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【絵本レビュー】 『こぐまのくまくん』

作者:E・H・ミナリック
絵:モーリス・センダック
:まつおかきょうこ
出版社:福音館書店
発行日:1972年6月

『こぐまのくまくん』のあらすじ:

寒い雪の日に着るものをおねだりするくまくん、誕生日にバースデースープを自分で作ってしまうくまくん、宇宙帽をかぶって月旅行にでかけるくまくん、寝る前にたくさんのお願いごとを考えるくまくん、4つの愛らしいお話を収録。「なんでもひとりでやってみたい」「でもお母さんには甘えたい」そんなくまくんと、お母さんぐまのやりとりに思わず顔がほろこんでしまいます。

『こぐまのくまくん』を読んだ感想:

「こんなお母さんになれたら自分に100点をあげられそう。」
これがこの絵本を読んだ最初の感想です。この1年のロックダウン中、息子は私にべったりで、これを見て、あれを見て、これをして、あれをして、一緒にして、あれが欲しいなどなど私はブチ切れること多しな年でした。私だったら「寒いから着るものが欲しい」と戻ってきても、2回目ですでにプチッと切れてしまっていることでしょう。しかもクマのお母さんは、くまくんに頼まれるたびに何か作ってあげるのです。本当に頭が下がります。

子供の頃、私はあまり母と過ごす時間がありませんでした。母は午後出勤が多く、帰ってくるのは大抵私が寝た後でした。母の休みは週に1、2回で、そのほとんどは平日だったので、せっかくの休みでも私は学校に行っていて一緒に遊べる時間はあまりありません。だから、母の休みの日は一刻も早く学校から帰りたくて、一日中気もそぞろでした。

ある時週末にいとこたちが泊まりに来て、母は休みを取ったのだと思います。一日うちにいたのですが、私はいとこたちと遊ぶのに夢中で母がいることも忘れていました。さて翌日の午後、いとこたちが家へ帰るので、母が仕事へ行くついでに途中まで送って行くことになりました。私も駅まで一緒に行ったのですが、せっかく母が週末休みだったのにちっとも遊ばなかったことに気づいたのです。それで私はいとこたちにもおかまい無しで、母にべったり寄り添っていました。いよいよ駅に着くと、私は母ともっと一緒にいたくて泣き始めました。もういとこたちのことはどうでもよかったのです。それどころか、「せっかくの母との休日を無駄にした」とさえ思っていました。母はちょっと悲しそうな、困ったような顔をしていましたが、結局はいとこたちと行ってしまいました。その時のことは今でもよく思い出します。

またある時、近所の友達と道で遊んでいて私は転んでしまいました。膝から血が出て私は大泣き。一緒に遊んでいた子たちも寄って来て私の膝を見ていましたが、その中の一人が私の母を呼んで来ました。私は顔を突っ伏して泣いていましたが、家の方から「ピーポーピーポー」と行っている母の声が聞こえました。そして母は私の隣に来ると、「道を開けてください、怪我人がいます」と私を囲んでいる子供たちを脇へ寄せました。それから、「応急処置をします」と言って私の傷をマキロンで消毒しました。私は生まれて初めての救急車の到着にびっくりやら楽しいやらで、すっかり泣き止んでしまいました。そのあとは母は家に戻ってしまいましたが、私は救急車に治療してもらったことがちょっと自慢に感じて、とても気分良く遊んだのを覚えています。でも私は、そのあと何度もこの母のユーモアに救われることになったのですが、そのことはまたいづれお話ししたいと思います。

うちの母は意外とくまくんの母に近いのかなと思います。私は、全くかけ離れていて、とても短気です。古い輪ゴムみたいにプチプチ切れるので、ちょっと反省。くまくんのお母さんにも、うちの母にもまだまだ見習うところが多そうです。



『こぐまのくまくん』の作者紹介:

E・H・ミナリック(Else Holmelund Minarik)
1920年、デンマークに生まれる。4才のときにアメリカに渡る。ニューヨークの女子大修了後、地方紙の探訪記者として働く。結婚後、第二次世界大戦中、教員不足の折りにロングアイランドの田舎で教鞭をとる。この結果、小さな子どもたちのために文を書くことに興味をもつようになり、「こぐまのくまくん」(全5冊)の本が誕生した。アメリカでは、”I can Read Book”シリーズとして出版されている。2012年逝去。


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風の子
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