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【絵本レビュー】 『ちいさくなったパパ』
作者:ウルフ・スタルク
絵:はたこうしろう
訳:菱木晃子
出版社:小峰書店
発行日:1999年5月
『ちいさくなったパパ』のあらすじ:
「どうしておとなは遊べないの?」。息子にきかれ、パパは考え、流れ星に願いをかけた。「私を子どものときのようにしてください」。翌朝、目ざめると……。
『ちいさくなったパパ』を読んだ感想:
「ねえ走ろうよ」息子が言います。
「またか」私は思います。
うちの四歳児は起きてきた途端フルパワー。私が仕事をしている部屋のドアをダダーン!と開けて、「ママと遊びたい!」と言います。これはほぼ毎日のこと。ロックダウンが始まって以来、私は朝一時間半ほど早起きしています。自分の時間を作ることと、息子の世話をしている間にできないことを朝しようと思ったからです。大した時間ではないけれど、私はこの静かな時間が好きなのですが、それは廊下を歩くタタタタという軽い足音共に終了します。
「ママと遊びた〜い」と言われて、とりあえず聞いてみます。
「何したいの?」
大抵はレゴで飛行機を作るとか、ベッドの上に回転飛び込みをするとかなのですが、一番最初に私の頭をよぎるのは、「めんどくさい」です。毎回「待って」というのもかわいそうなので、先日一緒にベッドに回転飛び込みをしてみました。嬉々として何度も飛び込む息子を見ていると簡単そうだし、楽しそうです。
ところが実際にしてみると、ベッドの足元にある大きな鉄のヒーターに足をぶつけそうになるし、足をぶつけなくても起き上がった拍子に顔をぶつけそうになります。おまけに勢いをつけて回ったので、なんだか頭がクラクラ。一回回っただけで、私はベッドに伸びてしまいました。
「じゃま〜」と息子がぐいぐい押してきます。私はナメクジみたいに身体をずりずりさせて、ベッドと壁の間に移動しました。その間も頭はフラフラです。「一体何が楽しいんだ。。。」私はまたもや遊べないママに格下げです。でも、私のナメクジ動きは息子のツボにはまったらしく、ケラケラ笑ってもらえましたけどね。
昨日も息子は言います。「ママ、一緒に走ろう」
でも私は息子のおやつ、水筒、タオルに財布などが入った大きなショルダーバッグを持っています。息子は着の身着のまま、いつだって走る準備ができているのです。何も持たずに道に出られる息子が、私はちょっとうらやましくなりました。
子供って出かけるときに何も持たないですよね。いつから私こんなに色々持ち運ぶようになったんでしょう。財布だってカードが何枚も入ってパンパンです。お金でパンパンなら嬉しいけど、銀行のカードやメンバーズカードでパンパンなんて寂しいですよね。その上、ティッシュ、ウェットティッシュ、絆創膏に消毒液、タオルに鍵の束に(いつか読めることを願って持っている)本。毎日使わないものもたくさんあるけれど、いざっていうときに役立つものばかりなんです。でもこんなにたくさん運び歩いているせいで、肩こりもなかなか解消されない気がします。
家族で出かけるときに隣を見ると、旦那も手ぶらです。いいなあと思うけれど、何かと言うと「〇〇持ってる?」と聞いてくるので、結局誰かが便利グッズは運ばないといけないようですね。だから、走れない言い訳はまだ続きそうです。
ちいさくなったら息子と上手に遊べるのだろうか。疑問は残ります。私はとてもお転婆だったので、息子と楽しく遊べるかもしれません。でも思うんです。小さな私は本当にいなくなってしまったのだろうか、って。多分日々の「きちんとしてる私」に押し込められてしまっているのだと思います。長い間押し込められていた子供の私は、ふてくされてて、声をかけたってなかなか出てきてはくれません。でも本当は、目の前にいる小さな男の子と一緒に遊びたがっているんでしょうね。
皆さんはお子さん達と上手に遊べますか?
『ちいさくなったパパ』の作者紹介:
ウルフ・スタルク (Ulf Stark)
1944年スウェーデンのストックホルム生まれ。1984年に著わした作品が注目されて以来つぎつぎと話題作を発表し、現代スウェーデン児童文学界を代表 する作家として活躍。現代社会を映し出すテーマを扱い、映画化、戯曲化された作品も多い。ニルス・ホルゲション賞やリンドグレーン賞等を受賞。著書に『シロクマたちのダンス』『夜行バスにのって』『ゴールデンハート』等。
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