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【絵本レビュー】 『うっかりおじさん』

作者/絵:エマ・ヴィルケ
訳:きただいえりこ
出版社:朔北社
発行日:2019年9月

『うっかりおじさん』のあらすじ:

上品な紳士「うっかりおじさん」が大変なことに…!!
「〇〇〇みなかったかい?」と、うっかりおじさんが読者に話しかける形で、お出かけの準備が進んでいく絵本。


『うっかりおじさん』を読んだ感想:

私はかなりのうっかりものです。学校から帰ってきてお弁当箱を出し忘れることなど朝飯前。小学校の時のバス通学でもうっかり寝てしまって、気がついたら知らないところなんてことはしょっちゅうありました。だからランドセルの中にはいつも十円玉が数枚入っていました。もちろん家にSOSの電話ができるようにです。あまりにもしょっちゅう寝過ごしたので、ある日小銭がありませんでした。困った私は通りかかったサラリーマンのおじさんに、「うちに電話をしたいから十円貸してください」と半泣きでお願いしました。おじさんはポケットから十円を数枚出して、「返さなくてもいいから」と言って行ってしまいました。一度はバスの終点まで行ってしまい、さすがに焦りましたが、そんなことがあっても私はうっかり寝てしまうのでした。

もっと大きくなると家を一発で出られないということがしょっちゅうでした。何かしら忘れるのです。急ぐのは性に合っていないので、大抵学校へ行く一時間半くらい前には起きます。朝ごはんもきちんと食べ、歯磨きをしながら朝のニュースも欠かさず見て、数ページ本を読む時間さえあります。それなのに、出発時間十分前にどういうわけか時間が足りないことに気がつくんです。着替えてない、お弁当も包んでない、授業に使うものも用意してないし、寝癖はついてるし、トイレにも行ってない。全てが最後の十分に凝縮され、私は毎日大慌てで家を出ることになります。そんな私を呆れて見る母。

「十分でできるなら、二時間も前に起きないでそのぶん寝てればいいのに。」
「一時間半ですけど。」
「ママは三十分で充分だよ。」
「朝から慌てるのは嫌なの。」
「今、慌ててるじゃん。」

母の言うことももっともなので腹ただしい。一週間んいいっぺんはこの会話を繰り返し、私は慌ただしく家を出ます。自転車を出そうとして気がつきます。「定期入れがない」家に駆け込みます。机の上からそれをむしり取り、バタン、家を出ます。自転車を門から出そうとして気がつきます。友達に渡すものがあったんだっけ。家に駆け込みます。自分自身にイライラして、もう靴のまま入って行きます。母が物音に気付いて出てきます。
「ああああ、ちょと靴で入んないでよ!」
「靴脱いでる暇ないの!ごめん後で拭いといて!」
こんなことがほぼ毎日でした。
「おまのはうっかりじゃなくて、そそっかしいだけだ」
と父にも怒られましたし。

今私が住んでいるのはアパートの四階です。エレベーターはありません。数年前、当時一歳ちょっと前だった息子は日々重くなり、彼を抱っこして階段を登ったり降りたりするのはなかなか大変でした。息子が歩くようになっても登り切るのに十五分以上かかるので、一度降りたらもう戻れません。買物だって、階段を半分くらい登ったところで忘れ物に気づいても、さっと角のスーパーに戻って買って来るなんてこともできません。息子の替えの靴下を忘れてもそのまま公園に行って、ドロドロの靴下のまま午後中過ごしたこともありました。塩を買い忘れて、味気のない夕飯になったこともありました。

そんな経験を何度かして、私のうっかりは大分改善されたように思います。あ、でもおとといはお財布を持たないで家を出てしまいましたけどね。幸い旦那も一緒だったので、コーヒーはご馳走になっておきました。

でもうっかりってなんで起きるんでしょうね。子供の時を振り返ってみると、私の頭の中ではいろんなことが起きていたように思います。想像の世界にいたのかもしれません。身体はここにいてするべきことをしているけれど頭は違う世界にいる、そんな感じだったように思います。そそっかしい、注意力が散漫など悪いイメージを持たれがちですが、私の世界も覗きに来てくれればいいのになあ、なんて思っていたものですよ。



『うっかりおじさん』の作者紹介:

エマ・ヴィルケ(Emma Virke)
1974年スウェーデンのストックホルム生まれ。スウェーデンの絵本作家、イラストレーター。ストックホルム在住。
コラージュを使ったユーモアあふれる作品を多く手がけ、幅広い世代にとても人気がある。本作で、スウェーデンのすぐれた絵本に贈られるエルサ・ベスコフ賞を受賞。よくスマホやさいふ、かぎなどをわすれる。めがねをうっかり実家の別荘にわすれてきてしまい、車で100キロかけて取りにもどったことがある。


エマ・ヴィルケさんのその他の作品

現時点で日本語に訳されているのはこの一冊のようです。もっと読んでみたいですね。

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風の子
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