【絵本レビュー】 『やっぱりおおかみ』
作者/絵:ささきまき
出版社:福音館書店
発行日:1977年4月
『やっぱりおおかみ』のあらすじ:
ひとりぼっちのおおかみが「け」という、ふくみのあるセリフをつぶやきながら仲間をさがして町をさまよっています。「おれににたこはいないかな」うさぎ、やぎ、ぶた、しか……。いろいろな動物がたくさんいますが、どこへいってもおおかみは満足することができません。とうとうおばけがたくさんいる墓場までやってきたおおかみですが、はたして仲間をみつけることができるのでしょうか?
『やっぱりおおかみ』を読んだ感想:
「大人になると友達を作るのが難しい」
そんなことを最近ママ友達と話していました。ママという肩書きなしで一体友達って作れるんでしょうか。
「学生の時は、友達が簡単に作れたよね」
そう思いがちですが、はたしてそうだったのでしょうか。私は学生時代もそれなりに苦労していたように思います。同じクラスにいるから、という理由だけでは友達にはなれそうもなかったからです。
私の父は「他人と同じ」をひたすら嫌う人でした。「〇〇ちゃんが持っているから」とか「みんながしているから」という理由で私が欲しがるものは、ことごとく却下されました。おかげで私の部屋にはあまりキャラものもなく、流行りのファッションなどというものも知らずに育ちました。
だから高校生になって友達になったのは、クラスで唯一のモッズっ子。好きな音楽はスカと教えてくれたけれど、私はそんな音楽も知らなくて、頭の中で「スカっ、スカっ」と乾いたスポンジを押しつぶしたような音が反響していました。その子がきっかけで「東京スカパラダイスオーケストラ」なるグループを知り、そこからレピッシュなんてバンドも知って、私はどんどんJ-POP表街道から離れて行きました。
しばらくモッズ、スカグループにいたけれど、なんとなく違和感を感じた私は付かず離れずという感じでお付き合いをしていましたが、私みたいな子をやっぱり探していました。でも高校生活も終わりに近づいてくると、私みたいな子はいないんだろうなということに気づいてきたのです。私は一人で出かけることが多くなりました。学校でも固定したグループにいることはなく、その日の気分に合わせていくつかのグループを行ったり来たりしていました。休みの日も一人で行動することが多く、流行りのファッションもわからないので、洋画を見て好きなスタイルを見つけていました。
出来上がったのは、キレカジ(と当時は呼ばれていた)の隠れパンク/スポーツ選手/菓子作り好きというツギハギなキャラクターでした。その頃一緒に行動していたのは七人のやっぱりツギハギグループでした。他のグループには入らずに二人ずつで行動していた人たちが集まったグループ。七人が七人とも見事なくらいマッチせず、私はそれがとても心地よく感じました。大切なのは、私みたいな子を見つけることではなく、私が私でいられる場所、ですよね。周囲に認められるために自分を押し殺さなければならないなら、狼のように一人でいてもいいと思います。自分が心地よくあれる場所。そこが自分がいるべき場所のように思うのです。
おおかみがおおかみでいればいいという結論は大賛成です。他のものになる必要はありません。でもきっと、このおおかみも素敵なツギハギグループが見つかるのではないでしょうか。
『やっぱりおおかみり』の作者紹介:
ささきまき
1946年神戸市生まれ。絵本に『やっぱりおおかみ』『まじょのかんづめ』『おばけがぞろぞろ』『くりんくりんごーごー』(以上福音館書店)、『変なお茶会』『ピンクのぞうをしらないか』『はいいろこくのはいいろひめさま』『ムッシュ・ムニエル』シリーズ(以上絵本館)、『やまからきたペンギン』(フレーベル館)『ね むいねむいねずみ』シリーズ(PHP研究所)、『おばけのばむけ』(教育画劇)など。童話に『なぞなぞライオン』『おれはレオ』(以上理論社)などがある。