【絵本レビュー】 『ワタナベさん』
作者/絵:北村直子
出版社:偕成社
発行日:2018年2月
『ワタナベさん』のあらすじ:
ワタナベさんは、なべひとつでどんな料理でもおいしくつくる名人です。
しかし、あるときナポリタンを注文されてしまいます。
フライパンがないとできない、とこまってしまうワタナベさんでしたが。。。
『ワタナベさん』を読んだ感想:
「ワタナベさん。。。」読み始めたら笑い出したのは、近くで聞いていた旦那でした。「そうだよ、鍋のワタナベさん」というと、さらにゲラゲラ笑いました。つられて息子も笑いました。なんだかわからないけど、私も笑いました。
私が小さい頃、父は専業主夫で母は外で仕事をしていました。三日おきに休みで、休みの日は前日から何を夕飯に作ってもらおうか考えるのが楽しみでした。母が家にいない日は、私はひとりでご飯を食べることが多かったです。小学生の時は週末を含み週5回スイミングで、帰ってくるのは夜の9時ごろ。父はすでに食べていたのでしょう。私はコタツに座り、父は食事を運んでくると映画をつけてさっさと台所にこもってしまうのが常でした。食事時間は30分で、そのあとはお風呂に入って10時には寝るという決まりでした。
でも母が休みの日は、ダイニングテーブルに座って3人で食べるんです。夕食も塩辛い茶色いおかずばかりではなく、綺麗な色で食欲をそそるものに変わりました。何より楽しかったのはテレビ画面ではなく、両親の顔を見ながら食べられることでした。大抵は父がひとりで喋っているので、私が話すというわけではなかったのですが、それでもやっぱり誰かと食べるというのは楽しいものでした。
私が特に楽しみだったのは鍋の日でした。湯豆腐、すき焼き、鱈鍋、おでんなどなんでも好きでした。鍋の日はテーブルにガスコンロが登場します。小さなガスタンクを挿入し火をつけるのは、とてもドキドキしました。火をつけたら爆発するような気がしていたのです。ポッと音がして小さな火が出てくると、ホッとしたものでした。あとは今でニュースを見ている父を呼んで、さあ夕ご飯です。食べても食べても具が出てくる土鍋は、小さい私にとっては魔法の鍋のようでした。
今の私は、ただただワタナベさんがいて毎日おいしい鍋料理を作ってくれたらいいなあ、と願うのでした。
『ワタナベさん』の作者紹介:
北村直子
グラフィックデザイナー、イラストレーター。1975年、東京都生まれ。多摩美術大学絵画科油画卒業。東京都の動物園、井の頭自然文化園でポスターや展示デザインをするかたわら、広告、装丁などのイラストやデザインを手がける。主な作品に、絵本『おでかけ どうぶつえん』(学研教育出版)、『おならゴリラ』(偕成社)、『珍獣図鑑』(ハッピーオウル社)など。
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