【絵本レビュー】 『わたしのゆたんぽ』
作者/絵:きたむらさとし
出版社:偕成社
発行日:2012年12月
『わたしのゆたんぽ』のあらすじ:
ゆたんぽが大好きな女の子。でも、ゆたんぽは女の子の冷たい足が苦手な模様。ある日、とうとうゆたんぽは布団から逃げ出してしまいます。
『わたしのゆたんぽ』を読んだ感想:
母の足には白い丸いマークがあります。「湯たんぽで火傷した痕」と教えてくれました。昔のゆたんぽはブリキでできていて、タオルで巻いて布団に入れていたけど、寝ている間にタオルが取れて火傷することがあったそうです。それを聞いて私は熱く焼けた鉄を入れ燃え上がる布団のイメージを思い抱いたので、父がある冬湯たんぽを買ってきたときは震えあがりました。
父が買ってきたのはオレンジ色のプラスティックの湯たんぽでした。
「これを寝る前に入れると足んとこがあったかくなるぞ」
と、父は得意そうな顔で言いました。
その夜、父はグラグラ煮え立つお湯を湯たんぽに注ぎ、私のベッドの足元に入れました。私はその間に歯を磨き、パジャマに着替えます。父は湯たんぽの効果が見たくて、すでにベッドの脇で待っています。私が部屋に入ると、父は湯たんぽを抜き取りました。いざ。。。
「どうだ、あったかいか」父は今にも跳ね出しそうなくらい嬉しそうです。私の足は、ほわんとした暖かい泡に包まれているような感覚です。
「あったかい」
「そうだろ、あったかいだろう」と父は満足げに笑うと、「おやすみな」と言って部屋を出て行きました。残された私はホワホワした空気のバブルの中で足の指をもじもじ動かし、その温かみを味わって眠りに落ちたのでした。
そして次の朝。父が湯たんぽを持って私を待っていました。「こっちへ来い」と私を洗面所に連れて行くと、洗面器に湯たんぽのお湯を入れました。昨夜の煮えたぎる湯は、顔を洗うのにちょうどいい温度になっています。
「昔はこうやって顔を洗ったんだぞ」と、父はまたも年寄りの知恵を伝授してきます。そうして湯たんぽは我が家に導入され、冬の習慣となりました。今我が家にあるのはシリコン製の小さなもの。息子が小さかった頃、ガスが溜まって腹痛を起こしているとき用に買いました。父がしてくれたように翌朝そのお湯で顔を洗ってみましたが、息子にはまだその面白さは伝わらなかったようです。今は4歳なのでそろそろ老婆の知恵を伝授する頃でしょうか。
『わたしのゆたんぽ』の作者紹介:
きたむらさとし
1956年 東京生まれ。1982年にイギリスで絵本作家としてデビューし、以来、イギリスを拠点に世界的に活躍を続ける。約10年前に帰国し、現在は神戸市に在住。絵本作家、イラストレーターとして活躍。デビュー作「ぼくはおこった」(評論社)でイギリスの新人絵本画家に与えられるマザーグース賞を受賞。「ぼく ネコになる」、「おんちのイゴール」などの著書の他、「ふつうに学校にいくふつうの日」(小峰書店)では絵本日本賞翻訳絵本賞を受賞。 その他「ぞうのエルマー」シリーズの翻訳者としてもおなじみ。