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【絵本レビュー】 『どうぐ』

作者/絵:加古里子
出版社:瑞雲社
発行日:2001年10月

『どうぐ』のあらすじ:


自分の身の回りにあるいろいろな道具を、わかりやすい絵で説明し、人間にとって「どうぐ」の重要性をおしえてくれる。

『だいおういかのいかたろう』を読んだ感想:

おもちゃよりも道具好きな息子にと思って購入した絵本ですが、ハマったのは私でした。

子供の時から人形遊びよりも工作の方が得意で、家にあった工具入れを見るのが大好きでした。同じ大きさのネジや釘が小さな袋や箱に入って仕分けされているのを見ると、なんとなく心が休まったものです。台所の調理器具やステンシルに関しても一緒で、父が包丁一式を買った時はすごく嬉しかったのを覚えています。それまでは、メーカーも色も違うちぐはぐの包丁を使っていて、テレビや雑誌で見るシェフの台所には程遠い気がしたのです。ステンシルは、せっかく分類して入れるようになっているのに、スプーンもフォークも一緒に入っていたり、大きいスプーンと小さいスプーンが混ざっていたり、見るたびになんだか頭の後ろがキリキリして落ち着かないのです。

なので、小学校の時のお気に入りの入り浸り場所は日曜大工の店でした。2年生で通い始めたスイミングプールの横がなんとDIYセンター。早くついた時やプールの帰りに立ち寄って工具の並ぶ通路をブラブラするのが憩いの時間でした。

中学に入ると、父に家の家具を組み立てる手伝いを頼まれるのですが、喧嘩になるんです。父のやり方がもどかしく、ついつい「そうじゃないんじゃない?」なんて言ってしまうと、さあ大変。父は機嫌を悪くし、途中で投げ出して言ってしまうか、「お前は黙って抑えてりゃいいんだ」と怒鳴られてしまいます。それで黙っているのですが、大抵数日後に傾げてきたり、引き出しが入らなくなったりしてくるのですよ。最初はめんどくさそうに直していた父でしたが、いつのまにか彼は買ってくる担当になり、仕上げは私ということになりました。

そんなこともすっかり忘れていたのですが、数か月前母が「一回着たセーターをタンスに入れるのはいやだから、かけられるようにしようと思って」とうのです。それで色々オンラインショップを見ていたけれど、大したものでもないのに結構高いと文句を言っていました。それから数週間後の週末、「ちょっとD2に行ってくる」とメッセージが。対して気にもせずにいたらその数日後、一枚の写真が送られて来ました。なんとも素敵な梯子のようなもの。次の写真にはセーターがかけられています。母が自分でサイズも決めて、壁に立てかけられる要したも角度をつけて切って作ったんだそうです。「すごいよ、これ」そう言うと、「色もニスも塗ったんだよ」ととても自慢げでした。そうか、私のDIY好きは母譲りだったんだ。家を出て20年近く経って、やっと謎が解けました。

さて、うちの道具好きの4歳児は、今日も子供用作業台を分解して遊んでいます。なんか遊び方が違うんだけれどなあ。

『どうぐ』の作者紹介:

加古里子
1926(大正15)年福井県武生町(現・越前市)生まれ。1948年東京大学工学部卒業。工学博士。技術士。 民間化学会社研究所に勤務しながら、セツルメント活動、児童文化活動に従事。1959年から出版活動にかかわり、1973年に勤務先を退社後、作家活動とともに、テレビニュースキャスター、東京大学、横浜国立大学などで児童文化、行動論の講師をつとめた。 また、パキスタン、ラオス、ベトナム、オマーン、中国などで識字活動、障がい児教育、科学教育の実践指導などを行い、アメリカ、カナダ、台湾の現地補習校、幼稚園、日本人会で幼児教育、児童指導について講演実践を行った。 『だるまちゃんとてんぐちゃん』『かわ』(福音館書店)、『からすのパンやさん』(偕成社)、『富士山大ばくはつ』(小峰書店)など、500冊以上の児童書の他、『伝承遊び考』(全4巻・小峰書店)など著書多数。 土木学会著作賞、日本科学読物賞、児童福祉文化特別賞、菊池寛賞、日本化学会特別功労賞、神奈川文化賞、川崎市文化賞、日本児童文学学会特別賞、日本保育学会文献賞、越前市文化功労賞、東燃ゼネラル児童文化賞などを受賞。 現在、科学、文化、教育に関する総合研究所を主宰。


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風の子
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