【絵本レビュー】 『ノンタンほわほわほわわ』
作者/絵:キヨノサチコ
出版社:偕成社
発行日:1977年12月
『ノンタンほわほわほわわ』のあらすじ:
風船ガムをたくさんかんでいたノンタンは、はずみで飲みこんでしまいます。するとノンタンがふくらんで、ほわほわほわわと空へ。
『ノンタンほわほわほわわ』を読んだ感想:
風船ガムを膨らませるようになったのはいつでしたか。
私の母はいわゆるヤンママで(今でもこう言うんですか?)、小さい頃よく言われたのは「ママの真似しちゃダメだからね」でした。時々会う母の友達は大抵ちょっと派手めでキラキラしていて、父には連れて行ってもらえないようなゲーム台のある喫茶店で普段は飲めないメロンソーダを飲ませてもらったり、遊園地のベンチでタバコを燻らせまったりしたりするのをみたりするのは、とても新鮮で楽しいものでした。
私の母を含め、彼女の友達も大抵ガムを噛んでいました。チューインガムではなく普通のなのですが、なぜか小さな風船ができるのです。私にはとても不思議で、ちょっとかっこいいなとも思っていました。彼女たちが噛んでいたのは、香水みたいな匂いのする綺麗な箱に入ったガム。ある時一枚もらったのですが、父が噛むミントの味でも、私が買ってもらうフルーツ味でもなく、香水みたいな味のする魅惑的なガムでした。
私が普通のガムを一生懸命膨らませようとしているのを見た母が、「これできる?」と言って、口の中で何かがはじける音をさせました。私は口を閉じて舌を鳴らし「こう?」と聞くと、「違う違う。口の中でガムを膨らませるんだよ」とちょっと口を開けて白いバブルを見せてくれました。さらなる挑戦です。
その日一日私は口の中でガムを膨らますことに専念していました。我ながらなかなかの集中力だと、今更ながら感心します。結局できなかったけれど、母と母の友達のかっこいい友達の仲間入りをしたかったんです。今でも彼女たちがタバコを消して、私に付き合ってメリーゴーラウンドに乗ってくれた時のことを思い出します。その中の一人のサマードレスが、馬の上でふわふわと風に揺れていたこともくっきりと眼に浮かぶのです。
大人になった私は、今でも普通のガムを口の中で膨らます練習を、時々思い出してこっそりしているのです。
『ノンタンほわほわほわわ』の作者紹介:
キヨノサチコ
1947年東京生まれ。小さい頃から絵を描くのが大好きでした。漫画家になりたかったキヨノさんは、チャンスを得て雑誌に漫画の連載を始めます。小さい子のファンが多かったことから、その後幼児雑誌で挿絵や付録の絵を描くようになりました。 ある日ふと出会ったいわさきちひろさんの絵本『にんぎょひめ』のページをめくっていたら、熱い魂がこみあげてきたそうです。それは「絵本を描きたい!」という情熱でした。『にんぎょひめ』はキヨノさんに「絵本」の素晴らしさを教えてくれたのです。早速絵本を描き始めて、できあがったのが「あかんべぎつね」。1976年に『ノンタンぶらんこのせて』でデビュー。以来ノンタンの絵本をつぎつぎに生み出し、ロングセラー・ベストセラーとなります。2008年逝去。 ノンタンの他の作品に「トムトム・ブーの絵本」シリーズ、「いたいのかいじゅう」シリーズなどがあります。
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