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大学1年 春③GWは寝袋スプラッシュマウンテン

大学の生活にも慣れてきて迎えたGW。

Jさんに誘われて入ったカヌー部でキャンプをすることになった。

地元では父の趣味でよくキャンプやアウトドアに行っていただけあって、準備が大切だということは重々承知。

だからこそ、ディズニーと春のキャンプに向けてアウトドア用品を買いに行った。

カヌー部の先輩からは"夜は寒いから一応防寒着と、寝袋か毛布はあった方がいいよ。"と言われていたことも大きかった。

寝袋はいざという時に役に立つし、持ってて損はない。

スポーツ用品店に着いてアウトドアコーナーを見る。

1番安いのだと¥980からあったが、これは夏用と書いてあった。

別に裕福というわけでもないけど、ここでケチったら後々に絶対後悔する気がする。

次のランクは¥1,980の3シーズン用。真冬は除くってやつ。

その次のランクは¥3,980

急に高い。

でも、素材からして明らかに肌触りがいい。そして絶対あったかい。

しかしマジで高い。安いの4個も買えるじゃん。

でも、これにしよう。4年間使うしな。


ついでに登山用のリュックとダウンベストも買った。

リュックはとにかく安いやつ。

ダウンベストはSALEになってたもの。

聞いたことないメーカー名だったけど、やたら暖かいということを推していたから、きっと暖かいのだろう。

先にも書いた通り、高校時代ビジュアル系にハマっていた僕は、いわゆる「普通の服」のストックがとても少なかった。

無いわけじゃないんだけど、とても少ない。

カヌーやダンスをやるにあたって、動きやすい服はなくてはならないものだった。

出費は痛いが、まぁ仕方ない。

ディズニーは"寝袋なんてなくても大丈夫だべ!"となめてかかっていた。

こいつは何しにわざわざスポーツ用品店にきたんだろう。

まぁ、本人がいらないと言うなら強制はすまい。

ある程度準備もできて、いよいよGW。キャンプの日が来た。


田舎の大学ながら、我らがカヌー部はそこそこ大所帯。

今回は部員の車10台くらいにそれぞれギュウギュウに押し込まれて、更にカヌーを屋根に積んで出発。

40人ほどの人数がいることにビックリしたが、今回来れない人も多かったらしく、実際はもっと来ることもあるんだそう。

途中セイコーマートに寄って、明日の朝ごはんをそれぞれ買うことになった。

「北海道に来たからにはやき弁食べなよ!」

何のことかもわからずに"でっかいやきそば弁当"というカップ焼きそばを買わされた。

お腹の空いてる大学生にはもってこいらしい。

夕飯のBBQは部費から出るそうな。嬉しい。

日中はカヌーに乗って、夕方からはキャンプ。

初めてのカヌーはまずはカナディアンという二人乗りのものに。

なかなか上手く漕げなくて難しい。

進み出すと一気に大丈夫なんだけど、そこまでが大変。

その後カヤックという、1人乗りにも挑戦。

こちらはめちゃくちゃ相性が良かった。

どこまででもいけそう!

波のない湖に轍を生み出して進んでいく光景がとても神秘的に思えた。

空はグレイがかった青。

周りはただひたすらに濃い緑。

自然の中にいることを強く実感した。


日が傾く前に、カヌーを終えてキャンプ場へ移動。

と言ってもすぐそばだ。

一部はいそいでテントを張り出す。

他は火を起こすチームと、BBQの準備をするチーム。

家族でキャンプによく行っていた僕はテントを張るチームに入った。

誰が1番早くテント建てられるか競争するべ!

誰ともなく言った一言で一斉にテントが建てられる。

先輩たちの軒並みならぬ速さにビビる。

家族でのキャンプごっことは違うのだよボーヤ。と言われた気がした。

お腹も空いてきたし、火の番をしていたJさんのところに行った。

彼はビール片手にもう出来上がっていた笑

「寒いんだから飲みたいの飲んであったまんな」

Jさんは温まる飲み物を俺とディズニーにすすめてくれた。

ダウンベストだけでは寒くなってきたから、N3Bを着込んで火に当たった。

ディズニーはめちゃくちゃ薄着ですごい寒そうだった。

寒かったおかげで僕もディズニーも飲み物がどんどん入っていく。

僕はレモン、ディズニーは赤いブドウ。

散々食べて飲んで、夜も更けてきた。

あたりは真っ暗。

田舎で育ったはずなのに、空ってこんなに綺麗だったのかと驚くほどピッカピカの星が一面に広がっていた。

北海道に来て良かったなぁ。

聞こえる音は車のエンジン音のみ。

あまりに寒すぎて、車で暖を取る人がまぁまぁいたらしかった。

ふとディズニーを見ると、寒さで震えながら座って寝ていた。

このままではヤバい。

そう思って起こそうとしたが全然起きない。

とりあえずテントに連れてったが、彼は寝袋も持ってきてない。

仕方ないから僕の買ったばかりの暖かい寝袋に入れてあげた。

彼はめちゃくちゃ気持ちよさそうにそのまま深い眠りについた。

更に夜が更けてひとり、またひとりとテントに入っていく。

めちゃくちゃ寒いし、僕もそろそろ寝ようかな。

そう思ってディズニーのいるテントに入る。

くさっ。

懐中電灯で中を照らして見ると、僕の新品の寝袋はディズニーのぶどうスプラッシュまみれになっていた。

「オワタ\(^o^)/」

大学生活開始1ヶ月にして、人生2度目のオワタ発動。

あまりにショートスパンすぎやしないかい。

そっと入口を閉じて、僕は空いてるテントで熟睡した。


翌朝、がっつり具合悪い状態で目を覚ました。

水ほしい。頭いたい。

テントの外に出るとあたりは霧がかっていて、とても幻想的だった。

そんな幻想的な空気など1ミリも気にしてないかのように、

僕の数倍は飲んでたはずのJさんは朝から超ハイテンションでカップラーメンを食べていた。

あ、ディズニーは?

テントを見に行ったら、スプラッシュが寝袋と本人にこびりついてカピカピになりながら、変わらず寝ていた。

テントは変わらず臭かったので、そっと入口を閉じた。

起きた人からそれぞれが用意した朝ごはんを食べている。

おにぎりとか、カップラーメンとか。

そいえば昨日なんとか弁当って朝ごはん買ったな。

お湯を沸かしてもらって、カップ焼きそばの蓋を開ける。

麺が2つ入ってる!

めちゃくちゃ大盛りのやつやん!

今まで見たことないくらいでかいサイズのカップ焼きそばだった。

ちなみに、残り湯でスープを作れるように中華スープの素も入っていた。

朝から具合悪い中、中華スープが胃に染みた。

軽く吐きそうになりながら、完食した。

やき弁を食べていたら、ヒップホップ好きな先輩がYOU THE ROCKの歌を歌い出した。

ヒップホップがまだここまで市民権を得ていなかった当時、カップやきそばのCMで彼がラップをしているものが、ヒップホップマニアにはたまらなかったからだ。

"俺の名前はYOU THE ROCKさ

フロム信州信濃のラップマシーン♩"

めちゃくちゃダサいと思った。

でも、なんかわからないけど楽しかった。

これ以降、キャンプの時にはYOU THE ROCKを歌いながらでっかい焼きそば弁当を食べるのがぼくのスタンダードになった。


ややあって、ディズニーが目を覚まし、寝袋にスプラッシュマウンテンしたことを謝ってきた。

「ごめんよ。洗って返すね」

いやいや、そこは新しいの買ってくれよ!

その場にいた全員に総ツッコミされていた笑

そんなこんなで、初めてのカヌー部のキャンプは幕を下ろした。

新しい体験しかない、とにかく刺激の多い毎日だった。

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