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映画「侍タイムスリッパー」

友人の好きな役者が主演ということとコメディらしい、というとこだけ事前知識で入れて見に行ってきた。
コメディの名よりも重い何かを感じる映画だった。

以下ネタバレ。というか雑感。


幕末の会津藩士が暗殺をしようと相手に切り掛かったところで雷が落ちて現代の時代劇撮影所にタイムスリップしました。という話。
主人公の会津藩士の適応能力の高さがすごい。
溶け込む能力の高さと、昔の人としての動きや思考のアンバランスさの塩梅がとてもいい。適応し過ぎるとせっかくの設定が死ぬし、かと言って永久に適応しないとただのヤバい人なので…
怪我をして担ぎ込まれた病院から見える京都の街並みに絶句する最初のシーンが良い。
それまで見てたのはセットとはいえ見慣れた街並みだったところが急にきょうとだからそんなにバッキバキの高層ビル群ではないとはいえ、近代建築。直前まで話してた人は風体は妙だけど言葉は通じていたのになにこれ?の絶望感が良かった。

その後拾われたお寺で住み込みでお手伝いするようになってからおやつに出てきたケーキに涙するシーンも良かった。「こんなに美味いものを普通に食べられる、豊かな国になったんですね…」の言葉が重い。あなたの世界の地続きの未来があなたから見て幸福そうに見えるのであればそれはとても誇らしいのではないか。
悪いところを切り取って並べるより、良くなったところを切り取ってしみじみとするのがとても心に沁みるなあ。

その場で見たTVの時代劇ドラマに感激して殺陣師の事務所(?)に入る主人公。本当に人を斬ったことがある(かの言及は本編中になかったけど、少なくとも真剣は持ってた)人間のリアルとお芝居のギャップを試行錯誤する様が良い。

殺陣芝居の上手い役者としてとんとん拍子に名を上げる主人公、大物俳優から大プロジェクトの時代劇のオファーがかかる。自分は斬られ役しか出来ないので…と断ろうとしたら相手の大物役者は雷の日に切り掛かった相手だった…相手は主人公が来る30年前の時代にジャンプしていて、同じく役者として身を立てて成功していた。
主人公、その友達、斬りあった長州藩士、まあどっかでどうにかなるんだろうと思ってたけど、飛ぶ時代をズラすというのが面白いなあと思った。

長州藩士は、人を斬った時のPTSDで人斬りのある時代劇は早々に離脱、現代劇の役者として名を馳せていたがTVでたまたま見た主人公を見てあの時の会津藩士だと確信して決着をつけにきた、と言う。
いや、それにしてもみんな揃いも揃ってあまりに適応能力高いですね?昔の人ってこんな感じ?みたいな気持ちになりつつも、撮影が進み、最後の殺陣のシーンは真剣でやりたいと言い出す主人公。血判状まで持ち出す。いやいや役者なんだから指を切らないでww
まあ本人たちがそこまでやる気なら…と誰も止められない(訴えないって言ってるから医療班の準備だけ万端にすれば良いっしょ!まで言い出す)中、決着をつける為の斬り合いが始まる…

最初から最後までキャラクターがみんないい人ばかりで(途中ヤバいヤンキーとかは出てくるけど)見ていてテンポが良くて気持ちよかった。
ケーキのくだりもそうだし、主人公が生きた時代以降の会津藩の行末の資料を読む主人公もグッときた。新選組が好きなのでその絡みの部分と飯盛山での白虎隊自決さらーっと知ってるくらいだったので、最後の壮絶さと重さはすごい。
国全体は豊かになったけど、地元と仕えた殿は壮絶な最後だったのだな、と言うのを知って、とはいえもう終わったことで…というのは存分にしんどいな…知ってる顔の人間が浮かぶってのがな…

最後、主人公と闇打ちに一緒に行った友人がタイムスリップしてきて終わるのが星新一の「おーいでてこーい」を思い浮かべてちょっとゾワっとした。いやそう言う意図じゃなかったかもしれないのだけれども。

お勧めされなかったら観に行かなかったから教えてもらえてよかった映画だった。

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