフライヤーを何枚かもらっていく。
帰り、どこかのお店からとても惹きつけられる音楽が流れているのが聴こえた。
当時は誰なのかも分からなかったけど、後日TVで1000年に1人の声を持つ歌手だとして見かけた。
京都は目を、耳を惹きつける街だ。
夜が更けるとチラチラと雪も降り出していた。
夜でも街を照らす無数のライトに舞う雪の姿と、幻想的な音楽を聴いて大都会の魅力に強く惹きつけられた。
翌朝。
少し早めに目を覚まして受験会場の大学に向かう。
幸いなことに雪は止んでいたけれど、外はかなり肌寒い。
コンビニで、これまで見たことのない清涼菓子を見つけた。
眠くなったら終わりだから、目が覚めるものをゲットしておこう。
中心部から離れた大学まで電車で移動して、ようやく到着。
おぉ、もしかしたらここに4年間通う可能性もあるのか。
かなり心が躍った。
芸大生という肩書きはなかなか魅力的だなぁなんてミーハーな気持ち満載で会場に入る。
教室はかなり暖かい。
これはワンチャン眠気に襲われる可能性すらあるな。
そう思って、朝に買ったシート状の清涼菓子を食べる。
なんじゃこりゃーーー!!!
これまで味わったどの清涼菓子よりも辛くてスースーして、一瞬で目が覚めた。
むしろ気分悪くなるほどの刺激。。。
口に若干ダメージを抱えながら試験を受ける。
1日の試験を終えてそのまま地元へ。
あっという間だった。
近代的な建物、アートのある世界。
京都は一気に僕の憧れの街になった。
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