赤ちゃんとわたし
2024年8月11日に放映された『情熱大陸』
~産婦人科・不妊治療医、加藤恵一
‘’それでも赤ちゃんが欲しい
不妊に悩む人々“最後の砦” を観た。
自分も不妊に苦しみ、泣いた過去を思い出した。
何の疑いもなく、赤ちゃんは自然にできるものだと思っていた。
流産、不妊、不妊治療という言葉は自分とは無縁だと思っていた。
結婚して1年過ぎた頃、初期流産を経験した。
生理が10日ほど遅れたあと、トイレでドロっとした袋状のものが出てきて生理のような出血があった。
産婦人科にかかると「この袋に赤ちゃんが入っていたんだろうね。」と言われる。
同時に、エコーで大きな子宮筋腫が見つかり、妊娠できないのはこの子宮筋腫のせいもあるだろうと言われた。
子宮筋腫を取り除く手術をした。
手術をし1年過ぎても妊娠しなかったため、不妊治療を始めた。
周囲からの「子どもはまだ?」の言葉が一番辛かった。
自分より後に結婚した友達、知人が次々と妊娠・出産をしていく度、
訳が分からない焦りと不安を感じた。
心から喜ぶことができない自分がいた。
妊婦さんを見るだけで辛い日々だった。
自分のせいで、いつまでも夫を父親にしてあげられない申し訳なさもあった。
生理がくるたび一人で泣いた。
通院の初めは、沢山の検査とタイミング指導。
半年すぎても駄目だったので、人工授精を始めた。
人工授精をダラダラと2年くらい続けてしまう。
そんな時、不妊治療で有名な医師が独立し、新しくクリニックが出来たためそこに通院するようになった。
通院に列車で往復3時間。
予約をしても、さらに待ち時間が2時間はある人気のクリニックだった。
朝一番の列車に乗っても、帰宅すると夜になっていた。
また初めから各種検査。
タイミング。
人工授精と続き。
それでも駄目だったため、年齢のこともあり医師に体外授精を勧められた。
正直、体外授精まで進むことに迷いがあった。
排卵誘発剤を飲むこと。
注射で卵を取り出し、シャーレで受精させ、女性の身体にもどすこと。
どこか不自然な感じを受け、そこまでするのかという気持ちがあった。
今と違い、保険が効かず全て自己負担で高額なお金もかかる。
治療は、女性の身体への負担が大きい。
相談しても、夫はどこか他人事で話し合いが出来ない人だった。
一緒に考え、寄り添ってくれることはなかった。
自分ひとりで決めるしかなかった。
医師からの、
「絶対、赤ちゃんを抱っこさせてあげるからな。」
という言葉だけが支えだった。
思い切って受けた初めての体外授精。
6個採卵し、精子と授精させ、6個できた卵のうち2個をお腹に戻した。
医師からは「いい卵だったよ。」と言われホッとした。
それから数日後、不思議な夢を見た。
わたしが列車に乗っていて、
隣に小さな可愛い女の子が座っていた夢。
この子、1人で列車に乗っているのかな。
1人で大丈夫かな。
抱っこしてあげた方がいいかな。
その女の子と目が合った。
女の子を抱っこしたところで目が覚めた。
その時、思った。
「わたしは妊娠していて、女の子を産む。」
2週間後に病院に行く時には、軽いつわりもあった。
医師から「妊娠しているよ。心拍確認にまた1週間後に来て。」と言われ、1週間後に無事、心拍確認もできた。
医師や看護士さんから「おめでとう。良かったね。」と言われても、信じられなかった。
あれだけ色々、手術や辛い検査をしても妊娠しなかったのに。
10ヶ月後、無事、女の子を出産した。
不妊治療を経て、自分だけは家族や周囲に「子どもはまだ?」
「二人目はまだ?」と、言わない人になろうと決めた。
そして子どもができない人が皆、
不妊治療した方がいいとも思わない。
子どもをもつもたないは、夫婦の話し合いで決めるものだと思う。
『情熱大陸』で、医師や看護士さんがひたむきに患者さんと向き合う姿と、一般人は見ることが出来ない不妊治療の隠れた仕事を知った。
医師やスタッフの皆さんには、感謝しかない。