ガジュマルを育てる
2024年3月、家族で台湾旅行した時のこと。
ここしばらく塊根植物にのめりこんでいた私は、初日から台北にガツンとやられた。
街中が謎の巨木であふれていたのである。
のたくるようなぶっとい根やツルのからみあった奇怪な、日本で目にしたことのないうっそうとした巨木であった。
プレートから「フィカス」の文字が読み取れたが、乏しい知識では絞り込みようがない。
久々の海外旅行と、塊根っぽさ満点の大樹の興奮で、その夜はなかなか寝付けなかった。
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翌日、ガイドさんに「街のいたるところにある、あの木は何ですか?」と訊いたら、あっけない答えが返ってきた。
「ガジュマル」
え? あのホムセンで売ってる根上がり仕立ての観葉植物が、あんな怪物じみた姿に。日本でもいたるところにある植物ではないか。
南国・台湾の日差しは、オサレ観葉植物をとんでもない姿に変えてしまうのだ!
帰国後、フリマサイトで実生の小さなガジュマルの苗を手に入れた。
ここ川崎の気候で、しかも私の生きている間にはぜったい巨木になんかなりっこない。
それでも育ててみたかった。
怪異な姿の片りんのきっかけの端緒の発端でもいいから、ベランダで眺めてみたいのである。