【絵本レビュー】 『ゆうきをだして』
作者:くすのきしげのり
絵:いもとようこ
出版社:佼成出版社
発行日:2011年4月
『ゆうきをだして』のあらすじ:
心地よい土の中にずっといたいと思う球根に、もぐらが「春なんだから、芽を出してごらん」と言います。知らない世界がこわくて、勇気の出ない球根ですが、おひさまにあたためられて、うっかり土の上に芽を出してしまい……。
『ゆうきをだして』を読んだ感想:
私たちは変化というものに弱いのかもしれません。現状にたどり着くまでにたくさん苦労をしたことを覚えているので、また一から始めるとなるとなんとも腰が重くなってしまいます。
「今だってそこまで悪くないよね」
そんな風に自分を納得させているように思います。
こんな考え方は、転職、国を超えての引越し、恋愛など色々な場面で出てきます。もっと身近なところでは、生活習慣を変えたいなと思う時にも。
この一年くらい私は自分の時間を作ることに執着しているのですが、特にしたいのが朝活です。理想としては五時半くらいに起きて、家族が起きてくる七時半くらいまで自分の好きなことをするのです。でも全然うまくいっていません。息子を寝かしつける時に一緒に寝落ちして十時近くに起きて、昼間できなかったことをしようと焦ってコンピューターに向かうけれど、睡魔は着実に歩み寄ってきてあまり頭がうまく働きません。でも「しなくちゃ」という焦りもあるので、すんなり寝るわけにはいきません。お風呂にも入らなくちゃいけないし、散らかったリビングも片さなければならない。全てが優先に思えて私の頭はぼんやり。
ああ、明日こそは五時半に起きたいんだよね。
そう思ってお風呂に入る決心をするのは十一時近く。これだとまた寝るのが十二時過ぎてしまう。。。こんな負のサイクルで、夜も充実しないし朝活も実現していないのです。win-winどころか惨敗です。
早起き生活をするということは、夜を犠牲にすること。どこかで「今のまま」を断ち切るゆうきを出さなくてはいけないんですよね。なかなか勇気がいるんです。だって今のままは楽チンですから。変化にはいつでもエネルギーが必要です。自分を変えるのは、特に難しいですね。だって自分で自分のお尻を叩かなくちゃいけないんですもの。でも昨日の自分より今日の自分が少しでも好きになれたらいいなと、私は思います。昨日の自分が嫌いなわけではないけれど、今日の自分は昨日よりちょっと成長している。そうしたら、自分の存在にもう少し心地よさを感じられるような気がします。
今までと違うことをするのは、ちょっと怖いですよね。でもその勇気は私たり自身からしか湧いてはきません。もしあなたが何か変わろうとしているのなら、この絵本がお勧めです。
『ゆうきをだして』の作者紹介:
くすのきしげのり
1961年徳島県生まれ。鳴門市在住。小学校教諭、鳴門市立図書館副館長などを経て、現在は、児童文学を中心とする創作活動と講演活動を続けている。絵本『おこだでませんように』(小学館)が、2009年に全国青少年読書感想文コンクール課題図書に、2011年にはIBBY(国際児童図書評議会)障害児図書資料センターが発行する推薦本リストに選出される。同作品で第2回JBBY賞バリアフリー部門受賞。また、『ふくびき』(小学館)、『ともだちやもんな,ぼくら』(えほんの杜)と共に第3回ようちえん絵本大賞を受賞する。その他の絵本に『もぐらのサンディ』シリーズ①~④(岩崎書店)、『あたたかい木』(佼成出版社)、『えんまのはいしゃ』(偕成社)、『みずいろのマフラー』(童心社)、『ええところ』(学研)、『メロディ』(ヤマハミュージックメディア)など多くの作品がある。