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【絵本レビュー】 『ゆめくい小人』

作者:ミヒャエル・エンデ
絵:アンネゲルト・フックスフーバー
訳:さとうまりこ
出版社:偕成社
発行日:1981年11月

『ゆめくい小人』のあらすじ:

おそろしい夢になやむ姫をすくおうと、王様は旅に出て、荒野でふしぎな小人に出会います。


『ゆめくい小人』を読んだ感想:

ミヒャエル・エンデさんといえば『モモ』や『はてしない物語』を書いた作家さんですね。大好きな作家さんの一人ですが、少し短めの絵本もあるのですね。短いとはいえ力強さは衰えず、私はすっかりエンデの魔法の世界に連れていかれました。

子供には悪い夢を見る時期があるのだそうで、ベッドの下にお化けがいるとか、暗いところが怖いとか言い始めると聞きました。へえ、なんて他人事のように聞いていたのですが、気がついたらうちの四歳児がそんな時期に突入したいたのです。暗い部屋に一人で行くのは嫌、夜中に叫び声をあげて起きて上がり号泣しているのに、どうやら寝ているらしい。夜中に泣くのは時々だけれど、一人で暗いところには絶対行きたがりません。一体どんな怪物を見ているんでしょうね。

いくつかあった怖い夢の中で私が特に嫌いだったのは、歯が抜ける夢です。最初は大抵歯が一本グラグラし始めます。その時はもう全て大人の歯になっていたのでグラグラしてもらっては困るので、私はできるだけ舌が当たらないように気をつけていました。乳児からの生え変わり時には舌で押して遊んでいたけれど、それとは全く逆です。始終舌を後ろに引いておきました。

そのうち、話したりして口が動くと歯がポロポロ欠けていくようになることに気がつきました。怖くて誰にも言えず、私は口の中に空気を含ませて口の壁が歯に当たらないよう最新の注意を払っていました。全神経が口に向かっていたので、みんなが話していることも頭に入りません。話すと歯が壊れてしまうので、私はずっと黙ったままでした。

ところがある日の夢で、私はみんなとプールに行くことになったのです。プールサイドから走って水に飛び込んだのですが、走った衝撃で歯がほろほろと崩れます。水に入った時は口中に空気をいっぱい入れて膨らまし、歯の間に隙間があるように気をつけていました。なのに飛び込むたびに歯が折れて、口の中でカラカラと音を立てています。感覚的に言うと、歯が落雁になった感じです。ちょっと舌が触れただけでもポロポロと崩れて、口が歯でいっぱいになるという気持ち悪さなのです。

口に水が入ったら歯が全部流れ出てしまうと考えた私は、空気を水中で吐き出すこともできず一人でもがいていました。みんなはなんの問題もなくて楽しそうに遊んでいるのに。。。冷静に考えれば、折れてしまった歯はもう戻せないのだから吐き出したってよかったのでしょうけれど、私は夢の中で必死に歯を守ろうとしていました。

夢は大抵歯が全部崩れてしまったところで終わります。悪い夢はいいことが起きる兆しなどという夢占いも見たことがありますが、そんなことより私は歯の心配をせずにゆっくり眠りたいです。今でも時々見るんです、この夢。書きながらちょっと心配になって、私は歯をカチカチと合わせてみました。どうやらしっかりついているようです。

そうそう、怖い夢を見たときのおまじないをシェアしておきますね。ゆめくい小人が来てくれるかもしれませんよ。

ゆめくい小人 ゆめくい小人
つののナイフ もって きておくれ
ガラスのフォーク もって きておくれ
ぱっくり 大口 あけとくれ
子どもを おどかす こわい ゆめ
はやく はやく たべとくれ
けれども きれいで やさしい ゆめは
たべずに のこしておいとくれ
ゆめくい小人 ゆめくい小人
まねきを うけて きておくれ


『ゆめくい小人』の作者紹介:

ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)
1929年ドイツに生まれる。オットー・ファルケンベルグ演劇学校に学び、地方劇場で戯曲の創作法を実地に習得。多くの戯曲の他、1961年より児童むけの文学書も著し、代表作に童話『モモ』、絵本『カスペルとぼうや』がある。1995年8月病没。


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