「砂に埋もれる犬」桐野夏生
【あらすじ】
貧困と虐待の連鎖――
家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。
小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。母親の亜紀は刹那的な欲望しか満たそうとせず、同棲相手の男に媚びるばかり。
そんな最悪な環境のなか、優真が虐待を受けているのではないかと手を差し伸べるコンビニ店主が現れる。
母親という牢獄から脱け出した少年は、女たちへの憎悪を加速させた。
ネグレクトによって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。
【感想】
桐野夏生さんは「柔らかな頬」で初めて知りまして、こちらの本は再読予定なのでまたの機会に。
今回の作品は、内容は相変わらず重めな感じではあったものの、とても読みやすかった。
あと、純粋に久しぶりにハードカバーの本を読んで、ワクワクした。
そしてLINEとかキンプリとか、今っぽくてちょっとびっくりした。
あらすじの一行目にも書いた、「貧困と虐待の連鎖」
救いようがなく、なぜこんなにも連鎖してしまうのか。
貧困によりネグレクトが発生し、そして貧困は孤立を生む。世間との関わりが薄くなり発見が遅れてしまう。
日本の貧困率は先進国でも最低レベルだという。
虐待については、実母からが半数を占めており、一概には言えないが自身が虐待をしているという自覚が薄いという。
これはその母自身が同じように育てられたケースが多く、よって連鎖が生まれてしまう。
この本は、現代の問題をリアルに描いていると感じた。
主人公の優真はそんな辛い中を生き抜いて、やっと居場所が提供されたけれども、自分の中の埋められない何かとずっと戦い続ける。
周りの大人は本当に勝手だなと思った。
でも、大人は大人なりに考えて生きていて、それが自分のためなのか子供のためなのか。どう影響しているのか。
親も子も分からず、苦悩する模様が読んでいて苦しかった。
最後の優真の言葉が全てだな、と思った。
このような問題って対策が取られているようで取られていないような、難しいところで。
認識の違いが発生するとどうしても立ち入ることができない領域だからデリケートな問題だとつくづく思う。
だからと言って、このような環境によって育てられた子供たちが辛い生き方にならないような世の中になってほしいと心の底から思う。
また再読したら感想追記します。