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【絵本レビュー】 『くずかごおばけ』

作者/絵:せなけいこ
出版社:童心社
発行日:1975年8月


『くずかごおばけ』のあらすじ:

いやなものは、なんでもすててしまう女の子。ところが、そのくずかごの中から手が出て……。


『くずかごおばけ』を読んだ感想:

私はなんでもとっておく父となんでも捨てたがる母を両親に持っています。父が亡くなった時すぐさま家の大掃除を始めた母が家の裏の物置の一つを開けたら、スーパーの袋が雪崩のように落ちてきて驚いたと電話をかけてきました。健在な頃の父は買い物担当で、子供の頃はよく付き添ってスーパーへ行ったものですが、行く先々で必ずビニール袋を余分に取って帰っていました。父曰く「オイルショックが来てまたプラスチック袋がなくなるから」というのが理由でしたが、きっと私が付き添わなくなっても一人で何年も溜め続けていたのでしょう。そして家の中にしまう場所がなくなって物置を買ったのだと思います。

ところが母ときたら全く真逆で、暇さえあればせっせといらないものを捨てて、家の模様替えをしていました。ミニマリストの先駆けだったのかもしれませんね。もちろん成功したことはありませんが。

そんな私はちょうど真ん中といったところでしょうか。服などはさっさと捨てられるけど、捨てるのがなかなか難しいのは本です。一回読んで終わりという本もたくさんあるけれど、捨てるとなると躊躇してしまいます。本ってその内容よりも、それを読んだ時の気持ちや状況などが大切な気がするのです。本棚を見ると、なんというか、自分が歩いてきた道のりを記してあるような気がするのです。

ところがうちの旦那は集めるのが大好きなのに、全くと言っていいほど物に執着しない人で、一旦収集が収まるとなんとポイポイ捨ててしまうのです。旅行帰りに荷物が重量オーバーすると、靴でも上着でも捨ててしまいます。「また買えばいい」と言うのですが、費やしたお金が勿体無いというのはもちろんな話ですが、ものに申し訳ない気がしてしまうのです。それで、ごんべが種まきゃ烏がほじくるという具合に、ポイポイ旦那が捨てるものを後ろから私が拾い集める、という図になるわけです。

さて、先日母から、せなせけいこさんが亡くなったと聞きました。私がコロナ禍をなんとか乗り切れたのは、絵本があったからと言っても過言ではありません。小さな頃に読んでもらったり読んだりした絵本にもたくさん再会できました。『おばけのてんぷら』が日本から送られてきた時、素敵な貼り絵を見てとても懐かしく感じました。読んでもらっていた頃には作者を意識することはありませんでしたが、あの温かみのある貼り絵には見覚えがありました。
「そうか、せなせけいこさんっていうのか」
ふわふわのうさぎを撫でながら思ったのでした。

この場をお借りしてありがとう、そしてお疲れ様でした、と言わせてください。そして、せなさんの言葉の一つを書にしたので、ここに添えさせていただきます。落ち葉には般若心境の一部を書きました。ゆっくりお休みください。

では、また。


『くずかごおばけ』の作者紹介:

せなけいこ
1931年、東京生まれ。武井武雄に師事して絵を学ぶ。1969年、貼り絵による独特の技法を駆使した「いやだいやだ」の4冊シリーズで絵本作家デビュー。その後も、「あーんあんの絵本」シリーズ(福音館書店)、『おばけのてんぷら』『めがねうさぎ』(ポプラ社)など多数の絵本を描く。2016年に半生を振り返り語った『ねないこはわたし』(文藝春秋)を上梓。


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